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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第11章 王都迷宮
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第22話 迷宮主継承

 迷宮に起こった異常は分かった。

 もう1つの依頼を果たすことにしよう。


「それでは、メティス王国第1王子ランドルフ・メティカリアを新たな迷宮主として認めてもらえますか?」

『はい、いいですよ』


 迷宮核からの返事は随分と軽いものだった。

 まるで迷宮主になる為には資格など何も必要がないよう。


『元々新たな迷宮主になる者は最後に迷宮核(ダンジョンコア)に触れた者です。特に資格など必要ありません』

「いえ、そんなはずは……だって迷宮主になるのは王位継承者だと決められていたはずではありませんか!? 貴方が本当に建国された初代女王だと言うなら貴方が制定された取り決めなはずです」

『そうですね。王位を継承する者が迷宮主になるというのは私が決めて後の世の王位継承者に守らせてきた決まりです。ですが、それは迷宮主になったことで得られる強いステータスとスキルを私の子孫に受け継いでほしいという私の親心によるものです』


 たった3000とはいえ、ステータスがそれだけ強化されれば大抵の相手には負けない。

 また、統治をするうえで王の咆哮というスキルほど有効的なスキルはない。


 それを彼女は自分の子孫に受け継いでほしかった。

 その為に王位継承者以外には徹底して迷宮の存在を秘匿するように伝え、自分の子孫以外が迷宮主になってしまうのを防いだ。


「でも、迷宮主になっただけで王の咆哮というスキルが絶対に手に入るものなんですか?」

『このスキルは統治に苦労した私が作り上げたスキルなんです』


 迷宮主になった事から多くの人に頼られ、小さな村から統治を始めた彼女だったが集まって来た人々は統治者が女性という事で舐めた態度を取るようになった。

 中には統治者である彼女を追い出して自分が統治者になろうと画策する者まで現れ始めた。


 そこで彼女が迷宮核に頼んで用意したのが『王の咆哮』。

 自分よりも身分が低い者を隷属させるスキル。

 自分を頼って集まって来たのだから自分の指示に従うぐらいはしなさい、そういう気持ちから生まれたスキルだった。


『このスキルがあっても女性だというだけで女王だった私は色々と苦労しましたので王位継承者には必ず男性がなるようにしました。今回も決まりを守って第1王子が来てくれたようなので問題なく継承することができます。さ、迷宮核に触れて下さい』

「あ、はい……」


 ランドルフ王子が釈然としない様子ながら迷宮核へと近付く。

 これまで王位継承者として頑張って来て最後の試練として迷宮主になることを教えられたが、迷宮主になる為に必要な条件が初代女王の子孫の中でも男性である事だけが条件だった。


 王族の中でも選ばれた存在だと自負していた王子のプライドが脆くも崩れた。


「う……」


 迷宮核に触れて数秒ほど経つと王子が呻き声を上げながら倒れた。


「どうしたんですか?」


 ランドルフ王子に尋ねるものの返事がない。

 治療スキルを持つイリスが近付いて王子の体調を調べる。


「おそらく精神的な疲労によって気絶したものと思われます」

「精神的な疲労?」

『初めての迷宮探索で疲れていたところに最下層で待ち受けていた弟の成れの果て。あのような物を目撃した後で迷宮主になった事で上昇したステータスに体が付いて行けずに倒れてしまったのでしょう』


 俺の時は迷宮主になって倒れるようなことはなかったが、人によってはそういうこともあるのだろう。


『気絶した彼は転移結晶で地上へと連れて行けば問題ないでしょう。それよりも問題なのは地上にいる先代迷宮主の方です』

「国王様?」

『迷宮主を継承した段階において前迷宮主から迷宮主の力が失われ、今頃はステータスが著しく低下していることでしょう』


 ステータスがいきなり低下すればどうなるか?


 一番問題となるのが体力値の低下だ。それまで異常な体力があったことで普通にできていたことができなくなる。

 今頃は気絶した王子と同じように倒れてしまった国王の対応に王城の人たちは追われていることだろう。


 自分の子孫の危機だというのに少女はクスクス笑っている。


『これぐらいの危機は乗り越えてくれなければ話になりません。さて、今回私が姿を現した理由ですが、新たな迷宮主と話をする為でもありましたが、それ以上に貴方たちにお礼がしたかったからです』


 お礼、と言っても実体のない迷宮核にできることは少ない。

 また迷宮の力を利用しようにも彼女に与えられている力では大したことはできない。


「なら、俺の質問に答えてくれますか?」

『あら、そんな事でいいのですか?』

「はい」


 ある意味、1番聞かなければならない事がある。


「俺が迷宮主になった時は、迷宮の最下層まで転移結晶で転移できるようになっていたから辿り着くことができた。俺の迷宮核は、俺が『迷宮核が生きていた頃に似ている』と言っていました。どうして最下層まで転移することができたのか他に心当たりはありませんか?」


 同じように何千年も迷宮主が訪れるのを最下層で待っていたなら彼女なら明確な答えを持っているかもしれない。

 アリスターの迷宮核は、自分と似ているからと言って最下層へ転移できる理由を分かっていないみたいだった。


『この迷宮にも同じように最下層へ転移できる人物がいました。ですが、私の方で彼女(・・)たちが迷宮主になることを拒みました』


 一瞬、どうして迷宮主になることを拒んだのか分からなかったが、迷宮核の少女が言った『彼女』という言葉で理解した。


 最下層へ転移できた人物は全員が女性だ。

 そして、この迷宮の迷宮主になった人物は全員が国王になっている。


『私は自分が女王で苦労した経験から女性が迷宮主になることを拒んできました。最下層へ転移できる人物の中で男性がいれば迷うことなくその人物を迷宮主にしていたのですが、どれだけ待っても全員が女性でした』


 彼女にとっては迷宮主に――国王になる条件を満たしていなかった。


『時折、試練と称して迷宮に挑む兄の後をこっそりと尾行して迷宮へと入って来る妹がいるんです。そういう娘に限って最下層への転移権限を持っています』


 そうして迷宮核の少女の隣に似た姿をした3人の少女の幻影が映し出される。

 顔立ちの細かい部分は違うが、全員が栗色の髪をツインテールにしており、4人が並べば誰もが姉妹だと言えるぐらいに似ている。


『貴方は迷宮核が生きていた頃の姿を見たことがありますか?』

「いいえ、ありません」


 何度か迷宮核に見せてくれるように頼んだことがあるが、なぜか見せてくれたことがなかった。


 それは歴代の迷宮主も同じだった。

 彼らの姿を見れば迷宮主が迷宮核と似ているのか比較することができる。


 ただ、迷宮核の話を聞く限り女性の迷宮主もいたみたいなので容姿が似ている事だけが迷宮主になる条件ではないと思われる。


『貴方が知りたかったのは最下層への転移が可能な条件ですか?』

「はい。将来絶対に必要になる情報ですから」

『そうでしょうね』


 迷宮核の少女がニコニコとした表情で俺の近くにいる眷属を見る。


 何を言いたいのか分かる。

 俺がなぜ最下層への転移が可能だった理由を気にしているのか理由に気付いたシルビアたちが顔を赤くしている。


『条件としては、容姿というよりも似た魔力性質を持っているかどうかです』

「魔力性質、ですか?」

『転移結晶に触れた際、最下層に安置されている迷宮核の魔力と共鳴し最下層への転移が可能になる。私はそう判断しています』

「迷宮核でも分からないんですか?」

『私自身は迷宮核に意識を転写させた存在です。私も迷宮核の全ての権限を把握しているわけではないのです』


 そう言われては仕方ない。

 俺の場合に当て嵌めるなら転移結晶に触れた際に最下層に安置されている迷宮核と同調したことによって最下層への転移が可能になった。


 王都の迷宮の場合、迷宮へ挑む者は決まって王族だけである。

 王族は後世に優秀な血を残そうとし、爵位の高い貴族から嫁になる少女を招き入れる。その爵位の高い貴族の家には元王族の女性が嫁いでいる可能性が高い。


 つまり、王族と王家に嫁いだ者だと曽祖父や曾祖母が同一人物だったりする場合が高い。

 そうなると血が交ざった結果、迷宮核の少女の血が強くなる。

 自然、迷宮核の少女に似た少女が生まれてきてもおかしくない。


 問題は俺の場合だ。

 父親は小さな村出身で出自がよく分からないが、母親は大きな商家の出身だった。


 どこかで迷宮核となった人物の血が交ざっているのかもしれないが、彼が迷宮主として生きていた時代は何千年も前の話だ。該当者などたくさんいる可能性がある。


 そうなると俺に色濃く現れた何かがあったから迷宮主として招かれた。


「ただし、その何かは分からない」

『迷宮核が語らないとしたら私と同じように語らない理由があると思われます。私の場合は、迷宮がある意味やスキルについて知らない方がいいと判断して迷宮主の前にすら出なかっただけなんですけどね』


 クスクスと笑いながら与えられた力に戸惑ってオロオロしている姿を思い出していた。

 本来ならランドルフ王子も騎士を連れて楽々と迷宮を攻略した後に与えられた力に戸惑うはずだった。だが、気絶してしまってはそんな姿を晒すこともない。


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