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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第10章 蹂躙戦争
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第10話 開かれた戦端

イリスティア視点です。

「来ましたね」


 私の隣に立っていた騎士が呟きます。

 彼はクラーシェルの治安を守る騎士団の大隊長で、今回の戦争でも重要な東門の防衛を任された騎士です。


 夜が明け、陽が昇り切った頃には帝国軍の軍勢が土煙を上げながらクラーシェルへと近付いて来るのがはっきりと分かります。


 東側にいる私たちの方へは5000の軍勢が差し向けられています。

 北と南へは500ずつの兵力が向けられています。そちらの兵力は、あくまでもクラーシェルの兵力の一部を釘付けにしておいて本命である5000人で東側から侵略するのが目的でしょう。


「それで、どうしますか?」


 私たちがいるのは街の外壁の上。

 魔法や弓の扱える兵士が可能な限り配置され、その人数は500人もいます。


「まずは魔法と弓、それから大砲で敵の数を削る。ただ、大砲に関しては弾数がそれほど準備できなかったから5発撃ったら終わりだ」


 東門の上には左右に遠距離を攻撃できる大砲があります。

 軍勢の侵攻に対しては役立ってくれる大砲ですが、普段から使える状態にしておくと危険なうえ維持費も膨大になります。そのため緊急時にのみ地上にある倉庫から砲弾を持って来るのですが、戦争開始を告げられたのが昨日だったため準備が間に合わずに最低限の砲弾しか持って来ることができませんでした。


「その後、ある程度近付いたら支援程度にしか遠距離攻撃はできない。というよりも近付けさせないでほしい」

「外壁の破壊だけは絶対に阻止しなくてはなりません」


 10年前の戦争時も門の外で戦闘が行われていましたが、何度も魔法を浴びせられたことによって外壁が崩されてしまった。


 その結果、帝国軍の街への侵入を許し、多くの住人が犠牲となった。

 軍勢を維持する為には、軍人を世話する者が必要となる。防衛拠点であるクラーシェルに住む人々には戦う力はなくとも後方支援としてなら役立つとして駆り出されていました。


 そして、それは今回の戦争でも同じです。

 急な戦争であるため物資が不足しているだけでなく、世話をする為の人間を呼ぶ為の時間すらなかった。そのため食事の用意や怪我人の手当ては住人が行うことになっていた。


 ――絶対に街の中へ入れるわけにはいかない。


 当時を知る者として決意を新たにしていると、


「いますね」


 大きな魔力を持った存在に気付きました。

 それが何人もいる。


「彼らの魔法は強力だ。絶対に近付けさせないでほしい」

「はい」


 初めての戦争参加である私は彼らから教わることが多い。

 色々と実地で教わりながら近付く軍勢を見る。


「魔法、放て!」


 外壁の上に立った魔法使いが頭上に火球を生み出し、帝国軍へ向けて放ちます。

 進行する帝国軍の前線部隊の頭上に白く輝く盾が出現し、頭上から降り注いでくる火球から軍勢を守る。盾によって爆発による熱すら届きません。


「矢、放て!」


 騎士の号令に従って矢が放たれます。


 侵攻する軍勢に届くほど強力な魔法を使うとなれば魔法使いに準備をする為の時間が必要になります。

 矢も魔法と一緒に放てば巻き込まれて届かせることすらできない。


 そのため魔法と弓矢を交互に使うことになっていました。


 ――キンキンキン!


 帝国軍の方も魔法使いと一緒に侵攻している騎士が頭上に掲げた大盾を使用して矢を防いでいます。


「やはり、奴らの方がきちんと準備してきているか」


 このまま同じことを続けていたとしても王国側の矢が尽きてしまいます。

 そんな風にお互いに最初の攻防が行われると帝国軍から馬に乗った騎士が4人駆けてきます。手には大きな槍が握られています。


「チッ、奴ら一気に攻め込むつもりだな」


 いよいよ私たちの出番です。


「どう動きますか?」


 前回の戦争にも参加した経験のあるフィリップさんに尋ねます。


「俺たちがやるのは近付いてくる強そうな連中を倒すことだ。軍勢には兵士の連中が対応してくれるさ」


 そうなると私たちが相手にしなくてはならないのは馬で駆けてくる騎士4人。

 既に昨日紹介されたAランク冒険者2人はパーティメンバーと共に下へと降りています。


「……まずは俺たちパーティが突っ込む。お前たち2人は付いて来るだけでいい」

「なっ!? あなたは勝手に行動するつもりですか!? ただでさえ人数の観点から不利なのですから作戦を練ってから……」


 ふん、と鼻で笑ってから近付いてくる騎士へと向かって行きます。

 いえ、あれは騎士が目的なのではなく騎士の向こう側にいる相手が目的ですね。


 パーティメンバーの杖を持った魔法使いが騎士の1人に向かって氷柱を撃ち、騎士の乗っていた馬の脚に当たり、馬が暴れたことによって騎士が放り出されるもののどうにか受け身を取ると立ち上がってこちらを警戒しています。


「邪魔だ」


 彼の手から衝撃波が放たれ、騎士を大きく吹き飛ばします。

 吹き飛ばされた騎士ですが数秒ほどで立ち上がっていました。が、既にその頃には攻撃した魔法使いが後ろへ駆け抜けていました。


「さすがはアイヴィードさんだ」

「そうなんですか?」

「実力的にはSランクに届きそうなんだが、彼の目的はグレンヴァルガ帝国にいるガルガッソにしか興味がないそうなんだ」


 双剣使いの男性――クルトさんが教えてくれます。

 アイヴィードと呼ばれた冒険者は、グレンヴァルガ帝国との間で小競り合いが発生する度に率先して戦いへと赴き、ライバルのような立ち位置にいる帝国所属の魔法使いであるガルガッソと戦うことにしか興味がないみたいです。

 全ての指に嵌められた指輪も戦場で長時間戦い続けられる為の魔法道具で魔力の温存や魔法発動の速度を上昇させてくれる効果があるそうです。


 そんな魔法道具まで持って戦場に立つ彼にとってクラーシェルという土地は魅力的みたいです。

 私にこれまで面識がなかったのもほとんどが戦場にいるか自分を高める為に修行をしているせいで冒険者ギルドには最低限しか寄らないからだそうです。


 おっと、私たちもそんなことを考えている場合ではありませんね。


「では、お互いに生き残れるよう無事を祈りましょう」


 倒さなければならない騎士は4人。

 私たちはパーティが2組。


「いつものようにお願いします」

「ああ!」


 ダルトンさんが地面に大剣を叩きつけ地面を僅かに揺らします。

 土魔法を利用した攻撃で魔法が得意でないダルトンさんでも周囲の地面を僅かに揺らし、近付いて来た馬を驚かせるぐらいはできます。


 走っていた馬が揺れる地面に驚いて暴れます。


 暴れる馬に乗っていた騎士が馬から振り落とされるもののどうにか着地しています。


「ウィンドカッター」


 着地した騎士に向かってエリックさんの放った風の刃が襲い掛かり、騎士の体を斬り裂いていきます。

 あっちは2人で大丈夫みたいですね。


「おら、落ちやがれ」


 もう1人の騎士に向かって正面から向かって行ったフィリップさんが馬の直前で跳び上がって騎士の頭に向かって拳を叩き付けます。


 騎士も槍を使ってフィリップさんの攻撃をいなしています。

 しかし、馬上では上手く動くことができず騎士は馬から跳び下りました。


「なかなかの強者だ」


 槍を構えフィリップさんを睨み付ける姿には強者の風格があります。

 が、それがなんだというのか。


「むっ……!」


 騎士が既に攻撃を受けていたことに気付いたようですが、既に遅いです。


「アイシクルランス」


 騎士の側面に回り込んだ私の周囲に浮かんだ10本の氷の槍がフィリップさんと睨み合っていた騎士に向かって飛んで行きます。

 騎士もその場から動かずに槍を巧みに使って槍を捌いていきます。


 いえ、動かないのではなく動けないのですね。

 騎士の足は足首まで地面に氷で凍て付いており、無理に動かせば重傷を負うほどの凍傷を受けています。

 馬から跳び下りた時点で私が水魔法で発生させた冷気で凍らせたことによるものです。


「悪く思わないでくださいね」


 氷の槍に隠れながら近付くと騎士の首を刎ねます。

 足を凍らされ体軸を動かせない状態で視界の悪い側面からの攻撃に対して捌くだけで精一杯で、私の接近に気付くほどの余裕はなかったみたいです。


「行け!」


 さらに頭上に生成した2メートルの氷塊をダルトンの戦っていた騎士に向かって投げます。

 後ろから投げられた氷塊に気付いて振り向いた騎士でしたが、3人を同時に相手できるだけの実力はなかったらしく私の攻撃に対応できず氷塊に頭を潰されてしまいます。


「今日も絶好調みたいだな」

「まだまだ倒さなければならない相手はたくさんいますよ」


 油断することはできない。


 少し離れた場所を見ればクルトさんが騎士2人を倒していました。


 私たちよりも圧倒的な数を誇る軍勢ですが、今突出してきたのはたったの4人。こうして4人よりも多い人数で確実に倒していけば勝機があるかもしれません。


 そんな希望を抱いて敵の軍勢を見た時。

 大量の……火球の波とも言える魔法がクラーシェルに向かって放たれました。


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