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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第12章 夢幻樹海
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第11話 デイトンの村

 森で魔物の討伐を終えると村へ戻って来る。


 このまま迷いの森へ向かっても良かったのだが、朝から続いた魔物の襲撃のせいで怯えてしまった村人に留まるように言われて渋々ながら1泊だけすることになった。


 そうして魔物が討伐されたことで浮かれた村人たちによって村の中心にある広場で宴会が開かれることになった。


「かんぱ~い」


 広場の一番目立つ場所ではアイラがジョッキに入れられた酒を一気に飲んでいた。


「お、良い飲みっぷりだね嬢ちゃん」

「これぐらいは余裕ですよ」


 気を良くした酒場のマスターからエールを注がれてさらに3杯目を飲み始める。

 いつものアイラなら10杯ぐらいなら余裕なのでまだ大丈夫だろう。


「シルビア、お前も座って飲んでいたらどうだ?」


 忙しなく宴会場を動き回っていたシルビアを捕まえて座るように言う。


「いえ、どうにもこういう場所で手伝いをしていないと落ち着かないので……それに食事は少しずつ食べているので大丈夫です」


 村の女性たちに混じって食事の用意に奔走していた。


 また、少し離れた場所ではメリッサがお酒の入ったコップを片手に奥様たちと談笑していた。


「あ、子供の頃はそんな少年だったのですね」

「そうよ。普段は大人しい子供だったんだけど、村に魔物が近寄って来た時なんかは父親が戦う姿が見たいからってこっそりと隠れていたんだから」

「今は……どうでしょう?」


 話の内容から察するに俺の子供時代の話を聞いているみたいだ。

 普段の情報収集の延長だと思うことにする。


 そういえば、イリスはどうした?


「アンタ、大丈夫かい?」

「へいき……れす」


 全く平気ではない様子のイリスがお酒の入ったコップを片手に歩き回っていた。今までイリスがお酒を飲んでいるところを見たことがなかったけど、すぐに酔ってしまうタイプだったか。


 そんな状態で歩き回られるのは危険なんだけど、隣にルイーズさんが付いていてくれているみたいだから大丈夫かな?


「ねぇ」

「ん?」


 一人で少量のお酒を置いてあった丸太に腰掛けながらゆっくりと飲んでいると近所に住んでいたノーラお姉さんが話し掛けて来た。


「村にいた頃とは随分と変わったわね」

「そうですか?」

「そうよ。1年前とは比べ物にならないほど強くなっているだけじゃないわ」


 ノーラお姉さんの視線がシルビア、アイラ、メリッサ、イリス――パーティメンバーへと向けられて最後に俺を見つめる。


「あの真面目だったマルスが女の子を4人も連れて来るなんて実際に目にした今でも信じられないわ」

「彼女たちは仲間――パーティメンバーですよ」


 そういうことにしておかないと後が面倒そうだ。


「なぁに、を言っているんですか!」


 トロンとした目で顔を赤くしたイリスがいつの間にかすぐ目の前にいた。


 というか呂律が回っていないうえに以前の敬語口調に戻ってしまっている。


「私との関係は、遊びだったんですね!」


 思わず吹き出しそうになるのを堪える。


 しかし、既に手遅れだ。

 宴会に参加している村人全員の視線が俺に向けられる。


「へぇ、面白そうな話をしているわね。詳しく聞かせてくれる?」

「いいですよ!」


 イリスの腰に腕を回して向かいに置いてあった丸太に座らせると上機嫌なイリスに話をさせていた。


「私は貴女たちの中に少なくとも本命がいるんじゃないかと睨んでいたんだけど、誰が本命なの?」

「誰、ですか~?」


 イリスが当事者に尋ねていた。


 ただし、視線は俺ではなくシルビアたちに向けられている。

 お酒は飲んでいてもほとんど酔っていない彼女たちは苦笑するばかりで肯定も否定もしない。


「全員、です」

「あらあら……」


 年上のお姉さんがイリスの言葉に困っていた。

 次いで俺に視線を向けると咎めるような目をしていた。


「この娘は……」


 完全に酔ってハイテンションなイリスにルイーズさんは頭を悩ませていた。


「で、当人としては誰が本命なの?」

「誰でもないです」

「じゃあ、この娘が言ったように全員が本命なんだ」


 ノーラさんの言葉に宴会に参加しながらも俺たちの話を聞いていた村の女性から黄色い声が上がる。

 逆に男性陣からはブーイングが巻き起こっていた。


 俺の仲間関係に興味を持ったノーラさんが手招きしてシルビアたちを呼び集めてしまった。


 話の内容から警戒しながらも渋々集まる3人。


「ねぇ、貴女たちは今の関係で本当に納得しているの?」

「していますよ。わたしはマルスさんの仲間です」

「ま、他に行きたい所もないし」

「納得していなければパーティを組むようなことにはなりません」


 素面同然の3人は迂闊な事を喋らなかったか。


「そうですよ。きちんと順番を決めて一緒に寝ていますから」


 ああ、酔っている奴は迂闊な事しか喋らない。


「へ、寝ている……?」

「そうですよ。私が加入したのは最近ですから数えられる程度ですけど、シルビアさんたちなら、もっと……」


 迂闊な事を口にした当人はそのままノーラさんに寄りかかりながら寝てしまった。


 寝てしまったイリスをノーラさんとは反対側に座ったルイーズさんが介抱している。その表情は困った娘に呆れている母親のようだった。


 対してシルビアとメリッサは額に手を当ててイリスの言動に頭を悩ませていたし、アイラは状況を無視する為に宴会に戻って騒ぎ始めてしまった。


「お姉さん、男の人が四股も掛けるなんて良くないと思うよ」

「そんなつもりじゃなかったんです」

「ウチの人が浮気していたら全然許せないけどな」


 ノーラさんから殺気が放たれる。

 俺には何ともないレベルの殺気なのだが、離れた場所でお酒を飲んでいたノーラさんの旦那さんが縮こまってしまった。


 すぐ傍ではノーラさんの話を聞いていた女性たちが同意するように頷いていた。


 俺としても浮気をしているつもりはない。

 しかし、現状では誰かを捨てるわけにもいかず、俺の方が襲われているような状況だ。


 その事を説明してもノーラさんは納得してくれない。


「いいわ。貴方たち5人が納得していて、それで幸せだというなら私から言う事は何もないわ」


 どうやらお許しを貰えたらしい。


 だが、俺の目論見は甘かった。


「おい、どういうことだよ?」


 後ろから聞こえた声に振り返れば見慣れた友人たちの姿があった。


 彼らは俺と同年代の少年で子供の頃はよく一緒に遊んだ。中には木で作った剣で稽古の真似事のようなことをして遊んだ友達もおり、よく「街へ行って凄腕の冒険者になったらモテモテになるんだ」なんて夢を語っていた者までいる。

 こんな時によくそんな思い出を思い出せるな。


「なんで、お前がモテているんだよ!」

「俺だって街に行ってから死に掛けたり、複雑な設定に頭を悩ませながら運営したりと苦労した結果だよ!」

「なんだよ、それ!!」


 それから周りの人間も巻き込んでワイワイと騒ぎが起こった。


「4人もいるんだから1人ぐらい寄越せよ!」

「1人たりとて渡せる訳がないだろ」


 おかしなことを言い出した奴を遠距離からの指弾で弾き飛ばす。

 酒を飲んで酔っている連中は仲間が吹き飛ばされても気にした様子がない。


「そうだ。どうしてお前がそんな美味しい思いをしているんだよ」


 なぜか彼女持ちのリューまで混ざり出した。


「お前は彼女――いや、結婚しているから奥さんか? 相手がいるんだから問題ないだろ」

「結婚はしたよ……けど、村長の仕事が予想以上に忙しすぎて楽なんてできないんだよ!」

「それが村長だ」


 昔なら殴り掛かって来たところだろうが、誰にもそんな気配はない。


 まあ、魔物相手に力を2度も見せてしまったので俺を怒らせないように注意はしているんだろう。


 久しぶりに男だけで騒ぐのは楽しかった。


「男ってこういう風に騒ぐのが好きよね」

「まあ、主がこういう風に楽しそうにしている姿は初めて見ますから今日ぐらいはゆっくりさせてあげることにしましょう」


 シルビアとメリッサもまったりと宴会を楽しんでいるみたいだ。


「まったく……明日には危険な森に挑むっていうのに暢気な連中だね」


 今からピリピリしていても始まらない。

 危険が待っていることには違いないが、今くらいは英気を養って明日に備えよう。


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