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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第11章 王都迷宮
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第8話 戦争の影響

「暇だな」

「そうですね」


 護衛依頼を受けてから3日目。

 特にすることもなく馬車の傍で待機する日々が続いたせいで隣にいるメリッサに話しかけてしまった。


 彼女もすることがなくて退屈していたみたいで反応が雑だ。


 とはいえ、暇をしているのは俺たちのパーティぐらいで……


「おい、魔法はまだか!?」

「もうちょっと待って下さい!」

「リーダー、さらに追加で来ましたよ」

「クソがっ……!」


 同じように護衛依頼を受けた冒険者たちは襲ってきた盗賊の相手に苦労させられていた。


 だが、俺たちは手出しをするような真似をしない。


 理由は彼らの報酬が減るからだ。

 複数のパーティが護衛をしている護衛依頼の最中に魔物や盗賊に襲われた場合、倒した魔物の素材や盗賊の討伐報酬は直接戦ったパーティに与えられることになっているのが冒険者のルールだ。


 俺たちが戦えばあっという間に討伐されてしまう。

 そのことに焦りを覚えた冒険者たちが俺たちに馬車の護衛を任せて自分たちで襲ってきた盗賊の討伐を請け負っていた。護衛としては先に引き受けていたのは彼らだったため俺たちは彼らの指示に従うしかなく、戦っている姿を馬車のすぐ傍で眺めながらのんびりとしていた。


「しかし、あれで本当にCランクの冒険者なのでしょうか?」

「俺たちを基準に考えるな。4人パーティと5人パーティの計9人で30人の盗賊に対応できているんだから十分強い方じゃないか?」

「その通りです。戦っている姿を見てもCランクとしては強い方です」


 俺と同じようにのんびりとしていたイリスが冒険者たちを擁護している。

 イリスは苦労しながら実力を付けてランクアップをしてきたから俺たちと違ってCランクの実力というものを理解している。


「頑張ってください」

「ほら、負けるんじゃないわよ」


 飽き始めてきたシルビアとアイラが冒険者たちを応援している。

 シルビアから応援されると気合を入れ直せたのか男性冒険者たちの盗賊を討伐する速度が上がる。どうやらシルビアにいいところを見せたいらしい。


 2つのパーティには3人の女性冒険者がいたのだが、速度が上がった原因を知った女性冒険者たちがムッとした表情をしていたが知らない。

 女性冒険者たちなのだが、残念ながら3人とも前衛であるため自然と筋肉がついてしまって体格が大きい。そのためシルビアのような華奢な少女から応援されて力を増しているのが気に入らないみたいだ。


「こうして護衛依頼を受けていると初めて出会った時のことを思い出すな」

「そういえば、あの時も護衛依頼の最中でしたね」

「初めて会った時の話ですか? 聞きたいです」

「そういうことなら古参であるわたしが話しましょう。アイラと初めて会った時なんて行き倒れていたんですから」

「ちょっと! どうしてその話を持ってくるの!?」


 すっかり初対面時の話で盛り上がり始めてしまった女性陣。

 そのせいで応援されなくなって冒険者たちが落ち込んでしまったのか使い物にならなくなってしまったせいで、何人か抜かれてしまったのだがそういう人物は俺の方で倒させてもらった。



 ☆ ☆ ☆



 道中の戦闘には参加させてもらえなかった俺たちだが、決して役に立っていないというわけではない。

 それが野営時の出来事だ。


「今日もごちそうになっていいかな?」

「いいですよ」


 20人分の食事を用意していたシルビアが承諾する。

 食事については、全員に振る舞う為に多めに用意してもらっていた。


「おい、いつもこんなに美味しい料理を作ってもらっているのか!?」

「普通、野営時の食事なんて干し肉に乾パンぐらいなんだけどな」


 2つのパーティのリーダーがシチューの入った皿を手に笑顔で話し掛けてくる。


 彼らは共に20代の男性で、元々は同じ村出身の幼馴染らしいのだが、対抗心から別々のパーティを組んで活動していた。けれども、幼馴染だったせいか似たような依頼を引き受けているせいで今回も同じ依頼を引き受けてしまったらしい。


「それもこれも収納リングがあるおかげか」


 初日の野営時に自分たちの荷物から干し肉と乾パンを取り出して準備を始めていた彼らには、収納リングから調理に必要な器具や食材を次から次へと出していく姿を見せている。


 これこそ俺たちが野営時に豊かな食事ができる理由だ。

 メインの味付けなどはシルビアが全て行うが、野菜や肉を切るという手伝いは他の3人も行っている。イリスも冒険者になってからは料理をあまりしていなかったが、孤児院に居た期間は職員の手伝いをしていたので最低限の知識はあるということなので手伝いに参加させていた。

 唯一パーティ内で調理ができないのが俺だ。


 パーティメンバーの女性陣全員で料理を作ってくれる。

 その状況に再び嫉妬を買ってしまった。しかも他のパーティの女性メンバーは料理ができずに豪快に干し肉を噛み千切ろうとしていたので調理ができることに対してシルビアたちが嫉妬の宿った視線を受けていた。


「みなさん王都で活躍されている冒険者ですよね。収納リングの購入を考えたりしたことはなかったんですか?」

「馬鹿言うな。収納リングは性能によって値段が違うが、お前たちが使っているような代物だと金貨で100枚は必要になってくるかもしれない。金を出せば手に入れられる代物だとしても金を手に入れるのが難しいんだよ」


 そういうものか。

 金貨100枚ぐらいなら……いや、ダメだ。村人だった父でさえ年間に金貨10枚も稼げればいい方だった。それを考えると金貨100枚はたしかに高い。

 迷宮主になったせいで金銭感覚がおかしくなり始めている。


「それにしても盗賊の数が多いですね」


 これまでに護衛依頼は何度かしたことがあるが、護衛中に盗賊に襲われることなど目的地までの間に1度あるぐらいだ。

 それなのに毎日のように襲われている。今日の30人は多い方だったが、昨日と一昨日は15人の盗賊に襲われている。


「そりゃ、戦争のせいだ」

「どうしてです?」

「どこかの誰かさんが帝国軍を相手に圧勝し過ぎたせいで国に帰れなかった兵士連中が王国内で盗賊になっているんだよ。敵前逃亡は重罪だからな」


 徴兵された領民たちは故郷に帰ることができたらしいが、逃げ帰っただけの兵士たちには重い罰が待っている。

 軍の出兵には大金が掛かる。何の成果も得られずに帰って来ただけでなく、王国内に持ち込んだ物資のほとんどを持ち帰ることができずに逃げてしまったせいで責任を取らされることになったらしい。


 戦争を仕掛けて来たのは帝国軍の方なので、自業自得として割り切る。


「さて、そんな活躍してランクアップした冒険者に忠告だ」


 この人たちは俺が戦争で活躍した冒険者だと知っている。

 さすがに俺たちの顔まで事前に知られているようなことはなかったが、自己紹介をした時にパーティメンバー全員がAランクだと知った時の反応から俺たちのランクから知られてしまったと思われる。

 今後は、可能な限りランクは秘匿して、知らせるにしてもパーティリーダーである俺のランクだけでいいかもしれない。


「今回の依頼だが、お前たちを王都へ連れて行くのが目的だと考えている」

「戦争のせいで盗賊が増えているにしても俺たちだけで十分だったからな」

「……そうですか? 途中で抜けられていたように記憶しているんですけど」

「あれは、ちょっと油断しただけだ!」


 そういうことにしてあげよう。

 とはいえ、ルーティさんとイリスが気付いていたことだったからそれほど気にしていない。


「目的は何だと思いますか?」

「気付いていたのか。残念だけど、目的までは分からねぇ。だが、依頼人の主にあたる人間は国とも繋がりのある商人だって聞いた。最悪の場合には国が介入してくることもあり得るから十分気を付けろよ」

「国、ですか……」


 国から色々と目を付けられてしまうと自由に動けなくなってしまう可能性がある。

 それに以前にやらかしてしまった事情があるので国と関わり合いになるつもりはない。


 そっとシルビアが作ったシチューの入った皿を受け取る依頼人を見る。

 今回の依頼人は、王都にある大きな商会で輸送を担当している人物で他に5人の部下を引き連れて荷物の搬入などを行っていた。

 こうして落ち着いて食事をしている姿を見る限りは、何かを企んでいる様子はないみたいだけど、依頼人の主である商人、その裏にいるであろう黒幕の人間性までは推し量ることができない。


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