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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第11章 王都迷宮
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第1話 Aランク冒険者

 グレンヴァルガ帝国軍との戦争が落ち着いてから3日。


 その間、俺たちは戦争の後片付けを手伝っていた。

 特に東側に開けた大穴の修復。これは『迷宮操作』を持つ者でなければ埋めることができないので自然と俺かイリスのどちらかがやらなければならない。しかし、新しく手に入れたスキルに慣れていないイリスでは作業に時間が掛かってしまうので俺がほとんどの作業を請け負った。


 結果、3日目の昼過ぎにはどうにか穴の底から全ての槍を撤去し、迷宮操作で生み出した土で穴を埋め終わり、土魔法を使ってボロボロになった街道もある程度は元通りにすることができた。再開発とか色々あるだろうし、ここから先はクラーシェルにいる土魔法使いに任せることにしよう。


「それで、用件はなんですか?」


 俺も含めてパーティメンバー全員がギルドマスターの執務室に呼び出されていた。

 俺以外にもシルビアは復興作業をしている人たちの為に炊き出しを行っていたし、アイラは不埒な輩が現れないか護衛をしていた。メリッサは俺と同じように北側の街道を修復していた。

 みんな色々と忙しかった。


「すまない。まずは確認したいことがある」


 真面目な様子のギルドマスターが執務机の前に並んだ俺たちに尋ねてくる。


「お前たちなら後から来た数万の軍勢を殲滅することができたんじゃないか?」

「その件ですか」


 アリスターを出発した当初は、本隊も殲滅するつもりでいた。

 しかし、たった1万の軍勢を倒した後で気が変わってしまった。


「一言で言えば面倒くさかったんですよ」

「面倒くさい?」

「だってそうでしょう。俺たちは、たった1万の軍勢の後片付けをするだけで3日も拘束されているんですよ。そのうえ、何万もの軍勢を倒して後片付けまでしなければならないとなれば何日拘束されると思っているんですか」


 少なくとも数カ月単位で時間が掛かるし、最初の数日は寝ないで行動する必要がある。

 そんなのは真っ平御免だ。


 クラーシェルの傍での戦闘後に散らかったゴミを目にして迷宮核に相談したところ、軍勢を恐慌状態に陥らせて逃げ帰らせる方法を教えてもらった。


「つまり、やろうと思えば数万を相手にすることもできたのか」

「まあ、そうですね」


 なんとなく肯定しておく。

 しかし、この確認にどんな意味があるのか分からない。


「お前たちの実力は分かった。俺から渡したい物がある」


 机の上に置かれた4枚のカード。


「なんですか、これは?」

「それはお前たちの新しい冒険者カードだ」

「は?」


 俺たちは身分証としても使える冒険者カードを失くしたりしていない。

 再発行をしてもらう必要性がない。


「裏返してみろ」


 ギルドマスターに言われるまま1枚のカードを手に取って裏返してみると書かれているランクが『A』となっていた。


「おめでとう。これからお前たち4人はAランク冒険者だ」


 ――4人?


 それはマズい。

 そう感じたのはアイラ、メリッサ、イリスも同じで眉を顰めていた。

 ただ一人シルビアだけはランクが上がることを純粋に喜んでいた。


 普通の冒険者ならランクが上がることを快く思うのだろうが、俺たちにとってはあまり喜ばしいものではない。迷宮があるおかげで収入には困らない。冒険者として働いているのは収入があることを不審に思われないようにする為だ。


「いえ、必要あり――」

「残念だが、ランクアップを断る権利は冒険者にない。既に他のギルドマスターから了承を得ている。本当にランクを上げたくなかったと思うならあそこまで目立つような真似をするべきではなかった」


 断ろうとしたところ、ギルドマスターが声を被せて来た。


 冒険者ランクをAランクに昇格させる為には複数のギルドマスターから認められる必要がある。おそらくアリスターのギルドマスターなら問題なく了承してくれるだろうが、他の街のギルドマスターとは面識がないのでアリスター以外のギルドマスターにはクラーシェルのギルドマスターから頼み込むなりして了承を得たのだろう。


 そこまでしてランクアップを勧めてくれたのに断るなんてギルドマスターのメンツを潰すようなものだ。

 今後のことを思えば断る選択肢はない。


「よく他の街のギルドマスターが了承してくれましたね」

「アリスターからは簡単に了承をもらうことができた。もう一人、ハーフェルのギルドマスターに要請してくれたところ頷いてくれたよ」

「ハーフェル……」


 ハーフェルはアリスターからそれほど離れていないところにある都市なので行商などで人の行き来が多いため何度か護衛依頼で商人に付いて行ったことがある。


 その時は、ギルドマスターに面会したことはなかったのだが、何度か訪れる内にギルドの受付嬢には顔を覚えられてしまったみたいなので、そこからギルドマスターにも名前が憶えられてしまったのかもしれない。


 ここで断れば3人のギルドマスターのメンツを潰すことになる。


「分かりました。昇格を受けます」

「そうか」


 ギルドマスターが嬉しそうに笑う。

 Aランクになればギルドが提携している店から割引などの色々な恩恵を受けることができるようになるが、今回の戦争のように緊急性のある依頼の場合には断ることができない。


 この人は俺の力に期待して義務を押し付けるつもりみたいだ。


 あいにくと戦争にはもう参加するつもりはない。

 後片付けで疲れてしまった。


「せっかく昇格してくれたのに申し訳ありませんが、そろそろアリスターに帰ろうと思います」


 後片付けも落ち着いてきた。

 これ以上、俺たちが滞在する必要はないはずだ。


「そうか。報酬の方はどうする?」


 自分から率先してランクアップさせたにも関わらずギルドマスターは特に俺たちを引き留めるつもりがないみたいだ。


「帝国軍が持ち込んだ食糧なんかは炊き出しで出した分以外は俺たちが貰います。保存に最適なスキルを持っているので持ち帰るのに問題はありません」


 数万人分の食料なので半分しかもらえなかったとしてもかなりの数になる。


 問題は、道具箱(アイテムボックス)があるおかげで保存には問題がなかったとしても自分たちだけで食べ切ることができないのでどうやって処理するのかということだ。さすがに食料を魔力変換させても効率が悪い。


「武器や防具といった装備品の類も半分を置いて行きます。そのまま武器として使うなり、溶かして金属として使うなり自由に使ってください。ただし、魔法道具の類については優先的に俺が貰います」


 装備品については魔力変換で迷宮に与えるつもりだ。


「問題は――」

「1000人近い奴隷だな」


 さすがに奴隷を半分にすることはできない。

 いや、半数だけを連れ帰ることならできるが、彼らには復興作業があるのでクラーシェルに残ってもらわなければならない。それに残念ながら奴隷を半分の500人も連れ帰ったところで使い道がない。


「そういうことなら1人あたり銀貨10枚で私が引き取ろう」


 奴隷の値段としてはずいぶんと買い叩かれた値段だが、1000人も提供してしまったせいで値崩れしてしまったと考えよう。それに1000人の売却で金貨100枚になる。

 使い道のない物の売却で手に入るなら大金だ。


「売るのはいいんですけど、何に使うつもりですか?」

「ギルドマスターともなれば色々と人の使い道がある。1000人もの労働力が手に入るんだ。金貨100枚なんて安いものだ」


 具体的なことは教えてもらえなかった。

 特に反対する理由もないので金貨100枚で1000人以上の奴隷を売る。端数はサービスだ。


「次に襲われた時には真っ先に救援を願い出るから、よろしく頼むよ」


 俺をAランクに推薦したのはそれが狙いか。


「帰ろうか」


 パーティメンバーを連れて家族の待つアリスターへと帰ろう。



元々イリスはAランクだったのでパーティメンバー5人全員がAランクという異例なパーティになりました。

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