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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第2章 捜索依頼
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第4話 先輩冒険者

 初めての依頼を受けてから5日目。


「おめでとうございます。これでマルス君もE級冒険者になります」


 冒険者のランクがFランクからEランクに昇格できた。


 2日目の内に冒険者ギルドでランクを上げる為には何が必要なのか聞いたところ、Eランクに昇格する為にはFランク以上の依頼を10回以上クリアする必要があると言われた。

 そこで、1日に2つずつ依頼を受けて、5日目にしてようやくランクアップがなった。


 ルーティさんに祝福されるが、正直達成感なんてほとんどない。Fランクで討伐対象になっているような魔物相手では楽勝で、また熊型の魔物――ブラウンベアーでも出てこないかと森への採取依頼を受けてみたりしたが、結局1度も出てくることはなかった。

 美味しかったんだけどな……まあ、肉はまだ余っているからいいか。


「それで、Eランクの依頼も受けられるようになりましたが、どうしますか?」


 新しい依頼票を見せてくれる。

 内容を確認すると少し遠出しなければならない依頼がいくつかあった。


 ただ、俺が依頼を受けていたのは冒険者としての経験を積みたかったのと行方不明になった父親に関する情報が集まるまでの暇つぶしのようなものだった。


「それよりも父さんの情報は集まりましたか?」


 ルーティさんが首を横に振っていた。


「残念ながら、有力な情報は集まっていませんね。2件の情報が寄せられましたが、明らかにガセネタだと思われたので、こちらで弾かせてもらいました」


 詳しく聞いてみると、どちらも一週間前にここから遠く離れた町で見かけたというものだった。ただ、冒険者としてのランクも低く、普段の素行も良好とは言えない相手だったため信憑性は低いと判断していた。


「とにかく情報量が少なすぎます。分かっているのは、行方不明になった場所と捜索対象の顔だけですからね。せめてどの方角に向かったなどという情報があればいいんですけど……」

「すみません。なにぶん行方不明になったのが唐突だったものでして……」


 俺も少ない情報から父の行方を追うのが難しいというのは分かっていたので、謝るしかなかった。


 とりあえず、また依頼でも受けて時間でも潰そうかと考えていると、


「ん? ルーティちゃん、難しい顔をしてどうしたんだい?」


 一人の男性冒険者が話しかけてきた。

 ルーティさんとは顔見知りのようだ。


 男性冒険者は、依頼の帰りなのか着ている鎧の至る所が汚れており、どこか疲れた表情をしていた。


「ブレイズさん……そうだ、ブレイズさんたちは商人の護衛依頼であちこちの街を転々としていたんですよね」

「ああ、そうだ。さっき帰ってきたところで報告を終えたばかりだ」

「だったら目撃した可能性がありますよ」

「どういうことだ?」


 ブレイズ、と呼ばれた冒険者が俺へ視線を向けてくる。

 ルーティさんは少し興奮していて近くにいた関係者と思われる俺に事情を求めたのだろう。


「俺の父親が10日ほど前に行方不明になってしまいまして、行方を知っている人がいないかと情報を募る依頼を5日前から出していたんですけど、なかなか有力な情報が集まらなくて困っていたんです」

「なるほどな。ちなみに探している奴は、どんな奴だ?」


 ルーティさんが依頼票を見せて父の顔をブレイズさんが確認している。

 しかし、その表情は優れない。


「悪いな。商人の付き添いであちこち顔を出したが、こんな奴に会った記憶はないな」

「いえ、協力ありがとうございます」


 本当に、どこへ行ったのか?


「とりあえずランクアップしたばかりなのでEランクの依頼でも試しに受けてみようと思います」

「ほう。Eランクになったばかりなのか」


 ブレイズさんが俺の事を頭から足先まで観察していた。

 どこか居心地悪くなりながら立っていると、ブレイズさんの視線が俺の持っている剣、コート、靴に注がれていることに気付いた。


「持っている装備も一級品だな」


 効果は非表示にしているので、たとえ『鑑定』を使われていたとしても大したことは分からないはずだが、ブレイズさんは何かを感じ取っていたようだ。


「そうだ。ブレイズさん、依頼はもう受けられましたか?」


 突然、ルーティさんが尋ねた。


「ああ……本当は長期の依頼を終えたばかりだから休暇を入れたいところだったんだが、ちょっと事情があって魔物の群れを討伐する依頼を受けた」


 一度、ルーティさんが紹介してくれる依頼以外にどんな依頼があるのかギルドにある依頼票が貼られた掲示板を見て、その時に貼り出されていた依頼については一通り確認していた。

 その時にも『魔物の群れを討伐してほしい』という依頼が、Cランクの依頼がある場所に貼り出されていた。


「たしかセイルズ村から出された討伐依頼ですね。でしたら、荷物持ちでも構わないので彼を連れて行ってくれませんか?」


 ……え? ルーティさんがなぜか俺を勧めてくる。


「おいおい、ギルドの簡単な調査でも相手は100匹近い集団だ。そんな場所に荷物持ちとはいえ、Eランクになったばかりの素人を連れて行くつもりはねぇぞ」

「実力については私の方でEランクやDランク以上あると保証します。ただ、Fランクの任務をほとんど簡単に完遂してしまったせいで、冒険者ギルドの依頼をどこか簡単に考えているようなところがあるんです」


 まあ、暇つぶし程度に考えていたのは事実だ。


「なるほど。Cランクの任務を体験させることで冒険者の大変さを感じてもらおうってことだな」

「そうです」


 ルーティさんは笑みを浮かべていた。

 俺もFランクの依頼に対して簡単に済ませ過ぎていたことに気付いてしまった。


「あの、俺はEランクになったばかりの冒険者なんですけど、Cランクの依頼なんて受けて大丈夫なんですか?」

「問題ない。今回は、俺たちBランクパーティ『紅蓮の太陽』の一員として依頼を受けるわけだから一時的にBランクとして扱われる」

「というわけで、情報が集まるまでまだ時間も掛かりそうですし、一緒に依頼を受けてみてはいかかがでしょう」


 いかかでしょう?

 なんて聞いてくるが、冒険者ギルドの受付嬢と先輩冒険者からの勧誘。


 これは、断れないぞ……。


「はい。微力ながら手伝いさせていただきます」


 まあ、特に断らなければならない理由もないから受けてみるけど。


「よし、今日は他の仲間が依頼に向けて準備に出掛けちまっているから、仲間の紹介は明日だ。明日の朝、街の北門の前で集合だぞ」


 笑いながらブレイズさんが冒険者ギルドから出て行った。


 俺は、新たに受けることになった依頼の手続きがあるのでルーティさんの前に残っている。


「さっきの人はブレイズさんっていう先輩冒険者でいいんですよね」

「そういえば紹介をしていませんでしたね。あの人は、ブレイズという名前で、Bランク冒険者なんです」


 あれ、依頼とランクが合っていないぞ?


「Bランクの冒険者がCランクの依頼を受けてもいいんですか?」

「自分よりもランクが下の依頼を受ける分には問題ありませんよ。それなりにあることではありますが、彼らの場合は彼が言っていたようにちょっとした事情があることが関係していますね」

「ちょっとした事情?」

「その辺りに関しては当人から聞くのがいいですよ。先輩と親交を深めて、色々とノウハウを聞いたりするのも重要なことです。会話の切っ掛けにするにはちょうどいいですよ」


 そうしている間に依頼票を用意してくれて、依頼の内容を確認する。

 依頼は、セイルズの村の村長が出したもので、近くの森に生息していた魔物がいつの間にか群れを成しており、村の畑が何度か荒らされているため討伐をお願いしたいというものだった。


「Cランクになれば、このように遠方からの依頼を受けて、これまでと違って討伐したことを依頼主に確認してもらうような依頼もありますから今の内に慣れておくのもいいですよ」


 たしかに今回の依頼は、森に巣食った群れの討伐である。

 今までのように適当に討伐して、魔石などを持ち帰り討伐したことを証明すれば終わりというわけにはいかない。


「分かりました。邪魔にならない範囲で協力したいと思います」


 こうして、先輩冒険者に随伴することが決まった。


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