第16話 ステータス確認
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名前:マルス
年齢:15歳
職業:迷宮主 冒険者
性別:男
レベル:6
体力:10051
筋力:10053
俊敏:10037
魔力:10025
スキル:迷宮操作 迷宮適応
適性魔法:迷宮魔法 土
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まず、ステータスを上から見て行こう。
冒険者ギルドで登録した時に確認したレベルより1増えている。これは、おそらく迷宮内でゴブリンやファングバットを相手に戦ったことで上がったのだろう。
レベルが上がっていることについては、問題ない。
しかし、体力~魔力の数値だ。
なんだよ、1万オーバーって……。
迷宮核は、迷宮主になればステータスが強化されると言っていた。
でも、これは強化されすぎだろう……。
おそらく、レベルが上がったことで俺のステータス値が上昇した。そこに迷宮主になったことにより全てのステータスに1万が追加されたのだろう。
たしかに『転移』や『鑑定』のような普通は使えない特殊な魔法を使っても魔力枯渇を起こすような気配はなかった。
ステータスについて考えるのは、とりあえずこれまでにしよう。
次は、スキル『迷宮操作』と『迷宮適応』についてだ。
「迷宮操作については、迷宮で既に使っているから簡単だな」
迷宮操作――満月の日を待たずに迷宮の構造を自由に変化させることができるスキル。
道順を変更したり、行き止まりを造ったりするだけでなく、罠を新たに設置したり、別の階にいる魔物を呼び出すこともできる。
ただ、自由にできるのはもちろん迷宮内だけであり、外で迷宮操作を使用したとしても現在の熟練度では簡単な罠の設置、壁の作製などが精一杯である。
外で使用した場合についても後日確認しなければならない。
問題は、もう一つの迷宮適応だ。
これは、地下40階以降にあるバッドステータスを与えるフィールドに迷宮主が足を踏み入れても問題ないようにする為のスキルらしい。これにより、迷宮内ならばステータスに補正が掛かり、状態異常に掛からなくなる。ステータスを下げるような効果が無効化される。もちろん自分から装備した『制約の指輪』による効果は対象外になっている。
ただ、俺は『ステータスに補正が掛かる』という部分を気にしていなかった。
「まだ、強化されていたのかよ」
迷宮内にいる間、ステータスが1割増しになると書いてあった。
隠し部屋では、制約の指輪によってステータスを1割に落として1000ちょっとのステータスで戦っているつもりでいた。しかし、実際にはそこから1割強化されているせいで1100程度の力で戦っていた。
自分の予想よりも若干強いような気はしていたが、それは迷宮適応が関係していたのか。
どうやら、自分の予想以上に現在のステータスについて考える必要があると考えながら新たに手に入れた『迷宮魔法』について、考えてみる。
迷宮魔法は、迷宮内にある転移水晶による転移。罠によって発生する電撃や炎。宝箱や道具箱の創造。それらを魔力を消費することによって、自由に行えるようになるというものだ。
適性魔法を所有している人は、自分の使える魔法がなんとなく頭の中に浮かんでくる。
俺も土属性に適性があったおかげで、俺に使える魔法を思い浮かべようとすれば魔法の名前と共に効果が列挙されていた。
ただ、そういう意味では迷宮魔法は危険だ。
頭痛がして、思わず左手で左目を押さえてしまった。
「これは、自分にできることを本格的に調べた方がよさそうだな」
あまりにできることが多すぎる。
転移や道具箱は、使い道が限られているが故に簡単だった。
だが、他には爪の先から鋭い刃を生み出したり、植物を操って鞭のように使用したり、体を硬質化させて防御力を高めるなんてものもあった。
どうして、そんなことができるのか?
それは、迷宮内で出現する全ての魔物の能力も使用できたからだ。
罠と同様に、迷宮に生息している魔物も迷宮の一部と見做されていた……。
どうやら、本格的に人外となってしまったようだ。
「それにしたって、こんなステータス見せるわけにはいかないぞ」
しかし、ステータスやスキル、適性魔法を隠すだけなら簡単だ。
幸いレベルやステータス、それにスキルなどは非表示にすることができ、名前を見せることによって身分証明をすることはできる。
冒険者の中には自分が持っているスキルや魔法を隠している者もいる。いつからか、ステータスカードにそういった機能が付けられるようになった。
しかし、どうしてもステータスを見せなければならない状況が来るかもしれない。
「なにか、いい方はないか――なんだ、あるじゃないか」
頭の中に『迷宮魔法:偽装』が浮かんできた。
偽装は、迷宮の草原フィールドに出てくるスケルトン・カメレオンが所有しているスキルで、自分の姿を透明にするだけでなく、感知能力を使用されても『そこにいない』と嘘の情報を伝えることができる。
これを利用してステータスカードに嘘の情報を刻むことができる。
早速使用してステータスを変更する。とりあえず、数値は1%に抑える。
あの数値は明らかに異常だ。通常は、レベルが上がることによって大きく上昇する。そのため上昇値のせいで、それぞれのステータスに偏りが出ることはあってもレベルに適したものになるはずである。
なのに、俺はレベル6で1万超え。どう考えても異常だ。
よし、ステータスは1%に抑えた。『迷宮操作』と『迷宮適応』、『迷宮魔法』も表示されないようにしたおかげで、適性魔法には『土』だけが表示されていた。
後は、最も重要なものを非表示にする必要がある。
『職業:迷宮主』
これは、一番ダメだろう。
迷宮主であることを隠して生活したいにもかかわらず、堂々と「迷宮主です」とステータスカードが語っていた。
これも非表示だ。
これで、俺のステータスについては大丈夫だ。
「後は、こいつらだな」
俺の視線の先には、迷宮魔法:宝箱を使用して取り出した剣とコート、それから靴があった。
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名前:神剣・星雫
レア度:S
効果:常時体力回復【極】 筋力上昇【極】
名前:深淵の黒衣
レア度:S
効果:衝撃吸収【極】 魔力上昇【極】
名前:天馬の靴
レア度:S
効果:敏捷上昇【極】 空中移動
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はい、まだ装備品によってステータスが上昇していましたね。
なんだよ、レア度:Sって……
なんだよ、【極】って……
そんなの聞いたことないよ。
これらの装備品だが、迷宮核に頼んで用意してもらった。ただし、こっちから指定した条件は『使いやすい剣と動きやすい防具』だ。
その結果、渡した魔力から用意した装備品が体力回復と筋力を上げてくれる切れ味抜群の剣。
迷宮核の「カッコいいから」と理由で強く勧められたコートが受けた衝撃を和らげ、ついでに魔力も上昇してくれるコート。
ついでに動きやすさも要求するなら、ということで渡された靴。空中移動――空中を蹴ることで前後左右へ跳べるようになれる靴なんて要求していないよ。
しかも、効果の【極】なんて伝説になるような冒険者が持っている装備品ぐらいにしかついていないよ。普通は、【大】や【中】が付くことすら稀なのに……。
おかげでレア度がSになってしまっているじゃないか。
装備品の【極】も全部非表示だ。
まあ、装備品ついては鑑定魔法を使われない限り異常性についてバレることはないだろう。
「残りは、迷宮核と相談しながら決めよう」
自分のステータスを見て気になったことはまだある。
先代の迷宮主たちがどうしていたのか、など迷宮核という相談相手がせっかくいるのだから活用させてもらおう。