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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第10章 蹂躙戦争
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第20話 戦後報告

メリッサ視点です

「ほ、本当に帝国軍を全て追い払ったのか?」

「いえ、追い払ったわけではありません。殲滅させました」

「殲滅……」


 私の言葉を聞いてクラーシェルの領主である青年――ジェラルド・クラーシェル伯爵が目を丸くしていました。


 クラーシェル伯爵は私たちよりも少し年上の20歳で、前領主の息子だったため領主の地位を継ぐことが生まれた時から決められていたため幼い頃から引退した騎士から手解きを受けていたため鍛えられた体をしています。


 そんな彼が驚きから体を小さくしている。

 そうなってしまうのも仕方ありません。

 クラーシェルの運命は今日にも街が陥落すると思われるほどに絶望的なものでした。

 それがたった4人に救われたなど簡単に信じられるはずがありません。


「事の真偽が気になるぐらいなら確認に行かれた方がいいかと思われます。西以外の門の先には大量の帝国兵の死体がそのまま残されていますから」


 迷宮の魔力を蓄えさせるなら転移で迷宮送りにするのが最も効率的なのですが、今回はそれをしませんでした。それというのも帝国兵から救ったにも関わらず、帝国兵を倒したという証拠がなければ納得してもらえなかったからです。


 北には焼かれた500人。

 南には斬られた500人。

 東には多種多様な殺され方をした4200人。

 街の中にある地下牢には一時的に奴隷を800人収容してあります。


 確認に不足するようなことはないはずです。


「いや、成果を疑っているわけではない」


 既にクラーシェル伯爵の方でも確認の為の兵士を送り込んで報告を受けた後だったようで、大まかに事情は理解していたみたいです。


 それでも信じられなかった。


「先ほどの紹介ではBランクの冒険者だと言っていた。貴方たちの偉業はとてもBランクの冒険者にできるようなことではない」

「実力に対してランクが低いことは理解しています。ですが、冒険者になって1年も経っていないような者の集まったパーティなのでそのようになっているのです」


 それにランクを上げることのメリットが感じられません。

 基本的に冒険者はランクを上げることを目標としており、一流として扱われるAランク冒険者になれば有力な貴族に雇ってもらえる可能性が増えるだけでなく、冒険者ギルドが提携している店舗で割引などの様々な特典を受けられるようになっています。

 そのためAランクを目標にしている冒険者がほとんどです。


 ですが、私たちの場合は迷宮主(ダンジョンマスター)迷宮眷属(ダンジョンサーヴァント)になった恩恵で得られた高ステータスを活かした仕事をしようと冒険者になっているだけです。


 お金については迷宮から得られる金銭があるので、本当なら不労所得で生活が可能ですが、それでは退屈です。どうせなら自分たちの力でお金を稼いで日々の生きる糧としたいというのが全員の考えです。

 Aランクによって受けられる様々な特典も総資産に比べれば微々たるもので高いランクによって受ける様々な柵を考えてメリットよりもデメリットを優先してランクを上げることは避けてきました。


「では、報酬の確認をしましょう」

「あ、ああ……」


 騎士に案内してもらって領主との会談をわざわざ設けたのはアリスター伯爵との間でついている報酬についての話をする為です。


 クラーシェル伯爵が顔色を青くしています。

 私たちの手によってクラーシェルは実質救われたようなものなのですから提示した報酬については基本的に受けるつもりがあるみたいです。


 一体、どれほど無茶な要求をするつもりなのか?


 それを考えて不安になっているみたいです。


「報酬については救援依頼を出したアリスター伯爵との間で話が付いています。こちらの要求は『帝国兵の所持品すべて』です」

「そ、それは……!」


 帝国から一方的に奇襲を受け、被害を出しながら退けたにも関わらず得られる物が何もない。


「安心して下さい。私たちも領軍やクラーシェルに拠点を置く冒険者の働きまで奪うつもりはありません。純粋に私たちが倒した数を考慮して1割をそちらに譲渡して9割分を私たちが頂くことにします」

「それだけでは足りない!」


 クラーシェル伯爵が怒りながら立ち上がります。

 受けた被害を考えると外壁の修理や人的被害を受けた人への補償などで多額の資金が必要となるのは間違いなく、帝国軍から得られる財産を頼りにしていたのは間違いありません。


「それに、まだ報告を聞いただけだが戦場はとても酷い状態らしいじゃないか!」


 彼が言っているのは北の溶岩化してしまった大地と東の穴だらけになってしまった大地のことでしょう。


「私たちによる被害に関しては必ず元通りに復元させることを誓います」

「本当だろうな!」


 北については、土魔法を用いて整地することで元通りに復元させることは魔法使いが数人いればそれほど難しくありません。


 問題は、主が穴だらけにしてしまった東です。

 土魔法による整地は、周囲にある土を利用して行われるので落とし穴を作製した際に元々そこにあった土が消失してしまった分についてはどこかから持ってこなければなりません。それは資金的に厳しいです。


 ですが、主の迷宮操作なら迷宮にある土を一瞬で持ってくることができるので、消失したように見えて実際には迷宮へと転移させられただけの土を持ってくることができます。

 つまり、東側にある街道の復興には主が欠かせません。


「こちらとしては、帝国軍の持ち込んだ物資や装備品の9割を譲っていただくだけで結構です」

「だが……」


 それでも資金を必要としているクラーシェル伯爵は諦め切れていません。


「君がパーティのリーダーなのか?」

「いえ、違います」

「なら、まずはパーティリーダーと話がしたい。リーダーはどこだ?」


 クラーシェル伯爵が見下したような目で私を見てきます。

 この目には王都にいた頃に商人と話をしていた頃に少しばかり覚えがあります。


「リーダーは現在不在です」

「なに?」

「現在、帝国軍に占拠された隣村へ向けて移動中です」


 私たちが受けた依頼内容は帝国軍の先遣部隊の壊滅。

 きちんと隣村で待機している支援部隊まで壊滅させなくては依頼を遂行したことにはなりませんし、帝国軍が持ち込んだ物資は支援部隊の方が多く所持しているのでそちらの方が『本命』です。


「それにパーティ内で交渉のほとんどは私に任されていますので、リーダーが帰るのを待っても私と交渉……いえ、宣告されるだけです」

「くっ……!」


 クラーシェル伯爵が怒りを露わにしながらソファに座ります。


 少し落ち着いてもらう必要がありますね。

 ソファに座ったまま両手を胸の下で組んで持ち上げるようにしながら足を組み替えるとクラーシェル伯爵の視線が私のスカートへと引き寄せられます。


 若いので仕方ありませんが、簡単な人で助かりました。

 王都で男性と商談をしていた頃から「女だから」という下らない理由で私のことを見下してくる相手はたくさんいました。そういった相手には、女としての武器を最大限に利用させてもらい、相手の注意が逸れたところでこちらから大打撃を与えるようにしています。


 男性の視線を惹き付けてしまい、嫌な思い出もある体ですが、色々と役に立ってくれたのも事実です。


「私たちはクラーシェルのギルドマスターの救援依頼を受けたアリスターのギルドマスターから依頼を受けています。つまり、クラーシェルからの依頼です。アリスター伯爵も必要があれば支援金を出すと言っています。同じ伯爵同士ですから事情を理解しているアリスター伯爵なら遠慮することもないのでは?」


 伯爵同士。


 だけど、アリスター伯爵とクラーシェル伯爵の間では本人に大きな差がありました。


 一方は、辺境の領主として20年近く経験を積んできた領主。

 対してクラーシェル伯爵は、2年前に大病を患った父親から領主の地位を引き継いだばかり。王都にいた頃に商人相手に話をしていたおかげで当時の経緯なども聞いて知っています。


 交渉で経験豊富なアリスター伯爵に勝てるはずがなく、クラーシェル伯爵は下手に出るしかありません。


 さすがに元領主の娘として可哀想になってきたので少し支援することにします。


「街の復興に必要な最低限の資金ぐらいなら私たちの方からも出します。それに捕らえた奴隷たちには隣村の復興をさせるつもりでいます。その後はクラーシェルに格安でお譲りします」

「い、いいのか……?」


 奴隷を売るとなれば時間が掛かります。

 そこまで長時間拘束されるつもりのない私たちにはある程度の資金さえ手元にあれば十分です。


「では、色々とお忙しいようですし私は失礼させてもらいます」


 アリスター伯爵との間で話が付いているのですからクラーシェル伯爵から承諾をもらう必要はありません。ですが、自分の領地で起こった戦争で得られる物が何もないとなればクラーシェル伯爵は納得しません。

 私がしたのは、ただの状況説明です。


クラーシェルの戦果 500人

マルスたちの戦果 9500人


これから支援部隊4000人も倒すので9500人になっています。

実質5%ですが、ちょっとおまけして1割渡すことにしました。

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