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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第10章 蹂躙戦争
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第25話 回復スキル

「……」


 イリスティアのステータスを確認していると目を醒ました彼女と目が合ってしまった。

 次第に視線を自分へと向けて何も身に着けていないことを確認すると顔を真っ赤にしてシーツを奪い取ると体を隠してしまった。


「おはよう」

「……おはようございます」


 挨拶ができる程度には落ち着いているらしい。


「そろそろ朝食の時間みたいだし起きられるか?」

「あまり体調がいい方ではありませんが、起きようと思います」


 イリスティアと一緒に部屋を出てリビングへと向かう。

 リビングには既にシルビアたち3人がテーブルに着いてルームサービスで運ばれて来た朝食の準備をしていた。


「おはようございます」

「おはよう。それよりも朝食まで豪華だな」


 昨日の夕食は戦争の影響でゴタゴタしていたせいで食べられなかったが、朝食には柔らかいパンにスープ、彩豊かなサラダと卵とベーコンを使った料理が用意されていた。


「クラーシェルは多くの貴族や商人が出入りする街なので食材の種類が豊富なんです」


 故郷を自慢するようにイリスティアが教えてくれる。

 その顔には晴れ晴れとしていた。


 しかし、メリッサが発した言葉のせいで緊張から固まってしまった。


「無事にステータスを上げることができたようですね」


 すぐさまイリスティアのステータスを確認したみたいだ。

 その方法を思い出したせいでイスに座るなりテーブルに突っ伏してしまった。


「で、どうだった?」

「い、言えません!」


 ニヤニヤとした笑みを浮かべたアイラが尋ねる。

 なんだかこういう反応を見ると新鮮だな。3人とも慣れたものだからこんな初々しい反応を見せてくれなくなった。いや、最初から見たことがなかったな。


「わたしたちはこんな反応してた?」

「してないと思うけど」

「私とアイラさんに至っては順番待ちをしているような状態でしたからしていないでしょうね」


 シルビアはメイドとしてあろうとしていていつも通りにしようとしていたし、アイラも気にした様子がなかった。メリッサについては、俺の方が逆に憔悴していたぐらいだったので覚えていない。


「どうして、みなさん平然としているのですか!?」

「「「……?」」」


 ああ、3人娘がイリスティアの言葉の意味が分からずに首を傾げている。


 普通、自分の男が他の女と一夜を共にすれば嫉妬の1つでもしそうなものだが、彼女たちの場合は既に3人の中で折り合いが着けられているので『3人』しかいなかった状況から『4人』に増えた程度の認識でしかないみたいだ。

 もっとも、それもイリスティアのことを受け入れたからであって次々と増やすようなことは望んでいないので『5人目』を増やすつもりはない。

 いや、『4人目』も増やすつもりはなかったんだけどね。


「3人の反応については気にするな。というよりお前も気にするな」

「はぁ……」


 これから逆の立場になることもあるのだから、せめて自分も気にしないようにしてもらわなければ困る。


「というか遺跡で会った時とは印象が随分違うな」

「そうですね。遺跡で出会ったのは『イリスティア』です。みなさんの仲間になったのは、ただの『イリス』です」


 鑑定を行った結果、名前が『イリス』と表示されていた。

 イリスティアが偽名だったということだろうか。


「元々、私は助けてもらった『ティアナ』という女性冒険者に憧れて冒険者になったのですが、冒険者登録をした時に彼女のようになろうと自分の名に彼女の名前を加えて『イリスティア』として登録していたのです」


 登録時にランクを上げることのできるスキップ制度の利用などを除けば身分証明書を提示する必要もなく、自分で登録した名前の冒険者カードを手に入れることができる。冒険者カードは、身分証の代わりとして使用することもできるので今まで困るようなことがなかったのだろう。


 ただし、鑑定能力を持った相手は別だ。

 俺たちのように鑑定能力を持っている場合、名前まで含めて全ての情報が知られてしまう可能性がある。そうした能力に対して情報を隠蔽することのできる指輪型の魔法道具を使用して誤魔化していたみたいだ。それほど貴重な品ではないのでステータス情報の1つを偽ることしかできないみたいだったが、名前さえ偽ることができればよかったので問題なかった。

 もっとも迷宮魔法:鑑定の場合、主と同じ眷属間ではどんな情報も偽ることができないので俺たちには隠すことができなかったみたいだ。


「フィリップさんたちから言われました。これからはティアナさんを追いかけるような真似は止めてイリスとして生きろ、と。それを亡くなった2人も望んでいるだろう、と言われてしまったうえ、みなさんには偽名だとバレてしまっているので、これから『イリス』として生きていこうと思います」


 その方がこっちも嬉しい。

 それに今こうして『イリス』として丁寧な態度を取っていることから、本来の性格はこっちの方なのだろう。

 俺として、どっちでもいいので彼女の好きなようにさせたいと思う。


「分かりました。名前については、イリスで呼びたいと思います。それで起きてから自分のステータスについて確認しましたか?」

「それが、最初に増えたステータスも確認していないんです」


 スキルの内、眷属召喚、天癒、施しの剣は眷属になってステータスをさらに上昇させてから手に入れたスキルだ。


 効果を確認してみると眷属召喚は、俺の召喚の劣化版みたいなもので自分と同じ眷属を自分の傍に呼び出すことができる。迷宮にいる魔物は、俺の支配下にある眷属でイリスが呼び出す為には個別に契約を行う必要があるみたいだ。


 天癒は、現在保有している魔力の全てを消費する代わりに消費した魔力量に応じた治療を対象に施すスキル。


 施しの剣は、部位欠損や日常生活に支障を来すような傷を負った重傷者を治療することができるスキル。


 2つの回復スキルは効果が破格だが、同時に使い処に困るスキルだ。

 天癒は1度使用すると全ての魔力を消費してしまうため小さな怪我を治すには向かない。施しの剣も致命的な傷を負わなければ発動しないので扱うタイミングが訪れないかもしれない。


 それでも、いざという時には使えるので重宝したい。


「逆境は私が一定以上のダメージを負うとステータスが向上するというスキルで、剣舞は剣技を向上させてくれるスキルです。この2つのスキルがあったからこそ戦場でも生き残ることができたのですが、新たに手に入れたスキルは……」


 自分のステータスに記載された12個ものスキルを見て言葉を失くしていた。

 通常、スキルは複数持っているだけで優秀とされている。元々は2つのスキルを持っていたのでイリスは優秀な方だったのだろう。しかし、12個ものスキルを持っている冒険者は少ない。


 俺としては数よりも迷宮関連のスキルが気になる。

 シルビアたち3人が手に入れることのなかった『迷宮操作』を手に入れている。眷属召喚がスキルとして別にあることから何らかの制約があるかもしれないが、貴重なスキルだ。


「わたしとしては職業の『迷宮代行者(ダンジョンエージェント)』が気になります」


 これもシルビアたちが手に入れることのできなかったものだ。


「まあ、細かい部分に関しては追々確認していくとして先に命令しておかなければならないことがある。絶対に『天癒』と『施しの剣』を所有していることを身内以外には知られるな」


 さすがに回復魔法では不可能な部位欠損の回復が可能となれば厄介事に巻き込まれる可能性がある。

 今回の戦争介入のように戦闘力だけで解決が可能なら引き受けてもいいのだが、面倒事なら引き受けたくはない。間違いなく面倒事に発展する。


「分かりました。でも、使いたい人がいます」


 言われなくても分かっている。


「フィリップさんたちだろ。生きているなら治療が可能だから行って来い。お前の身内なら許可する」


 口止めは必要だろうが、面倒事に巻き込まれるのは彼らの娘と言ってもいいイリスだ。言い触らすような真似はしないだろう。


「ありがとうございます!」


 今にも出掛けそうなイリスを止める。


「まずは、朝食を済ませよう」


 昨日から何も食べていなかったのでお腹が空いている。

 空腹を満たす時間ぐらいは待ってもらうことにしよう。


10章最大の報酬

・4人目のヒロインと回復要員

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