表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第11章 王都迷宮
207/1458

お正月特別企画 お年玉

みなさん明けましておめでとうございます。

※時系列としては、第8章と第9章の間なのでイリスはいません。

 新年になったことを祝うパーティ。


 身内だけとはいえ、全員の家族が集まったことによって屋敷のリビングは人で一杯になっていた。

 屋敷を購入した時は、人がこんなに集まることなんて予想していなかった。


「あけましておめでとう!」


 やがて、時計が新年になったことを告げるとメリッサの父親であるガエリオさんが挨拶をする。

 俺たちの関係者が全員集まると男性の中での年長者がガエリオさんだったので自然とこういう挨拶はガエリオさんがすることになっていた。


 その場に集まっていた面々がお酒の入ったグラスを掲げる。

 年少組の妹たちはお酒の代わりにジュースだ。


 酒を飲んだ時特有の熱が体に行き渡る。


「大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫」


 俺の様子を心配したシルビアがハンカチを手にしながら覗き込んでくる。

 酔いが回り易い体質なせいで、たった一杯のお酒で倒れそうなほど頭がクラクラするけど、せっかくの新年のお祝いぐらいは皆と一緒にお酒を飲みたい。


「お兄様とシルビアさんは、いつも仲がいいですね」


 ジュースを手に持ったクリスが重なるほど近い俺たちの距離を見ながら言う。

 咄嗟に敏捷の高さを活かしてシルビアが離れる。メイドらしく後ろで控えているんだけど、直前の姿を見られてしまっているせいで親たちがニヤニヤしている。


「大丈夫かい、リアーナちゃん」


 話を逸らす為にクリスの隣で眠たそうにしているリアーナちゃんに尋ねる。


「大丈夫です」


 時刻は日付の変わった夜更け。

 子供には起きているにはちょっと辛い時間かもしれない。


「そんな君たちにプレゼントだ」

「プレゼント、ですか?」


 子供たちにガエリオさんが近付きながら3人の妹たちに小さな封筒を渡した。

 プレゼントを渡された相手の1人であるメリルちゃんが首を傾げている。


「はい、お年玉だよ」


 ガエリオさんが封筒の中には銀貨が5枚入っていた。


「ガエリオさん、これは?」


 妹たちの保護者の1人として尋ねずにはいられなかった。


「東国にある文化の1つです。その国では新年になると大人が子供に『お年玉』としてお金を渡す風習があるみたいです」


 商売をしているガエリオさんは、こういう話にも詳しかった。


「東国ということは、帝国ですか?」

「いえ、もっと向こうにある小さな島国みたいです」


 小さな島国か。

 ちょっと興味があるので色々と調べてみるのも面白いかもしれない。


「ありがとうございますガエリオさん」

「ありがとう」

「ありがとうございます、お父様」

「どういたしまして」


 3人の少女から満面の笑みでお礼を言われてガエリオさんが嬉しそうにしていた。


「あの、私の娘までよろしかったのでしょうか?」


 リアーナちゃんの母親であるオリビアさんが申し訳なさそうにガエリオさんに尋ねている。

 嬉しそうに3人で使い道を話しているリアーナちゃんの姿を見ていると今さら返しなさいと言えるような状況ではない。


「いいのですよ。リアーナちゃんも既に私の娘みたいなものです。クリスちゃんとリアーナちゃんの父親代わりができる人間がいるとしたら私しかいないのですからこれぐらいのことはさせて下さい」

「ありがとうございます」


 実際、俺たち4人の中で生きている父親はガエリオさんしかいない。

 父親役ができるとしたらガエリオさんだろう。


 だが、俺にも保護者としての自覚がある。


「みんな――」


 パーティの参加者たちには見えないように出現させた宝箱(トレジャーボックス)から金貨を15枚――5枚ずつ取り出して握りしめる。


 その手をパシッと誰かに掴まれた。


『なんだシルビア』

『今、何を渡そうとしましたか?』


 内緒の話をする為に念話で話し掛ける。


『何って金貨を5枚だけど』

『金貨5枚がどれだけの価値があるのか理解したうえで渡そうとしていますか?』


 おっと、シルビアに言われるまで失念していた。


 今日のパーティの為に用意した食材やお酒の準備だって銀貨で10枚ちょっとしかしていない。

 それなのに銀貨の100倍の価値がある金貨を5枚も簡単に渡そうとしてしまった。


 迷宮主になって大量の金貨を手にしてしまったせいで金銭感覚が麻痺していた。


『それに、こういうのは渡す金額が多ければいいってもんじゃないわよ』

『そうです。あくまでもお小遣いの一環として渡すならお父様が渡したぐらいの金額がちょうどいいです。それに子供に大金を渡すと強盗のような輩に狙われて危険な場合もあります』

『むっ』


 高額なお小遣いを渡そうとしていた姿を見ていたアイラとメリッサからも咎められてしまった。

 銀貨5枚を貰って嬉しそうにしていた3人の姿を見てしまったせいで、ついつい見栄を張ってガエリオさんよりも多い金額を渡したくなってしまっただけだ。


 たとえ強盗に襲われたとしても3人には優秀な護衛を付けているので、そう簡単に傷付けられることはない……メリッサが言いたいのはそういうことではないのは分かっているので自重する。


『無難な金額を渡したいならガエリオさんが渡した金額と同じ方がよろしいのではないですか?』


 ガエリオさんの立場なんかも考えればその方がいいかもしれない。


 お年玉を渡すにしてもいくら渡すのか考えなければならないみたいだ。

 金額が少なすぎると子供たちから不満の声が上がる。多すぎると多く渡し過ぎだと親から抗議の声を受ける。


 そんなことを考えている間に事態は進行してしまった。


「じゃあ、俺からも渡そう」

「ありがとうございます、カラリスお兄様」


 ああ、兄が3人に銀貨5枚を3人に渡してしまった。

 騎士として働いている兄ならそれぐらいの金額はなんともないのだろう。


 こっちだって銀貨15枚ぐらいならなんともない。

 けど、この後で渡しても兄が渡してしまったので仕方なく渡したような形になる。


『ご主人様……』

『マルス……』

『渡さないという選択もないかと思われます』


 俺にだって保護者の見栄がある。


「みんな、俺からもお年玉だよ」

『ありがとうございます』


 妹たち3人から満面の笑みを向けられる。

 ああ、銀貨15枚分の価値はあるね。


『ご主人様……』

『妹相手にデレデレしない』

『その感想もどうかと思います』


 口にも念話にも出していないはずなのだが、眷属(サーヴァント)3人には俺がどう思ったのかしっかりと伝わってしまったらしい。

 ちょっとぐらい純真な少女に癒されてもいいだろ。


 金額に余裕があってもお年玉の金額には注意しなければならないらしい。


フォルダの大掃除をしていたら小話に描いた話が出て来てしまったので思わず投稿してしまいました。

皆さんは大掃除など年末年始の準備を終えたうえで、年越しを迎えられましたか?

私は大晦日と元旦だけ休みで明後日から仕事です。

とりあえず実家に帰ったら従兄弟たちにお年玉を上げてきます。今年は去年よりも1000円多くあげないと……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ