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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第10章 蹂躙戦争
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第17話 降伏受入

「いいでしょう。降伏を受け入れましょう」


 俺を相手にすることの怖さは十分に実感してもらえたはずだ。

 左右と背後を崖に囲まれ、正面にいる『俺』という強大な敵を相手にしなければ生き残ることはできない。

 四方を絶望に囲まれた彼らが取った行動が『その場に留まる』だった。


「ああ、捕虜になるんだ。命の保証はしてくれ」

「もちろんです」


 命の保証はしてあげよう。


「迷宮操作:檻」


 俺の近くに『壁』と同じ材質で造られた10メートルの『檻』が出現する。

 本当なら『檻』は使いたくなかった。

 これが最初に造られた目的があまりに非人道的だったため、精神的に忌避して試したことすらなかった。


「降伏されるならこの檻の中に入ってください。檻に入っている方は攻撃しないと誓います」

「そうか」


 どこか安心したような表情で檻へ足を進める。


 だが、俺の言葉を聞いてその足が止まる。


「檻に入った方はしっかりと『犯罪奴隷』として丁重に扱わせてもらいますから商品を傷つけるような真似はしません」

「……なに?」

「誰も身分まで保証するとは言っていませんよ」

「ふ、ふざけるなっ! 戦争で捕まえた敵国の人間は捕虜にするのが常識だろうが!」

「それは、あなた方が正規の手順に従って戦争を仕掛けて来た場合です。あなた方は王国に対して宣戦布告をされましたか? 今回の戦いは宣戦布告もなしに行われた奇襲。俺は、絶対にお前たちを敵国騎士だとは認めない」


 騎士は言葉も出ないようで口をパクパクとさせていた。

 ここに来て宣戦布告もせずに奇襲を仕掛けたツケが回って来た。


 そもそも俺は最初に「戦争ではない」と宣言しているし、彼らのことを「盗賊」だと告げている。


 なぜ、盗賊を捕虜にしなければならないのか?

 盗賊を捕まえたのなら『犯罪奴隷』として最低限の食事だけ与えて扱き使った方が身代金を貰うよりも効率的だ。


 騎士が自分の処遇を思って後退る。


「奴隷が嫌なら檻に入らなくてもいいですよ。その場合、俺に殺されるか、落とし穴に落ちてもらうことになります。どれでも好きなものを選んでください」

「う……」


 結局、自分の命には代えられなかったのか檻に入ることを選択した。

 檻に入った瞬間、騎士の首に奴隷の証である首輪が虚空より出現して嵌められる。


「その檻は特別製で、自分から囚われた人間の首に奴隷の首輪が自動で付くようになっている」


 迷宮操作:檻は、元々奴隷を得る為に大昔にいた迷宮主(ダンジョンマスター)が独自に開発したスキルだ。


 迷宮が最も効率的に魔力を得る方法は何か?


 それは、迷宮に魔力の強い者を常に置いておくことだ。


 だが、限界以上の時間を滞在していれば魔力が枯渇して動けなくなる。怪我などによって体を動かせないような状況にない限り冒険者は迷宮から去る。

 開発した当時、どうしても大量の魔力が必要だったため悩んだ末に仕方なく編み出した方法が自分から囚われた相手を奴隷にして飼い殺すという方法だった。


 『自分から囚われる』という条件を付与することによって奴隷化が可能になったとのことで俺が使用してもその条件は必要だった。


 そのため迷宮で使用するなら危険な場所で『死』と『生』を迫ったうえで奴隷になることを選ばせていたらしい。もちろん大量の魔力が必要だった用事が済んだ後は奴隷から解放していた。

 最後には解放したとはいえ、強制的に奴隷にする迷宮操作:檻が嫌いだった。


「さ、他に奴隷になりたい奴はいないかな?」


 俺の心情を悟らせないよう明るく言う。


 そんな風に言われて自分から檻に入って行く奴なんていない……なんて思っていたら檻へ近付く人が何十人もいた。


 このままではパンクしてしまう。

 ナイフを投げて檻をさらに9個追加する。


 10個の檻に次々と人が入って行く。


 おや、奥の方で檻に入るよう近くにいた豪華な装備をした20歳ぐらいの青年を説得している兵士がいる。魔法を使って声を拾ってみよう。


「若様、ここは捕まりましょう」

「!? お前は見ていなかったのか! あの檻に入ると奴隷になるんだぞ!?」

「ですが、命は助かります」

「ランクル家の次期当主である僕に奴隷になれだと!? 奴隷になるぐらいなら死んだ方がマシだ!」

「死んでしまっては全てがそこで終わりです。ですが、奴隷として生きていれば旦那様が見つけて解放してくれるかもしれません。ランクル家は、若様以外では妹君方と幼い弟がいるだけです。旦那様もランクル家のことを考えて若様を必ず解放してくださるはずです」

「う、うむ……」


 どうやら豪華な装備をした青年は貴族の跡取りみたいで、説得しているのは兵士ではなく護衛みたいだ。


 どうして、貴族が戦場にいる?


 よくよく考えてみれば、この戦争は俺が介入しなければ勝って当たり前の奇襲作戦だった。


 勝ち戦に参加した。

 参加するだけで功績となるのは間違いないし、貴族として武勇に箔が付くのは間違いない。なんてふざけた参加理由だろう。


 奴隷にした連中には、彼らの荒らした村の復興や人里離れた場所での開拓に従事してもらうつもりだったけど、貴族らしい彼らには人目に全く付かない鉱山で働いてもらうことにしよう。帝国貴族に見つかったら面倒なことになりそうだ。


「だが、1度でも奴隷になったことがあるとなれば……」


 まだ迷っているみたいだ。

 どうするのかさっさと決めてほしい。


 ――ドゴォォォン!


 その時、北側で爆発が起こった。

 外壁よりも高く昇った爆発の炎が遠く離れたここから見える。


「は?」


 大規模な魔力が感じられるので魔法による爆発だろう。

 そして、こんな規模の魔法が使える人物には1人しか心当たりがなかった。


『メリッサ、お前何をした!?』


 北側はメリッサに任せていた。

 間違いなくメリッサによる仕業だ。


『……答えたくありません』


 しかし、返答は拒絶。

 メリッサが無意味に大規模魔法を使うとは思えない。何かあったな。


『それが聞いてよ。最初は装備の回収を目的としていたから接近戦をしながら魔法で敵兵を薙ぎ払っていたんだけど、100人以上の兵士がメリッサ1人に倒されても敵はメリッサが女だからっていう理由で降伏する様子が全くなくて――』


 迷宮核があっさり答えを教えてくれる。


『最後にはキレて何もかも吹き飛ばす勢いでイグニスフレイムを使って消し飛ばしちゃった』

『おま……』


 俺が使える迷宮魔法の火属性の中では最強の魔法だ。


『……大丈夫です。最低限の手加減はしました』

『辺り一面を更地にしておいて手加減したとかよく言えるね』


 よほどツボに入ったのか迷宮核の笑いが止まらない。


『まあ、お前が無事ならいいよ』

『……はい』

『ただ街道は早急に必要だから俺と一緒に復旧させようか』

『もちろんです』


 どうやらメリッサの方は終わったみたいだ。


『殲滅攻撃があって羨ましいです。こっちは残り50人ほど残っています』


 シルビアからも連絡が入る。


『できることならそっちに回りたかったんだけど、そっちもそろそろ終わりでしょ』

『いや、まだやることはあるんだから合流はゆっくりでいいぞアイラ』

『了解』


 2人とも無事みたいだ。


「な、なんだ今の爆発は……」


 帝国軍がメリッサの起こした爆発を見て呆然としている。


「降伏するのか? それとも戦うのかそろそろはっきりしてもらおうか?」


 イグニスフレイムはよほどインパクトがあったのか帝国兵だけでなく冒険者たちも檻へ次々と入って行く。


 残されたのは100人ばかりの帝国兵。

 彼らは死ぬことも奴隷になることも選べなかった。


「我々は誇りある帝国兵だ。残された道はまだある」


 唯一残された道――正面。


 俺を突破してクラーシェルへと辿り着く。


「いいだろう。突破できるか試してみるといい」

「総員、突撃!」


 100人が一斉に突っ込んでくる。

 同時に突撃すれば誰か1人ぐらいは抜けることができるかもしれない、という打算によるものだろう。


 忘れているみたいだけど、俺を抜けた先にはクラーシェル軍数百人がいるんだけど、100人で勝てると本気で思っているのか?

 いや、あれは単純に俺を恐れるあまり他の事に対して恐怖心を抱けなくなっているだけだな。


戦争参加リザルト

・奴隷約800人

・戦場に散らばった装備品

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