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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第10章 蹂躙戦争
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第8話 報酬要求

 彼らが俺に頼みたいのは『クラーシェルへの救援』だ。

 ただし、わざわざ俺を指名してまで向かわせるということは戦力の1つとして加わるだけではなく、グレンヴァルガ帝国の戦力を殲滅してこいと言っている。

 しかも今攻められている最中であるため急ぐ必要がある。


「報酬はこちらから要求してもよろしいでしょうか?」

「……ああ、構わない」


 領主を相手に報酬を要求するなど普通なら考えられないが、先ほど不干渉で行こうと決めたばかりである。

 それに頼んでいる依頼がどれほど危険で難易度の高いものであるのか理解しているため多少の要求なら呑むつもりみたいだ。


「まず、確認ですが依頼内容は『グレンヴァルガ軍の殲滅』でよろしいですか?」

「こちらから要求しておいてなんだが、本当に可能なのか?」

「可能です。なにも何万もの軍勢を相手にするわけではなく、まずは『6000人の実働部隊』と『4000人の支援部隊』を壊滅させるだけです」

「それが普通は不可能だと思うのだが……」

「まあ、なんとかなるでしょう」


 そのためには力を見せる必要があるが、要求する報酬を考えれば必要なことだ。


「成功報酬で構いません。こちらの要求は2つです。1つ目は、『私たちと迷宮に関連する記録を全て破棄し、今後も残さないこと』これを2人ともに約束してもらいます」


 今後のことを思えば記録を残さない方がいい。

 俺が迷宮主であることばバレてしまったのだって元々は、過去の迷宮主が自分に関連する記述を残させてしまったことにある。

 次に迷宮主になった者の為にもなる。


「いいだろう。記録は全て破棄するし、今後も残さない」

「ありがとうございます。ただ、先祖が遺した記録は残したままでも構いません。さすがに遺品まで処分していただくのは忍びないですから」

「それは助かる」


 アリスター伯爵がホッとしている。

 俺が全ての記録を処分するよう要求してしまった場合は、まだ探していない記録も確認しなければならない。


「2つ目の要求です。今回の依頼で金銭的な報酬は必要ありません」

「こちらとしてはかなり無茶な要求をしているつもりだが?」


 そもそも戦争を仕掛けて来た相手を殲滅するような依頼の報酬。

 いったい金貨が何百、何千枚あれば足りるのか予想も付かない。


 代わりにある物を要求する。


「金銭は必要ありませんが、私たちが倒した帝国兵が所有している武器や防具。食糧に至るまで全ての所有権を私たちに認めてもらいます」

「それは……」


 既に村が2つ占領されてしまっている。

 当然、占領された時に戦闘が起こっているため帝国兵から奪い返した時には復興しなければならない。


 復興には金が掛かる。

 その資金源に帝国の兵站を頼ることができなくなる。


「もちろん帝国兵が村から奪った財産については返還します。私たちは帝国が持ち込んだ兵糧のみ回収することを約束します」


 ここで村の財産まで奪ってしまっては反感を買ってしまう。

 それに俺が欲しいのは村にあるような金ではなく、帝国兵が戦争に勝つ為に持ち込んだ魔法道具にある。


「そのような要求――依頼の成功報酬として金を貰っても同じではないのかな?」

「いえ、そうでもないんですよ」

「これも迷宮に関連することか」

「迷宮の力を考えれば金で貰うよりもそのまま貰った方が効率がいいんです」


 戦争に持ち込むような魔法道具なら武具関連の物が多い。

 武具に魔法効果が付与された魔法道具だと魔法効果の方は劣化していなくても武具そのものが傷んで劣化してしまっていることがある。そうなると武器としての価値も含めて値段が決められてしまうため買取額が落ちてしまう。


 しかし、迷宮に与えて魔力へと変換。その魔力を金貨へと換金する。

 この方法だと武具としての価値は気にせず、魔法道具に付与された魔法効果だけを考慮され、普通に買い取ってもらうよりも多くの金が得られる。


「分かった。その条件も呑もう」

「領主様!?」

「たしかに攻められているクラーシェルにとってみれば復興に必要な金が帝国から手に入らないのは問題だが、事ここに至ってはそんなことを言っている場合ではない。彼らを助ける為にはマルス君たちの力に頼る必要がある」

「ですが、クラーシェルの領主が納得するでしょうか?」

「その時は私の方からある程度の資金援助はさせてもらうさ」


 それだけアリスターにとっても逼迫した状況ということだ。

 クラーシェルとはそれほど離れていないので問題はクラーシェルだけに留まらずに南のアリスターまで飛び火する可能性すらある。


 その場合にはシルバーファングと同様に蹂躙させてもらうつもりだが、伯爵としては領民のことを思ってクラーシェルまでで全ての問題を解決したいと考えているみたいだ。


『勝手に報酬を決めてしまったが、問題なかったか?』

『私の方からもこれ以上の要求を突き付けるつもりはありません。今後のことを思えば迷宮主に関する記述を残してしまうのは問題ですし、金銭面での要求が通らなかったとしてもクラーシェルには向かった方がいいです』


 報酬についてメリッサと念話で相談する。

 視線はあくまで報酬について相談している伯爵とギルドマスターに固定したままでこちらが相談をしていると思わせない。


『私たちなら数万の軍勢が相手でも勝つことはできるかもしれませんが、それはやり過ぎです。場合によって私たちの方が軍よりも危険な相手だと見做されてしまう可能性があります』


 メリッサが危険視していたのは、軍との戦闘よりも軍を倒してしまった後のことだった。


『ですが、今なら「敵軍に襲われたクラーシェルの救援に駆け付けた冒険者」という体裁で戦うことができます。それに襲っているのが先遣隊だけというのも都合がいいです』


 本来なら数万の軍勢を相手にしなければならないところを1万だけで済む。


 俺は、そっちの方が楽だろう程度にしか考えていなかったのだが、メリッサはそれ以上のことを考えていた。


『クラーシェルにはある程度の戦力があります。その戦力と協力して1万の敵を殲滅した。これならギリギリ思わせることが可能です』

『なるほど』


 数万は無理でも1万ならギリギリ対処できるかもしれない。


「要求は本当にその2つだけで構わないのかな?」

「ええ、問題ありません」


 メリッサからの了承も得られたことだし、特に問題があるようには思えない。


「まずは、クラーシェルへと駆け付けて先遣隊を殲滅させます。その後の行動については、戦況を見つつクラーシェルの領主様もしくはギルドマスターと相談しながら決めるということでよろしいですか?」

「ああ、そうしてくれ」

「今日中に解決してきますよ」


 ソファから立ち上がる。

 アリスター伯爵の後ろで待機していた兄が扉の方へと移動して扉を開けてくれる。


 全員が応接室を退室すると兄がいきなり頭を下げてきた。


「すまない。俺たちの家族の為に色々と面倒を掛けたみたいだ」

「家族なんですから相手のことを思うのは当然のことですよ」

「だが……」

「それに約束したのは『これまで通りにしましょう』っていう内容です。兄さんが気にするような話じゃないです」

「だが、そのせいで戦争に駆り出されるようなことに!」

「帝国の動きを考えれば王都までの途中にある街だけでなくアリスターまでわざわざ来て略奪する可能性だってあります。それを防ぐ意味でもクラーシェルへの救援は必要なことです。アリスターまで軍隊が来れば確実に俺たちは戦うことになります」


 アリスターで戦うことになればギルドは強制依頼を利用して冒険者を戦力として街の防衛に回すことになるはずだ。

 その中で戦うよりもクラーシェルで戦った方が知り合いは少ない。

 俺たちの素性を知っている相手が見ている前よりも知らない相手が多い方で戦うことを選んだだけだ。


「まあ、夕方までには終わります」

「今の時間を考えると夕方までに辿り着くことすら不可能なんだけど」


 クラーシェルまでは馬を使って半日。

 既に正午近くになっているので普通に考えれば急いでも陽が暮れた後になる。


「家族に伝言をしている時間も惜しいので兄さんの方から事情は伝えておいてください。それと『掃除を途中で放り出してごめんなさい』と」


 先遣隊の殲滅は今日中に終わるだろうが、その後の処理で数日は帰れないことが予想できる。

 とにかく先遣隊殲滅の為に急ぐことにしましょうか。

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