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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第2章 捜索依頼
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第2話 Fランク依頼

 預託金のことについてもそうだが、せっかく冒険者になったというのに俺は冒険者らしく依頼をまだ受けたことがない。

 それに情報が集まるまでそれなりに日数が掛かりそうだ。


「あの、依頼を受けてみようと思うんですけど、最初はどんなものがいいですかね?」

「そうですね。マルス君のランクは今Fランクだからスキップで飛ばしたGランクについても説明しようかな」


 ルーティさんがカウンターの中にあった1枚の依頼票を見せてくれる。


「Gランク冒険者が受けられる依頼は基本的に街中で済むような雑用系の仕事ね。具体的には溝掃除とか資材運びみたいな体力があれば誰でもできて、けど誰もやりたがらないような仕事。あとは報酬が安くなれば家事を手伝ってほしいなんてものもあるわね」


 街中の安全が保障された依頼でお金を貯める。貯めたお金を使って武器や防具を買い、戦える力を手に入れる。

 そうして、初めて外での雑用を受けられるようになる。


「Fランクの依頼だと主に街の近くに出没する魔物の討伐。魔物の出没する森に入って薬草などの採取。それから危険な場所での雑用も含まれます」


 雑用の場合には、他に護衛を受け持ってくれる冒険者がいる。


「今ですと、こんな依頼がありますね」


 ルーティさんがいくつかの依頼票を見せてくれる。




==========

 依頼:スライムの討伐

 依頼:ゴブリンの討伐

 依頼:コボルトの討伐

 依頼:夜露草の採取

 依頼:街道の整備

==========




 街の近くに出現する魔物は領主にとって悩みの種だ。魔物はどれだけ狩り続けてもどこからともなく現れる。定期的に間引かなければ魔物は群れを作り、街や村を襲うようになる。まあ、その頃には冒険者だけでなく、騎士団まで出て魔物を狩ることになる。騎士団が常駐しているアリスターの街ならそこまで心配する必要もない。

 街の近くでは、出てくる魔物もほとんどが弱い魔物なためFランクの冒険者でも対応できる、ということだろう。


 他には夜露草の採取がある。これは、薬草の一種で、採取してくれば買い取ってくれるようで、たくさん生えている場所も分かっているので採取自体は難しくないとのこと。

 しかし、その場所は森で、ホーンラビットなどの魔物が出現することがある。下手をすれば怪我をしてしまうことがあるため最低限の装備を持った冒険者を派遣するようにしていた。


「街道の整備は、Gランクの冒険者ではダメなんですか?」

「ダメ、と言いますか……もしもの場合を考えると対応できるだけの冒険者に依頼したいというのが正直なところですね。整備していただく街道は、魔物に荒らされるような場所です。そんな場所には、魔物だけでなく盗賊が出没することもあるので、雑用とはいえそれなりの実力を要求させていただいているんです。もちろん作業の間は、Dランクの冒険者が護衛に当たってくれるので、早々危険な目には遭いませんよ」


 そういうことなら多少の経験は必要だろう。


 しかし、いくら冒険者としての経験を求めているとはいえ、迷宮主(ダンジョンマスター)が街道整備の手伝いをするというのはどうなんだろうか?

 というか、簡単な整備なら魔法を使ってしまえばあっという間に終わる。

 これは、パスだな。


「討伐依頼と採取依頼を受けてみたいと思います」

「でしたら私のオススメはスライムの討伐と夜露草の採取ですね」


 カウンターの中にある引き出しからこの辺りの地図を取り出して夜露草が生えている場所を教えてくれる。


「夜露草はこの森に多く生えています。現地までは一般的な冒険者が走って2時間ぐらいの距離ですね。そして、その手前の草原ではスライムの目撃情報が多いので、ついでに狩ることもできますよ。依頼は一度に2つまで受けることができますから、同時にこなすのがお得ですね」


 たしかにその通りだ。


「ちなみに討伐依頼を受けていない魔物――たとえばゴブリンやホーンラビットのような魔物を倒した場合にはどうなりますか?」

「いいところに気が付きましたね。討伐依頼を受けてから倒した魔物に関しては報酬が出ますが、それ以外の魔物には報酬はでませんね。ただ、持ち帰った素材や魔石を買い取ることはできるので決して無駄ではありませんよ」

「分かりました。収納リングもあるので余裕があれば素材や魔石も持ち帰ることにします」

「ちなみに収納リングなんて代物を初めて見たので興味本位で聞いてみたいのですが、どれだけの容量があるんですか?」


 興味本位と言っているが、おそらく冒険者ギルドとして所属している冒険者の実力を把握しておきたかったのだろう。容量次第では、大量の素材や魔石を持ち込めるから警戒させてしまったのかもしれない。


「それほど多くは入りませんよ。精々2メートル立方の空間がある程度なので、装備品とかを入れてしまうと、後はあまり入らないんですよね」


 迷宮魔法:宝箱(トレジャーボックス)を使用して財宝を造り出す為には迷宮が蓄えている魔力を消費する必要があった。かなりカツカツの状態だったため収納リングに関しては、節約しようと考えてギリギリの大きさにした。


 それに収納に関しては迷宮魔法:道具箱(アイテムボックス)がある。人前では使えないというデメリットがあるものの収納限界がないこっちの方が使い勝手がいいのは確かだ。


「分かりました。装備はそれなりに整っているようなので、心配はそれほどしていませんが、十分に気をつけて行ってきてください」




 ☆ ☆ ☆




 ルーティさんに教えられた森までは一般的な冒険者が走れば2時間もしない内に辿り着ける場所にあった。そこまでは街道のない草原を突っ切る必要があり、森に目的がなければ誰も利用しないような場所だった。

 おかげで誰の目も気にすることなくステータスを全開にして走り切ることができた。


「これは、自重した方がよさそうだな」


 2時間掛かる距離を10分で走破してしまった。

 ルーティさんが言っていた一般的な冒険者というのは、この森に用があるのが主にFランクやEランクの冒険者だったため、ステータス値100ぐらいを基準に考えられた時間だった。

 その距離を100倍のステータス値10000オーバーの俺が走破すれば、時間は100分の1に短縮される。いや、いくら冒険者とはいえ、体力が100では2時間も走り続けられる訳がない。途中で歩きながらの時間も含めて2時間だったのだろう。

 こんな速度を知られるだけでも面倒なことになる。


「やっぱり制約の指輪は必要だな」


 自分の全力がどの程度なのか?

 興味本位から制約の指輪を外して全力疾走してみたが、結果は予想以上のものとなった。


 目的地である森まで、まだ100メートルほどある。

 こんな場所で止まったのにはもちろん理由がある。


「忘れるところだった」


 俺の目の前にはスライムが2体。

 スライムは、魔石の周りに水が纏わり、それを魔石が粘性の水へと変えることで肉体を得た魔物。そのため、倒すには剣などの刃物で体を剥ぎ取り、体の大きさが小さくなったことで動けなくなったスライムから魔石を抜き取る。


 さっそく神剣の力を確かめてみる……わけにもいかない。


 さっき走ってみて分かったが、ステータスの力は絶対だ。


 スライムはFランクの冒険者でも倒せるほど弱い魔物で、迷宮でも地下4階から出現する。

 そんな相手にレア度Sの神剣・星雫を使うのは明らかにオーバーキルだ。


 そこで、武器屋を覗いてみた時に見つけたナイフを取り出して、スライムに向かって走る。もちろんステータスは抑えた状態で。


 スライムは自分に向かってくる相手の姿を見た瞬間、ぴゅいーという鳴き声?を上げながら俺の方へと近付いてくる。スライムの体当たりを避けると、そのままナイフを一閃する。スライムの体の下半分が落ち、そのまま抉るようにナイフを使って魔石を取り出すとスライムの体が完全にただの液体に戻る。

 同じようにもう一体のスライムも倒すと2つの魔石を回収する。

 持ってきた布で粘ついた液体を拭き取ると、それなりに綺麗になった。収納リングがあったとしてもさすがに粘ついた魔石を持ち歩くようなつもりはなかった。


「よわい……」


 それでも仕方ないと思いながら魔石を収納リングにしまい、夜露草を採取する為に森の中へと進む。


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