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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第10章 蹂躙戦争
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第7話 自壊機能

 俺の正体が迷宮主(ダンジョンマスター)であることがアリスター伯爵には知られてしまっていた。


 隣に座っているギルドマスターに俺が迷宮主であると聞かされても驚いた様子がないことから事前に聞いて知っていたのだろう。


 ただし、俺も驚かない。

 既に知られていたことには少しばかり驚いたが、いずれは知られてしまう可能性についてはパーティメンバー全員に話をしている。


 だから知られてしまっていることを聞いて驚いているのは兄だけだ。


 さすがにSランク冒険者ですら勝てないシルバーファングの討伐はやり過ぎた。後からどうするべきか困ってしまったものの既に討伐した後なので自分の正体が知られてしまった時の対処をどうするのか考えるしかなかった。


「今後の為にもどうして知ることができたのか教えてもらえますか?」

「やはり真実なんだな。これまでは可能性の1つでしかなかったが、君の強さの秘訣については以前から探っていたんだ」


 俺たちの力は権力者に興味を抱かせるには魅力的だった。


 それまでは、ただの村人同然だったにも関わらず冒険者になってからの3カ月の間に魔物1000体を倒せるほどの力を持ち、強化されたパーティメンバーと一緒だったにも関わらず伝説的な力を持つ魔物を綺麗な状態で倒した。


 そんな戦力を手に入れる方法があるなら是非とも手に入れたい。


「ギルドでは迷宮で特殊な魔法道具(マジックアイテム)を手に入れて自分だけでなく、パーティメンバーの力も高められるようになった……そんな風に考えていた時期もあった」

「しかし、ギルドから話を聞いた私はそれがどれだけ特殊な物なのか? そのように考えて過去の文献を漁らせてもらった」


 何百年も前からアーカナム地方の領主をしてきたアリスター家なら膨大な量の資料が残されているのだろう。


「中には当主以外には見せてはいけない資料もあったため私自ら調べ物をしなければならなかったため時間が掛かってしまったが、その中に過去の当主が『迷宮主』という存在について記録を残してくれてあった。500年も前の資料だから残されていたのもメモ程度の記述だったけどね」


 アリスター伯爵の顔からは苦労が窺えた。

 500年も前のメモが残されていたことにも驚いたが、迷宮核からはそんな話を聞いたことはなかった。


『500年前っていうことは主の2代前の迷宮主だね。さすがに当時のことはそれほど覚えていないけど、まさか存在を知られていたとは驚きだね』


 迷宮核も知らなかったことらしい。


「君の急激なパワーアップは迷宮主になったもの。そして、パーティメンバーについては迷宮主と同じような恩恵を身近な者にも与えることができるのではないかな?」

「正解です」


 さすがに眷属の詳細についてまで知られていないみたいだが、俺たちと迷宮の間に深い関わりが知られていることは間違いない。


「もちろん力を与えるなどのメリットがある代わりにデメリットが存在しているので誰彼構わずに力を与えるようなことは止めておいた方がいいでしょう」


 自分の兵力に眷属を組み込む。

 それだけでアリスターの戦力は盤石なものとなる。


 しかし、俺にはそんなことに協力するつもりはない。

 まず、眷属は主が死亡すると道連れにするかのように全員が死亡する。たとえ俺が生きている間だけでも最強の軍隊を維持することができたとしても俺が一生を終えればその軍隊は消滅する。また、俺に万が一のことがあっても消滅する。

 そんな、いつ消滅するとも思えない軍隊に頼らなければならないのは間違っている。


 また一番の問題が女性だけの軍隊になってしまうことだ。

 誰が好き好んで男を眷属にするか。俺にそんな趣味はない!


「それから私を自分たちの傀儡にする為に私だけでなくパーティメンバーの家族が不利になるようなことは止めていただきたい」


 領主としての立場を利用すれば母や妹。それからメリッサの家族であるガエリオさんの商売に影響を及ぼすことは簡単だ。


「もしも、私たちが何らかの不利益を与えた場合にはどうするつもりだい?」


 こうなった事態は以前から予測していたため不利益を被った場合の罰も考えてある。


「迷宮を自壊させます」

「なに?」

「迷宮主としての権限を使えば迷宮を一瞬で自壊させることが可能です。それはあなたたちも困ることでしょう」

「……そうだね」

「どういうことですか?」


 アリスター伯爵は迷宮が自壊した時の被害が分かっているみたいだが、ギルドマスターはそこまで深刻な事態になると考えられていないらしい。

 まあ、ギルドからしてみれば冒険者が安定して稼げる場所程度の認識でしかないのかもしれない。


「アリスター……いや、アーカナム地方は広大な迷宮があるからこそやっていけるんだ。迷宮があるからこそ魔物の肉や野菜が安価に手に入る。迷宮がなければ食糧自給率は一気に低下し、今の人口を支えていくことはできないんだ」

「そう、ですね……」


 農村が多く、農産物の生産が盛んな地域ではあるものの魔物が多く出現するせいで多くの冒険者を必要とし、冒険者の魔物討伐の為に武器や防具を造る職人を多く必要とする。

 そういった人々を支えられるほど収穫はあるものの迷宮があった頃ほど豊かな状況ではいられない。


 また、クラーシェルとは違った意味で戦力を必要としている。魔物が多く出没するので冒険者が多く必要とされているが、迷宮以外での稼ぎで今の冒険者の数を維持するのは不可能だ。迷宮での一獲千金を目指して冒険者はアリスターに居座り、構造変化が起こるまでの間は周囲の討伐依頼をこなして稼ぐ。


「お分かりですか? 迷宮がなくなれば食糧だけじゃない冒険者の維持だって不可能になる。切り札は常にこちらにあります」

「分かった。君の関係者に手を出すようなことはしないと誓おう」

「安心してください。自壊機能は私が命令しない限り起動するようなことはないので私に万が一のことがあった場合でも勝手に起動するようなことにはなりません」

「そうか」


 アリスター伯爵が安心していた。

 それだけ迷宮の存在は欠かせないものとなっていた。


「こちらの要求はただ1つ。今まで通りに不干渉のまま付き合っていこうということです。こちらにとってもアリスターの存在は欠かせないものとなってしまっていますから」


 迷宮を維持する為には迷宮を訪れた冒険者から魔力を得る必要がある。

 多くの冒険者を呼び込む為には迷宮まで1、2時間程度の場所に都市があるのは維持の為に必要な条件だった。


「迷宮と都市。これは共生関係でいなければならないんです」


 つまり、今まで通りでいこうというわけだ。


「だが、これまで――君が迷宮主になる前と変わらない状況のままでいいと言うのなら君を排除してしまってもいいのではないかな? それともこちらの意のままに操られる人物を新しい迷宮主にするという方法もある」


 それでも迷宮から得られる利益をギルドマスターは諦めきれないらしい。

 本気で言っているのだろうか?


「まず、迷宮主になる方法ですが、迷宮の最下層にある迷宮核に触れる必要があります。今の冒険者に最下層である地下82階まで辿り着ける冒険者がいますか?」

「地下82階!?」


 本当に地下55階が最下層だと思っていたのだろうギルドマスターが現在の最下層を聞いて驚いていた。


「私は何らかの条件を満たしていたおかげで最下層までの転移が可能となりましたが、その条件を満たした人物を探しますか?」

「条件とは?」

「さあ?」


 本当に分からない。

 これまで迷宮核とも話し合って色々な可能性を模索してみたが、明確な答えは見つけられなかった。もしも血統に反応しているのなら俺の子供を次の迷宮主にするという方法もある。迷宮核が寂しくならないよう次の迷宮主は必要になる。


「申し訳ないが、アリスターの領主として彼らに危害を加えるのは禁ずる」

「領主様……」

「彼が冒険者としてここを訪れた時に『協力する』と言ってしまっている。これぐらいの便宜ならばさせてもらう」

「はい」


 それと勘違いは訂正しておかなければならない。


「私が迷宮主になる前と今が同じ状況だと思っていましたが、本当にそう思っているんですか?」

「どういう……」

「初心者が迷宮から得られる財宝は今までよりも少しずつ多くなっているはずです」

「そういう報告は受けている」


 さすがに一気に多くなってしまうと不審に思われてしまうので少しずつだが、迷宮の下層に回していた魔力を上層の方へ回すことができるようになったので今まで以上に冒険者が手にできる財宝が多くなった。


「私が迷宮主をしていた方が不在期間を設けるよりもずっといいはずですよ」


 今の状態の方が多くの利益を得ることができる。

 街の領主とギルドマスターに納得してもらえた。


「それでは依頼の詳細について話し合いましょうか」


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