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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第11章 王都迷宮
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第4話 鉱山フィールド

 イリスを連れて全員で転移したのは迷宮の地下21階。


 事前に聞いたところ数年前に迷宮でレベル上げを行ったことがあるらしく、その時は地下20階まで進み、最奥にいるボスには挑まずに帰って来たらしい。


 そのため地下21階の鉱山フィールドから始めても問題ない。

 それどころか迷宮に挑んだ当時からは考えられないほどステータスが向上しているので草原フィールドでは物足りない。


 そして、鉱山フィールドはイリスの実力を確かめるうえで打って付けだった。


「鉱石系の魔物が多いですね」

「分かるのか?」

「迷宮適応のおかげでしょうか。今いる階層の様子が手に取るように分かります」


 その辺は俺と同じだ。

 迷宮適応のおかげで迷宮内の地図が視界の隅に表示され、魔物の位置も大まかにだが表示される。このスキルのおかげで迷宮内では奇襲の心配がない。


 少し待っていると人の気配を感じた魔物が現れた。


 ――ゴロゴロ。


 岩の転がる音が聞こえる。

 実際、離れた場所から全長2メートル弱の俺たちよりも少しサイズの大きい岩がこちらに向かって転がって来ていた。大岩は、ただの岩ではなく岩の形をした魔物――アイアンロックで自分の縄張りを訪れた相手を潰そうとする習性を持っている。彼らにとっての縄張りは、地下21階全てだ。


 生半可な攻撃力では傷を付けるのも難しいほど防御力が高いので、鉱山フィールドを訪れた冒険者たちは避ける傾向にある。動きが遅く直線的なので避けるのは簡単だ。


「さて、どうする?」


 俺がわざわざイリスに尋ねたのは戦えるかどうか確認する為だ。

 ちなみにイリス以外のメンバーは俺も含めて全員アイアンロックを倒すことができる。


「今なら倒せる気がします」


 イリスが聖剣を抜く。


 彼女の聖剣はアイラに与えた聖剣よりも細く長いため、速く振って敵を斬ることに特化している。

 細い剣とアイアンロックの硬い体を見比べると、とても斬れるようには思えない。


 アイアンロックが10メートルまで近付く。


 イリスがアイアンロックに向けて剣を振り下ろすと剣先から発生した水の刃が真っ直ぐに飛んで行く。


 水属性魔法――ウォーターカッター。

 高圧に圧縮された水の刃を発生させて相手を斬る水属性魔法の中でも初級の魔法。イリスは剣を振り下ろすと同時に魔法を発動させることによって刃のイメージを強くし、鋭さを強化させていた。


 ――斬。

 飛んだ水の刃がアイアンロックの体を両断する。

 転がっていたアイアンロックが左右に倒れ大きな音が鳴る。


「今のウォーターカッターだろ?」

「そうです。単体の単純な攻撃魔法なので初級魔法とされていますが、使用時の魔力量やイメージによって威力が変わるんですけど、これは予想以上ですね」


 まさか両断できるとは思っていなかったのかイリスが戸惑っている。


 一般的な攻略法としては、ハンマーのような打撃武器を何度も叩きつけて砕くのが普通だ。アイアンロックは体の半分ほどを失うと機能を停止させるので筋力値の高い者なら難しくない。

 アイアンロックの体の中心には純度の高い魔石があり、体内に貴金属が含まれているので金になるということで戦える冒険者からは人気のある魔物だ。


 イリスの両断した面から魔石が少しだけ見えている。

 少々イレギュラーな倒し方だが、体の半分以上を破壊しなくても魔石を破壊するだけで機能を停止させることが可能だ。もっとも、その場合は旨味がないので魔石を破壊する冒険者は少ない。


 イリスが魔石を破壊してしまう。

 それまで、どうにか起き上がろうとしていたアイアンロックの動きが止まる。


 俺たちの目的は、迷宮がどのような場所なのかイリスに説明する為と彼女の実力を把握する為なので魔石などの素材の回収は考えていない。


「私の武器は、このように細く脆いので防御力の高い相手と戦う場合には魔法と併用して戦った方が効率いいみたいです。これまでは魔力を温存して状況に合わせて剣か魔法のどちらかでしか戦ってこなかったのですが、今のステータスなら十分に戦い続けることができます」


 魔法を使うイリスだが、メリッサのように魔法特化というわけでもない。

 アイラのように近接戦に特化しているわけでもない。


 結局、俺と同じように剣と魔法を使い分けるのがいいということになった。


「鉱石系の魔物が相手でも十分に戦えるみたいだな。それが分かったところで迷宮の旨味を教えようじゃないか」


 イリスの倒したアイアンロックの魔石の傍には、よく見ると金色に光る小さな塊があった。

 微量ではあるが、金が埋め込まれている。


「こんな簡単に金が見つかってよろしいのですか?」

「普通なら簡単じゃないから手に入るんだよ。普通の冒険者は1体を倒すのに十数分と戦い続けて、傷を負いながら戦って金貨1枚にも満たない価値の貴金属しか得られないんだ」


 しかし、量はまちまちだが確実に金が手に入る。

 そのため冒険者からは人気があった。


「そうですよね。強くなりすぎて感覚がおかしくなりそうですが、こんなに硬い魔物なんて攻略法が確立されていなければ上級冒険者が相手にするような強さの魔物ですからね」


 両断されたアイアンロックを見つめながらシルビアがしみじみと呟く。


 けど、その意見には素直に賛同できない。

 今はシルビアだって上級冒険者の仲間入りをしているし、かなり早い段階からアイアンロックを討伐することができた。


 ま、シルビアの方法は特別だ。


「ご主人様」

「分かっている」


 別の通路からアイアンロックが転がって来る音が聞こえる。


「鉱山フィールドのもう1つの特徴は、壁の材質だ」


 上層にある洞窟フィールドとは違って壁が破壊できるようになっている。

 10000を超えるステータスでちょっと強めに壁を殴るとボロボロと剥がれ、中から製錬された鉄が出て来た。


 通常ならツルハシのような道具を使いながら掘削する。

 破壊できる壁を削ると中から金属を手に入れることができる。


 それが鉱山フィールドの特徴だった。


 しかし、金属というのはとにかく重い。

 持って帰るだけでも苦労するので収納リングのような空間拡張系の魔法道具を持たない冒険者では持ち帰れる量はそれほど多くない。


 さらに魔物も出現するので警戒しながらの探索となる。


「地下21階のコンセプトは、討伐に時間の掛かるアイアンロックの相手をしながら周囲にある壁から鉱石や金属を入手して街へ持ち帰る。掘削も討伐も作業に時間が掛かるから冒険者の滞在が長くなるんだ」

「なるほど。滞在時間が長くなれば得られる魔力も多くなるので――」

「それが目的なんですけど、この状況は普通ならマズいですね」


 メリッサが通路の前後をアイアンロックに囲まれていることに気付く。

 しかし、慌てた様子は全くない。


「行きます――!」


 イリスが剣を再び構える。

 しかし、前後を硬い魔物に囲まれた状況から緊張しているみたいだ。


「シルビア、アイラ」

「はい」

「りょーかい」


 シルビアとアイラがそれぞれ駆ける。


「あれ……?」


 緊張していた様子のイリスがポカンとしている。

 彼女の視線の先では、アイアンロックの横を2人が駆け抜けると動きを止めるという光景があった。


「倒した、んですか?」


 迷宮適応で表示される地図で確認すればアイアンロックの反応が消えていることから死んでいることが明白なのに聞いてくる。


 まあ、イリスの目にはアイラが剣を振り抜くと魔石ごとアイアンロックを斬って、シルビアが短剣を振るうと斬られたわけでもないのに停止したようにしか見えない。

 アイラは『明鏡止水』で防御力を無視して斬り、シルビアは硬い体を通り抜けて魔石だけを斬っていた。


「そんな……」


 硬い魔物を斬れたことで付いた自信が砕けてしまったみたいだ。

 しかし、イリスの実力を確認するだけでなくイリスにもメンバーの実力を確認してもらう必要がある。


「掘削はそういうことができる場所だって理解してくれればいいから、このまま奥に進んでみよう」


 思い通りに進めてみる為にイリスを先頭にして奥へ進む。

 しかし、正しい道順が分かっているせいで何度かアイアンロックや蟻の姿をした体長70センチほどある魔物のロックアントと戦闘を問題なくするだけであっという間に最奥へ辿り着いてしまった。


 迷う恐怖心を覚えてもらおうと思ったのだが、意味がなかった。


「どうする? このまま地下22階に行くか?」


 目の前には地下22階へ転移できる魔法陣がある。


「鉱石系の魔物とも問題なく戦えるみたいなので必要ないのでは? この下に出てくるドリルモールやストーンクロウラーには違った注意が必要ですが、私たちが気にするべきはそういうことではないでしょう」

「そうだな」


 だとしたら次のフィールドへと移動するべきだな。


「次の転移先は地下27階だ」

「よりによってあそこですか」


 ちょっと変わり種の階層へ行くぐらいいいじゃないか。


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