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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第10章 蹂躙戦争
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第15話 VS帝国軍―中編―

「弓兵隊、射れ」


 逃げ出した前線の兵士たちの先で200人の兵士が2列になって整列して弓矢をこちらへと山なりに射ってきた。

 空から降り注ぐ矢の雨。


「なるほど考えたな」


 俺の敏捷値が相手では攻撃を当てることすら難しいと判断した。

 そこで1つだけでもいいから矢を当てて傷を負わす作戦に出たみたいだ。


 とはいえ、前提が間違っている。

 1本だけでも当たって怪我をしたなら俺の動きを鈍らせることはできたかもしれない。けど、筋力値も人外レベルに到達している俺の防御力なら矢が当たっても無傷でいることが可能だ。


 それでも付き合ってやる必要はない。


 いくら速く動くことができても体を潜り込ませるほどの空間がない攻撃なら回避することができない。


跳躍(ジャンプ)


 だから弓兵隊の背後を視界に入れて空間を跳躍する。


 振り向くと矢を射ったばかりで無防備な弓兵隊の背中が見える。


「迷宮操作:罠創造(トラップクリエイト)


 弓兵隊の右端に狙いを定めて迷宮にある罠を発動させる。


 本来は、迷宮内の好きな場所に罠を創造するのが罠創造の能力だが、迷宮以外で使用した場合に罠が発動した状態で効果を発揮させることができる。


 今回使用するのは『切断刃(キリングエッジ)』。

 迷宮内で設置した時には、一本道の通路で罠の仕組まれた色違いの床を踏むと5メートル先の壁に腰ぐらいの高さに鋸のような刃が出現し、罠を作動させた者を襲うというものだ。


 刃の迫って来る速度は迷宮主(ダンジョンマスター)である俺は自由に変更することができ、迷宮の上層では非常にゆっくり迫って来るため迷宮に挑む実力のある冒険者なら屈むなり跳び越えるなりして回避することが可能だ。下層へ行く度に速くなるが、冒険者の実力も付けられているので緊張感を持たせるにはちょうどいい。


 そのように簡単にしているのも罠を設置している目的が迷宮へやって来た冒険者を撃退する為ではなく、罠を警戒させてゆっくり進ませる為にあるからだ。


 だが、この場ではそんなことは関係ない。

 速度の設定を最強にして罠を発動させる。


 右端にいた弓兵の腰ぐらいの高さに長さ10メートルの鋸が出現する。


「か、回避!」


 いつの間にか俺が隊の後ろへ移動していることに気付いた魔法道具(マジックアイテム)の弓らしき物を持った弓兵が叫ぶが、事態の分かっていない弓兵はすぐに反応できない。


 罠を発動させる。

 停止していた刃が右から左へと移動すると2列に並んでいた弓兵の体が上下に両断される。


 切断面から血と臓物をまき散らして弓兵が倒れる。


 うお、想像以上の威力だ。


 今まであまりに大量殺戮攻撃が可能な方法だったため使う機会がなかったが、これは大軍相手でなければ使えない罠だということが分かった。


「く、くそっ」


 1人だけ俺の存在に気付いて弓兵が6メートルほど上へ跳んでいた。


 斜め上から矢が射られた。

 その矢は青白く光り輝いている。魔法道具の効果だろう。


 回避は簡単だ。

 既に矢が目前まで迫って来ているが、後ろへ軽く跳ぶだけで矢を回避することができる。ちなみに跳躍はクールタイム中なため使えない。


 だが、果たしてそれだけでいいのだろうか?

 魔法道具の弓から放たれた矢だ。自動追尾能力が備わっているかもしれない。


 だから確実な方法を採ることにした。


「……は?」


 矢を射った弓兵が呆然としている。

 回避するでも迎撃するでもなく掴まれた(・・・・)のが相当意外だったらしい。

 俺の動体視力を持ってすれば射られた矢でも集中すれば止まったように見ることができる。


「あっつ!」


 しかし、掴んだのは失敗だった。

 矢は妙な熱を持っており、熱を感じた瞬間に手放してしまった。

 ダメージはないのだが、熱い物は熱い。持っていられない。


「化け物め……」


 そう言いながら矢の番われていない弓に手を添える。

 すると弓に青白く光り輝く矢が生まれる。

 なるほど。魔力を矢に変えることのできる矢だったか。熱かったのはエネルギーの塊である魔力矢を掴んでしまったからだ。


 付き合うのもここまでだ。

 既に使用から30秒が経過しているので空中にいる弓兵の正面に一瞬で移動する。


「なに!?」


 空間跳躍したことに驚いているようだ。


 どうやら兵士ではなく騎士だったらしく魔法道具が与えられているだけでなく、兵士よりも頑丈そうな胸当てを装備していた。見たところ、特に魔法道具や貴重な素材を使われているというわけでもなさそうだ。


 というわけで弓だけを無理矢理奪う。


「1名様ご案内」

「ま、待て……」


 静止するよう訴える声を無視して頭を掴んで穴に向かって投げる。


 地面に着地する。


 ……ん?

 いつの間にか魔法使いの小隊に左右と後ろを囲まれていた。


 おそらく最初は弓兵隊の左右で囲むようになっていたのだろうが、俺が一瞬で移動し続けるせいで左右と後ろに固まってしまったみたいだ。


 弓の次は魔法か。


「撃て、撃て! とにかく撃ち続けろ」


 ただし、弓の時とは違って隊長が慌てているせいで統率されていない攻撃だ。


 炎弾、氷柱、岩塊と様々な攻撃が飛んでくるがタイミングがバラバラだ。効果的な攻撃をするなら属性とタイミングを合わせる必要がある。

 属性がバラバラなせいで炎弾が氷柱を溶かしてしまっているし、炎弾に岩塊が当たって爆発を引き起こしている。


 あんな状態では、俺に届く魔法は半分あるかどうかというところだ。


 それに当たったところで弓と同様に俺にダメージはない。

 けれども生物として攻撃を受けたくはない。


「迷宮操作:壁」


 魔力を地面に叩き付けると俺を守るように周囲に高さ3メートルの壁が出現する。


 壁に魔法が叩き付けられる。


「なんて頑丈な壁だ!」


 迷宮操作で造り出した壁はビクともしない。

 そもそも破壊が不可能だ。


 やがて1分も籠っている内に魔法が止む。


「もう魔力が切れたのか」


 壁を消して魔法を撃ち続けていた魔法使いを見る。

 俺が壁の中に籠もっている間に魔法を撃ち続けていたせいで魔法使いが魔力切れを起こして地面に座り込んでいた。


「魔法っていうのはこうやって使うんだよ」


 両手を左右に広げて魔法を使用すると嵐の時のような突風が生み出される。

 その風の前では誰もが立っていることができず、地面に座り込んでいた人々も押し出されるように奥へ奥へと吹き飛ばされていく。


 その先にあるのは奈落の崖。


「い、いやだあぁぁ」

「死にたくない!」


 叫びながら突風に耐えようとして前に進もうとしている。魔法使いの中には風属性の魔法を使える者もいたようで自らも風を発生させて俺の起こした突風を押し返そうとしている。

 ま、ちょっと強めただけで押し出されちゃったんだけどね。


「壁の破壊無効能力はあれだけの魔法を受けても平気みたいだな」


 穴に落ちた魔法使いから興味を失くして迷宮操作で造り出した壁について考察する。


 迷宮操作で生み出した壁は、土魔法で周囲の土を掻き集めて造った壁とは違って迷宮にある壁を魔力で生み出すスキルだ。迷宮の壁は採掘を目的にさせた壁以外は破壊が不可能になるよう造られている。その要因は、壁に『破壊不可』の効果が付与されている為だ。

 よって壁を破壊したいなら『破壊不可』を剥奪できるだけのエネルギーを叩き込まなければならない。


 しかし、あれだけの魔法攻撃を受けても壁はビクともしない。こいつの防御力を少し甘く見ていた。


「こういう実験は大軍が相手でないとできないから助かるよ」


 彼らも実際には魔法使いの中でも中級程度の実力は持っていた。

 そんな彼らが何百人と集まってタイミングが合っていなかったとはいえ同時に攻撃してくる機会など早々ない。


 安全になったところで弓兵から奪った魔法道具の弓を道具箱に収納する。


「そろそろ出口へと到達したみたいだな」


 迷宮魔法で視界を遠くへ飛ばして落とし穴の途切れる場所辺りを見てみれば兵士100人を連れた騎士がいた。


 左右には落とし穴。

 正面に俺がいるとなると後退するしかない。


 これほど狙いやすい場所は他にない。


リザルト

・『魔力弓』アンタレス

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