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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第11章 王都迷宮
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第24話 新たな王

 昨日、一昨日と同じように宿で朝食を摂りながら迎えを待っていると食堂の入口に騎士が現れ、王城のサロンへと案内される。


 サロンには既にパトリック国王とランドルフ王子の2人が待っていた。


「今回の件、本当にお前たちに依頼してよかった」

「いえ、依頼を受けた冒険者として当然のことをしたまでです」

「そうか。では報酬を渡すことにしよう」


 パトリック国王が合図をするとサロンの隅で待機していた執事が銀色のトレイに小さな箱を乗せて近付いて来た。


 箱を受け取ったパトリック国王がこちらに差し出して来たので開けてみる。


「報酬として白金貨20枚を用意した」

『白金貨!?』


 金貨の100倍の価値がある白金貨。


 実物を見るのは俺も初めてだ。

 Aランク冒険者としてそれなりに長く活動しているイリスでも見たことがないが、メリッサは商談で目にしたことがあるらしいが、それでも初めて自分で持てるということで驚いていた。


「お前たちならスキルで用意するのは難しくないのではないか?」


 ここには俺たちについて知らない執事もいるのでパトリック国王が迷宮(ダンジョン)の事をスキルと言い換えて尋ねて来る。


 実際手に入れた経緯は分からないが、以前の迷宮主(ダンジョンマスター)が白金貨を魔力変換してくれたおかげで宝箱(トレジャーボックス)を使用すれば手にすることは可能だ。


 しかし、その為には魔力を消費する必要がある。


 白金貨を魔力で用意しようとすると莫大な魔力が必要になる。

 その魔力を得る為の苦労を思えば白金貨を手に入れようとは思わない。魔力基準で考えると金貨で同額を用意した方が安上がりだったりする。


 迷宮主としての権限がなく迷宮操作が使えなかったのでパトリック国王にはその辺が分からなかったみたいだ。


「いえ、初めて目にしました。ですが、この金額は報酬としては破格過ぎではないでしょうか?」


 依頼を受ける際、具体的な報酬について話をしていなかった。

 まさか白金貨20枚も貰えるとは考えていなかった。


「そんな事はない。お前たちはランドルフを最下層まで連れて行ってくれただけでなく、迷宮の異常を突き止めた。なにより迷宮の存在理由まで調べてくれた。私の代で分かったというのは、それだけの価値があると思ってくれればいい」

「ありがたく頂戴します」


 報酬を受け取る。

 ただし、白金貨は魔力変換で魔力にして迷宮に与えたりしない。このままお金として使用した方がいい。


 それよりも箱の中にある硬貨とは違う物が気になる。


「報酬はそれだけではない。箱の中に入っているメダルは王族と関わりのある者だけが持つことを許された代物だ。これを持っていれば騎士が同行していなくても王城に入ることができるぞ」


 もちろん王城前で身分の確認など必要になる。

 国に認められたSランク冒険者なら誰もが冒険者カードとは別に持っている王国との関わりがある証拠であるメダルだ。


「申し訳ありませんが、Sランクへの昇格は無理です」

「王家からの誘いを断るというのか!?」


 ランドルフ王子が声を上げるが、パトリック国王には最初からこうなることを分かっていたらしく息子の態度を笑っている。


 残念ながら今の俺たちでは辞退するのではなく不可能だ。

 いや、イリスだけなら可能なのかもしれない。


「殿下、私たちはAランク冒険者として今回の依頼を引き受けましたが、今回の依頼がAランク冒険者として初めて受ける依頼なのです。国に認められたAランク冒険者がSランク冒険者になることは珍しくないかもしれませんが、さすがにAランク冒険者としての実績が全くない者をSランク冒険者にしてしまっては他の冒険者に示しが付かないでしょう」

「むぅ……」


 まだ何か言いたそうにしていたが、国王に睨まれて引っ込んでしまった。

 これ以上の痴態はさすがに見過ごせなかったみたいだ。


 実績がないことを理由に使わせてもらったけど、俺としてはこれ以上ランクを上げるつもりはない。Sランク冒険者になってしまったりしたら自由に動けなくなってしまうし、面倒な依頼が増えてしまう。


 それにSランク冒険者のほとんどが王家からの依頼に即座に対応できるよう王都に住んでいる。

 迷宮があるのでアリスターから離れるわけにはいかないので断固としてSランクへの昇格は拒否するつもりでいる。


「ならば冒険者に依頼することは可能だろうか?」

「もちろんです」

「実は数年以内に私が王位を継ぐ事が決定した」


 今までの王子の立場はあくまでも第1王子。

 第3王子であるペッシュが反対していた為に王太子になることができずにいた。


 しかし、反対していた第3王子もいなくなり、第3王子本人がいなくなったことにより味方していた勢力も力を失っており、内容は伏せられたまま王位を継承する為に必要な儀式をランドルフ王子がやり遂げたと発表することで王太子になる事が決定したらしい。


「まだ内々の話ではあるが、私の政務を徐々に手伝わせて王として相応しい男に仕立てるつもりだ」

「父上、仕立てるというのは……」

「迷宮で起こった出来事は、どういうわけか昨日倒れる前に私の頭の中に直接流れ込んできた。だからお前が土下座したことも知っている」


 きっと迷宮核によるものだ。

 その時点では、まだ迷宮主だったので次代の王を心配した迷宮核なりの行動だったのだろう。


 ランドルフ王子が自分の失態を思い出しているのか顔を赤くしている。

 しかし、逃げるような真似はしない。


「ああ、あの場で約束したように私は誰もが納得して過ごせる国を作る事を約束する。だから、その時は助けてくれないだろうか?」


 その顔に王族らしい傲慢さはない。

 俺としても今の顔の方が好感を持てる。


「はい。ですが、私も迷宮主としてあまり迷宮を離れるわけにはいかない身です。王都に長期間移住するような事はできませんが、どうしても力が必要になった時は駆け付ける事を約束します」

「そうか、頼む」


 国民として国王に手を貸すぐらい当然の事だ。


 ☆ ☆ ☆



 報酬を受け取ってサロンを後にすると騎士団の詰め所へと赴く。


 理由は、迷宮で亡くなった騎士の遺体を引き渡す為だ。


 貴族家に属する騎士ということで特命の最中に亡くなった事を実家から色々と言われることになるらしいが、その辺の対処は近衛騎士団が行うべき事で俺たちが対処するような問題ではない。


「これからどうしますか?」

「せっかく白金貨なんて大金をもらったんだから観光をしないか?」


 5人で王都まで来るのは初めてだ。

 せっかくなので親睦を深める為にも親睦会を兼ねて王都観光といこう。


「では、私が案内させていただきます」


 率先して俺たちを案内し始めたのはメリッサだ。

 たしかに王都に何年も住んでいた彼女なら観光場所についても詳しいだろう。


「大丈夫か?」


 昨晩の様子を間近で見ていた者としては心配になる。


「大丈夫です。いつまでも私が落ち込んでいるわけにはいきません。ランドルフ王子は、国王として相応しい人物になると誓ってくれたので、私はその言葉を信じることにしました。私も私なりにするべき事を全力でやっていこうと思います。それが亡くなった知り合いのためになると信じて」

「そうだな」


 彼女は彼女なりに全力で生きていこうとしている。

 俺たちは仲間として隣を歩いていればいい。


「とはいえ、白金貨なんて高価な代物を使える場所は限られています。少々お高い店になりますが、魔法武具店に顔を出してみましょう」

「面白そうだな」


 掘り出し物の魔法道具があれば迷宮の糧になる。

 メリッサの行きたい場所に合わせて王都を探索してみるのも悪くない。


王都迷宮攻略報酬

・白金貨20枚

・王家のメダル

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