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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第11章 王都迷宮
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第9話 王都のギルドマスター

「いや、あなたたちのおかげで予定よりも早く王都へ着くことができた」

「それはよかったです」


 アリスターを出発してから5日目の昼過ぎ。

 当初の予定では野営をしながらの移動だったため7日掛かるだろうと思われていた旅程だったが、野営を快適に過ごせた影響で2日も短縮することができた。

 俺たちが全力で走れば3日なんだけどな。


 依頼人の商人から依頼完了のサインをもらって王都のギルドへと向かう。


 王都のギルドは昼過ぎという冒険者の少なくなるはずの時間帯にも関わらず人で賑わっていた。王都のギルドは、アリスターのような辺境と違って魔物討伐は王都の軍が請け負ってくれているため冒険者に回って来る仕事は少ない。その代わり、貴族から頼まれる雑用などが多いため朝早くから出かける必要もない。


「マ、マルスさん!?」


 俺たちの王都での担当のようになっているリリアナさんが冒険者ギルドに入って来た俺たちの姿を見て驚いている。


 その声に釣られてギルド内にいた他の冒険者たちから注目を集めてしまった。


「おい、あいつらが戦争で帝国軍を壊滅させたって連中だろ」

「残念だけど、倒したのは1万ちょっとだけでほとんどは逃げ帰ったみたいだぞ」

「どうせなら全滅させればよかったのに」

「逃がしたせいでこっちは盗賊退治に忙しいんだよ」


 数日しか経っていないのに俺たちが帝国軍を追い払ったことが知られてしまっている。

 もっと時間が経てば自然と知られることになるだろうと考えていたから問題はない。けど、最後の奴が言った俺たちのせいで盗賊の数が増えたというのは看過できないが、何を言ったところで納得してくれないので野次馬を無視してリリアナさんのいるカウンターへと向かう。


「すみません。依頼完了の受理をお願いします」

「はい。今回受けられたのは護衛依頼ですね」


 最初に俺を見つけた醜態を隠してリリアナさんが書類を処理してくれる。

 カウンターの下にある引き出しから報酬の金貨30枚を取り出す。たった5日の護衛でこれだけ貰えるとなるとどれだけAランク冒険者というものに箔があるのか分かる。


「じゃあ、俺たちは帰りますね」

「すみません。マルスさんたちが来た時にはギルドマスターの部屋へ案内するように言われているんです」


 本当なら面倒事に巻き込まれる前にアリスターへ帰ってしまおうと考えていたのだが、リリアナさんに先手を打たれてしまった。


 仕方ない。

 彼女に先導されてギルドマスターの執務室がある3階へと向かう。


 そういえば王都のギルドマスターには会ったことがなかったな。


「気を付けてください。ここのギルドマスターは曲者です」

「私も彼女は苦手です」


 ギルドマスターと会ったことのあるメリッサとイリスから忠告される。

 Aランク冒険者として活躍していたイリスならギルドマスターと面識があるのは分かるが、メリッサはどこで出会ったのか。


「王都の商人と仲良くなっている内にギルドマスターを紹介されました。彼女を一言で表すなら『老獪』です。見た目には決して騙されないで下さい」


 いまいちメリッサの忠告の意味が分からなかったが、とりあえず頷いておく。


 これから会うギルドマスターはどんな人だろうか?


 俺が会ったことのあるギルドマスターとなるとアリスターとクラーシェルだ。どちらも若い頃に鍛えた元冒険者と騎士だったため中年になっても筋骨隆々の男性だった。

 王都のギルドマスターも同じような人かな?


「入りな」


 いつの間にかギルドマスターの執務室に辿り着いていたらしく扉をノックしたリリアナさんに中から声が返ってきた。

 しかし、この声は女性の物だぞ。


「失礼します」


 挨拶をしながら入ると俺たちよりもちょっと年上の20代前半ぐらいの女性がソファに座って腕と足を組んでいた。


「アタシがギルドマスターのルイーズ・シェフィールドだ。ギルドマスターとか呼ばれるのは好きじゃないからルイーズさんと呼びな」

「はぁ……」


 やはり目の前にいる女性がギルドマスターみたいだ。

 俺が知っているギルドマスターはイメージが全く違う。


 スラっと伸びた足、ボリュームはアイラほどだが均整の取れたプロポーション。透き通ったアイスブルーの瞳に深緑色の髪。誰もが美人と認める人物だった。


「見惚れないようにして下さい。彼女は90歳を超える老婆ですよ」

「え……!?」


 とても90歳には見えない。

 俺たちと同年代と言っても通用しそうな容姿をしている。


「ククッ、あの小さかったお嬢ちゃんが一丁前に嫉妬かい?」

「そういうわけではありません。老婆相手に嫉妬する必要なんてありません」

「アタシは自分の容姿についてしっかりと認識しているから誤魔化しは不要だよ。それにしても魔法の才を見出して冒険者にしようとしていたアタシの誘いを断っておきながら結局冒険者になったんだね」

「色々とあったのです」

「そうみたいだね」


 昔話に花を咲かせるように話をしていたルイーズさんの視線が俺に向けられる。

 この人もメリッサにとっての親代わりみたいな人なんだろう。

 そんな人物にとって俺みたいな存在は気に入らないはずだ。


「安心しな。アタシはメリッサだけじゃなくてイリスまで射止めた冒険者に興味があっただけだ」

「そうですか?」

「ああ。90年も生きていると色々な奴を見ることができる。あんたは、その中でも特別に変わった奴だね」


 本当に90年も生きているみたいだ。


「彼女はエルフなんです」

「……初めて見た」


 亜人自体数が少ないので、あまり見たことがないが、その中でも滅多に姿を現さないのが辺境にあるアリスターのさらに南にある樹海に住んでいると言われているエルフだ。エルフは閉鎖的な種族で樹海の外には数人しかいないと言われている。


 エルフなら実年齢と見た目の年齢が一致しないのも納得だ。

 エルフは100年以上の時を生き、外見年齢が10代後半から20代前半の間で固定されるらしい。


「それで昔話をする為に私たちを呼んだのですか?」

「だったら帰ります。ルイーズさんと違って私たちは忙しいんです」


 何か嫌な思い出でもあるのかメリッサとイリスが早く帰りたそうにしていた。


「せっかちな小娘たちだね」


 ルイーズさんが懐から一通の封筒を取り出す。


「アタシがあんたたちを呼んだのはアタシがどれだけ誘っても靡かなかったアンタたちを射止めた奴を見てみたかったっていう理由以外にもアンタたちに手紙を渡してほしいと頼まれたからだ。アンタたち随分とヤバイ奴らに目を付けられているみたいだね」

「ヤバイ奴ら……裏組織の連中ですか?」


 俺も……王都に長く住んでいるメリッサでさえ直接目にしたことはないが、裏から手を伸ばして影響力のある組織があるという話は聞いたことがある。そういう組織は平気で誘拐や強盗紛いの犯罪にも手を付けており、危険な組織であるというのが共通見解だった。


「そんな可愛い連中なら、まだよかったんだけどね」


 だが、ルイーズさんが教えてくれたのはそんな組織ではなかった。


「これは……!」


 ルイーズさんの渡してくれた封筒を裏返して押されていた封蝋を見た瞬間、メリッサが驚いている。そこには俺たちは知らない紋章が描かれていた。


「これは王族が使う封蝋です」

「なに?」


 思わずルイーズさんを見る。


「そうだよ。それは王城の内政官が持ってきた物だ。持ってきた奴は差出人については一言も言っていなかったけど、そんな封蝋をしている時点で誰が差出人なのか言っているようなものだよ」


 王族しか使うことの許されない封蝋がされた手紙。

 差出人は王族―― 一番関わりを避けたかった人物だ。


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