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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第10章 蹂躙戦争
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第24話 4人目

戦争で色々と得ましたが、10章最大のリザルトです。

迷宮適応がダブっていたのでステータスを修正しました。

 隣村を解放してクラーシェルへと戻って来る。


 門の前では戦争の後片付けとでも言うべき作業である戦死者の処理が行われていた。


 クラーシェル領軍兵士や冒険者は丁重に扱われ、街の中へと運び込まれていく。おそらく身内がいないかの確認が行われることになるのだろう。


 対照的に帝国軍兵士の扱いはかなり雑だ。ちょうど第一陣の準備が終わったところなようで、俺が開けた大きめの穴に兵士の遺体を詰め込んで油を撒いて燃やすところだった。遺体をそのままにしておくと腐敗して疫病の原因になる可能性だってあるのだから焼却処分は正しい。

 ただし、知人に知られることなく異国の地で焼却されることを思うと同情せずにはいられない。


「ほら、行くぞ」


 それはシルビアだけでなくアイラも同じだったようで隣を歩く2人に声を掛ける。

 やっぱり魔物を殺すのと人を殺すのとでは訳が違う。


 街の門番に挨拶をしてからクラーシェルへと入る。前線にいた冒険者たちには俺の顔が知られただろうが、さすがに門の内側にいた人たちにまで俺の顔が知られるようなことにはなっていなかった。


 迷宮主(ダンジョンマスター)権限で眷属(サーヴァント)の位置を探知する。

 別行動を取っていたメリッサだが、こうして探すことによってどこにいるのか分かる。


 反応のあった建物の前に来て思わず戸惑ってしまう。

 メリッサがいるのはクラーシェルの中でも貴族や大商人が宿泊する最高峰の宿だ。クラーシェルは、帝国に一番近い都市ということもあってクラーシェルに滞在してから帝国へと向かう貴族が多いため、こうした高級宿がいくつか存在している。

 こんな宿はアリスターにはない。


 だが、メリッサがいる以上避けるわけにもいかない。

 予想以上に高級な宿に少し気後れしながら入る。


「すみません。マルスという者ですが、こちらにメリッサという女性がいると思うのですが?」

「はい、伺っております。お客様がお見えになったらお部屋へ通すように言われています」


 天井から吊るされたシャンデリアが眩しいロビーにいた女性に案内されて10階建ての宿の最上階にある一室へと案内される。

 窓からは戦争の初日を乗り切って騒いでいる街の様子を一望でき、広いリビングの他に豪華な個室が4部屋もある。リビングにあるソファや絨毯もふかふかで、一目で最高級宿だと分かる部屋だ。


「おかえりなさい」


 リビングにあるテーブルで紅茶を飲みながら待っていたのはメリッサ。

 その隣にはイリスティアがいる。


「ただいま。それより、どうして彼女がここにいるんだ。お前には俺たちが宿泊する為の部屋を手配するように頼んでおいたはずだけど」


 クラーシェルへ戻る頃には陽が暮れ始めると分かっていたのでメリッサに念話で宿を取るように伝えておいた。

 それが、こんな高級旅館を選ぶとは思いもしなかった。


 いや、金銭的には問題ないんだけど、基本的に平民なので落ち着かない。


「実は、宿泊先についてクラーシェルのギルドマスターに相談したところこの宿を紹介されたのです。私は断ったのですが、宿泊代はギルドマスターが持つのでお礼としてどうしても泊まってほしいと言われたのです」


 それなら仕方ないか。

 冒険者なのにギルドマスターのお願いを無碍にするとかありえない。


「で、彼女が一緒にいるのはどうしてだ?」


 メリッサの正面に座りながら尋ねる。

 俺の質問に答えてくれたのはイリスティアだ。


「あの、これからみなさんの仲間になるイリスティア……イリスです。よろしくお願いします」


 既に仲間になることは確定事項らしい。

 メリッサを睨み付ける。


「彼女は水と光に適性を持っていて回復魔法も使えます。彼女が仲間になってくれれば回復要員になってくれると思ったので全力で勧誘しました」

「分かっているのか? 俺たちの仲間になるっていうことは――」

「マルスさんの眷属になる、ということですよね?」


 そこまで教えているのか。


「メリット、それからデメリットについて説明しました」


 眷属になることのメリットはステータスの上昇、レベルアップ時の上昇率の向上、新たなスキルと魔法適性の取得。


 ステータスの上昇は当然のこととして、魔法適性は基本的に先天的なもので新たに取得するには特殊な方法が必要になる。スキルの取得も本来なら何年もの訓練の果てに取得することがあるのでメリットは大きい。

 逆にデメリットは主の命令には絶対服従。主が死亡した時には眷属も一緒に死亡してしまうというものだ。眷属は主と永遠に運命を共にする者なので回避する方法はないと教えられた。


「デメリットについて理解しました。そのうえで私も眷属にして下さい」

「パーティに入りたい理由を教えてもらってもいいか?」

「数日以内に帝国軍が攻めてきます。私は強くなったつもりでしたが、それでも単独で軍隊を相手にできるほどの力はありませんでした。だから故郷を守れるだけの力が『今』欲しいんです。たとえ、その為に『未来』を犠牲にすることになるのだとしても」


 非常に立派な考えではあるものの、さっきのメリッサとのやり取りを聞いているので彼女が抱えている事情はなんとなく理解している。

 とはいえ、本心を無理矢理聞き出すのは無粋だろう。


「いいのか? けっこうな報酬が手に入って次に来る帝国軍も俺たちが追い返すつもりでいたから気にする必要はないんだぞ」

「それでも私は自分の手で故郷を守りたいと思ったんです。デメリットについては覚悟の上です」


 本人がいいというのなら俺に拒む理由はない。

 メリッサが言ったように回復要員が欲しいとも思っていた。


 その彼女へ視線を向けるとにっこりと微笑んでいた。


 次いで仲間2人にも視線を向けて確認をする。


「いいんじゃないの?」


 さっきあれだけ怒っていたのにアイラに反対する様子はない。


「私が怒っていたのはあんたが不用意に女を落とすような真似をするのが気に入らなかっただけ。あたしも理屈として彼女みたいなベテランの冒険者が加入した方がいいっていうのは理解しているわ。ただ理屈と感情は別なの」


 パーティへの加入そのものは反対していない、と。


「わたしはご主人様が決めたことなら反対しません」


 シルビアも肯定してくれた。

 ただし、アイラと同じで女性メンバーが増えることが面白くないのか少し不満そうにしていた。


 とにかく『眷属化』には誰も反対していない。


「分かった。1度眷属になると元には戻れないけど、本当にいいのか?」

「はい、構いません」


 イリスティアの賛同が得られたところで椅子から立ち上がる。

 しかし、彼女は突然立ち上がった俺の意図が分からずに座ったままでいた。


 これは……教えていないな。


「そういえば、眷属になった後のことばかり教えていて眷属になる方法については教えていませんでした」

「聞いていません。どうすればいいんですか?」


 俺からは言いたくないな。

 そう思っていると隣に座ったメリッサが身を乗り出して耳打ちでイリスティアに教えている。


「ふぁっ!?」


 イリスティアの顔がみるみる内に赤くなって行く。

 赤い顔のまま俺たち全員の顔を見て行く。


「そ、そんなキスをする必要があるだなんて……しかも3人とも既に……」


 こういう話題には弱いらしい。

 正確にはキスではなく『粘膜接触』が必要になる。


「どうする? 嫌なら止めてもいいけど」

「いえ、やります!」


 決意を固めたイリスティアが立ち上がると俺に近付いて軽く啄むようなキスを一生懸命に目を瞑りながらしてくる。


「あれ……?」


 残念ながら、それでは足りない。

 何も起こらないことを不思議に思いながら離れていくイリスティアの首に手を回して逃げられないようにすると唇を合わせて舌を入れていく。


「!?」


 自分からキスをした時は対照的にイリスティアの目が大きく見開かれていた。


「うっ……」


 眷属化が成功したので離れる。

 イリスティアが突然の事態に付いていけずに床で蹲ってしまった。


「これは……」


 早速イリスティアのステータスを確認したメリッサが驚いている。


 俺も迷宮魔法:鑑定を使用してステータスを確認する。

 迷宮魔法の鑑定は迷宮に関連する物なら正確に対象の情報を取得することができるようになる。眷属も適用範囲内だ。


「お前の予想だと回復要員になるんじゃなかったのか?」

「そう、だと思ったのですが……」


 これではスキル特化型だ。


「みなさん私のステータスが見えるんですか?」

「ああ、最初だと慣れないから『迷宮魔法:鑑定』と口に出して相手を見れば、相手のステータスが見えるようになる」

「わっ、本当です」


 視界に表示されたステータスを見てイリスティアが驚いている。

 そして、さらに首を傾げることになる。


「なんだか私のステータスはみなさんの半分ちょっとしかないみたいなんですけど」

 元々の数値が高かったおかげで上昇がそれほど感じられず、さらに3人よりもステータスが低いことにショックを受けている。


 しかし、これは仕方ない。

 イリスティアは俺のステータスの1割しか反映されていないが、シルビアたちは2割が反映されている。どうしても届くはずがない。


 その方法について教えるべきか悩んでいるとニヤッと笑ったアイラがイリスティアに近付いて教えてしまった。


「ええっ!?」


 そして、さっき以上に狼狽えるイリスティア。


「不潔です! キスだけならまだしも……そこから先のこともしていたなんて!?」

「必要なことだったんだ」

「それでも……」

「で、どうする?」


 教えてもらった以上、後はイリスティアに覚悟があるのかどうかだ。



 ☆ ☆ ☆



 翌朝、隣で眠るイリスティアのステータスを確認する。


==========

 名前:イリス

 年齢:16歳

 職業:迷宮眷属(ダンジョンサーヴァント) 迷宮代行者(ダンジョンエージェント) 冒険者

 性別:女


 レベル:89

 体力:4575(1157)

 筋力:4840(1246)

 俊敏:4041(979)

 魔力:5011(1246)


 スキル:逆境 剣舞 迷宮操作 迷宮適応 迷宮守護 迷宮接続 迷宮破壊 迷宮結界 眷属召喚 天癒 施しの剣


 適性魔法:光 水 迷宮魔法 迷宮同調


==========


 2割上昇のおかげで欲しかった回復系のスキルも手に入れたみたいだ。

 ちょっと効果が強力過ぎる気がするけど、必要になるのは間違いない。


戦争参加のリザルト

・イリス(ステータス2割上昇条件達成済み)


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