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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第10章 蹂躙戦争
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第3話 メリッサのプレゼント相談

メリッサ視点です

「それで、私のところへ相談にきたのか?」

「はい……」


 2人と別れた私は、実家とも言える酒屋でお父様の下を訪れています。

 今は、お客さんも少なくなる時間帯ということでお父様も快く娘の相談に乗ってくれます。

 ただ、その相談内容が男性への誕生日プレゼントということで気まずそうな顔をしていました。私を自分のところまで連れて来てくれた主のことを認めているお父様ですが、やはり娘が奪われたような気がしてしまっているみたいです。

 けれども他に頼れそうな人物がいないのも確かです。

 競争をしているわけではありませんが、他の2人にはないアドバンテージを使わせてもらうことにしました。


「お父様なら、何かいい案があるのではないですか?」

「そう言われてもな……」


 私にだけは父親がいます。


「若い頃にお母様からもらって嬉しかった物を教えてもらうだけでもいいのです」

「そういうことなら」


 お父様が店の奥へと消えて行きます。

 え、そこは商品を保管しておく為の倉庫なのですが……。


 しばらくしてお父様が持ってきたのは、高級なシャンパンです。


「これ、なんてどうだ?」


 店のカウンターの上に商品のシャンパンを置きます。


「ミッシェルからは、よくお酒をプレゼントされていたから私のお気に入りをお前に渡そう。それにしても娘が男性にプレゼントを選ぶ年齢になったのか」

「お父様、そういうのではなく……」

「そうよ。あなたは何を言っているのかしら?」


 店の中で商品の整理をしていたお母様が話に加わります。

 お父様は役に立たなさそうですし、ここはお母様に期待することにしましょう。


「誕生日プレゼントに渡すならこっちの方がいいでしょう」


 お母様がカウンターの上に置いたのは高級ワインです。


「あの、お母様は誕生日プレゼントにワインを贈っていたのですか?」

「ええ、そうよ。そもそも私たちはお見合いで知り合った間柄だったから2人だけの結婚生活というのも短かったのです」

「そうなんですか?」

「領主の家に嫁いだ娘に一番期待されていることは、世継ぎをなるべく早く生むことです。けど、知識はあっても男性と付き合った経験なんてなかった私は色々と悩んだ末に最初の誕生日にお酒に頼ることにしました」

「え……?」

「それから誕生日にはお酒を贈るようになりましたね」


 私はラグウェイ家の長女です。

 つまり、結婚してから最初の誕生日にお酒を飲んだ後でそういうことをしたから私が生まれることになったわけで……知りたくありませんでした。


『こっちもだよ!』


 迷宮核の笑いを堪えた声が頭の中に響き渡ります。

 言っている意味は分かりませんが、彼のツボに入ったみたいです。


「そもそもシャンパンの方がいいと言っているのは、単純にあなたが好きなだけでしょう」

「お祝いをするならシャンパンだろ」

「ワインです」

「シャンパン!」


 言い合いからそのまま夫婦喧嘩を始めてしまいました。

 夫婦喧嘩をするのは構わないのですが、お願いですから手に持った瓶を置いてから喧嘩をしてくれないでしょうか?


 と言うか、2人とも全く役に立ってくれません。


「お酒を飲めない人の誕生日プレゼントに高級シャンパンや高級ワインを贈るなんて……」


 本人は全く楽しめません。

 いえ、主はグラスで1杯や2杯ぐらいならどうにか飲めるので楽しんでくれるでしょうが、両親が用意してくれた瓶を空にするには私たちも飲む必要があります。主以上に。


 それに、両親のあんな想い出のある品を誕生日プレゼントに渡して期待されているとか思われたくありません。


「仕方ありません。ここはもう1人の父親に頼ることにしましょう」


 街の門で手続きをしてから一目に付かない場所へと移動すると魔法を発動させます。


「転移」


 『迷宮魔法』による転移ではなく、『空間魔法』による転移を発動させます。

 視界に映る景色が一瞬で変わり、アリスターへ来る前に住んでいた王都の門が見える場所へと移動していました。


「初めて王都まで転移しましたが、無事に成功したみたいですね」


 空間魔法による転移は、迷宮魔法による転移のような転移先の制限を受けずに自分の行きたい場所へと自由に移動できる魔法です。


 一見便利に思える魔法ですが、致命的な欠点として距離に関係なく1度の使用で魔力を5万も消費してしまいます。今の私でもギリギリ片道分成功するだけの魔力を消費してしまうので、ただでさえ適性を持っている人が少ない空間魔法で、魔力が足りずに使用できないという転移です。

 が、私はギリギリ成功させられるので行きは空間魔法で、帰りは迷宮魔法の転移で帰れば問題ありません。


 もう1つ転移できるのは術者本人だけなので、私以外の人を連れての転移は不可能となっています。


 とにかく空間魔法のおかげで遠く離れた王都まで一瞬で辿り着くことができるようになりました。


 懐かしい王都。けど、懐かしんでいられるような時間的余裕は両親のせいでありません。記憶を頼りに目的地へと向かいます。


「いらっしゃいませ」


 目的地である雑貨を取り扱う商店へと赴くと中から男性の声が聞こえてきました。

 普段は王都中心の街や村を中心に行商をしており、王都のお店は奥さんが店番をしているので男性――テックさんがいてくれたのは幸いでした。


「お久しぶりですテックさん」

「メリッサ!?」


 テックさんは私が店に来たことに驚いています。

 私が家族と生き別れた時に頼った人で数年間お世話になった人なので、私だけでなくテックさんも本当の親娘のように感じてくれています。


「よく店の場所が分かったな」

「下見には何度か訪れていましたから」

「それにしたって王都の複雑な道を覚えているのが凄いよ」


 平民を中心に商売をしているので王都のメインストリートからは離れた場所に店があり、王都の門から入ってきた人が初めてだと見つけにくい。

 だけど、記憶力の良い私は一緒に相談しながら決めた店の場所を覚えていました。


「それで、わざわざ王都まで来たのには理由があるんだろう?」


 今アリスターに住んでいることはテックさんも知っています。

 王都までの距離を考えれば気軽に訪れることのできる場所ではないので依頼で訪れたついでに挨拶に来たと思っているのでしょう。


「実は、マルスさんの誕生日プレゼントについて考えているのですが、両親に相談してもなかなかいい案が出てこなかったので……」

「それで、私の所へ?」


 訪れた理由が誕生日プレゼントの相談と聞いてテックさんが困惑しています。

 まあ、それだけを理由に数日かけて王都まで来たというのなら正気を疑うところです。


「そうか……メリッサもついに男性にプレゼントを贈るような年齢になったのか……」


 あれ、そっちですか?

 なにやら感動してしまったテックさんの目には涙が浮かんでしまっています。


「これは、今度マルスさんにも挨拶をした方がいいかな」


 本当の父親のように思っている人ですが、そこまでしてもらうわけにはいきません。実の父親は今も生きています。


「それで、何かいい案がありませんか?」

「ちょっと難しく考えすぎじゃないかな? あのぐらいの年齢の男の子なら美少女からプレゼントを貰えるだけで嬉しいものだ。だからプレゼントの内容はなんだっていいんだ」

「ですが……」


 どうせなら喜ばれる物を贈りたい。


「なら、こういう物はどうかな?」


 テックさんが商品棚の方へと案内してくれます。

 そこには男性向けのブレスレットやピアスといったアクセサリーが置かれていました。ただし、ただのアクセサリーではなく装備品です。


「村人でも魔物に襲われた時に身を守る術は必要だから、最近だとお金に多少の余裕がある人がステータスを上げてくれる装備品を買う傾向にあるんだ。メリッサには色々と世話になったから格安にしてあげよう」

「いいのですか! でも、どれを選んだら……」

「それだけは私の口から言えない。どれだけ上質な物でもメリッサが選んだ物を受け取った方が彼は嬉しいと思うよ」

「では――」


 正直言って装備品としての能力は重要視していません。

 私たちのステータスを考えればここに置いてある装備品で上昇するステータスは微々たるものです。ですから効果よりもデザインを重視します。


空間魔法の転移→1度でも訪れたことのある場所。消費魔力は膨大。

迷宮魔法の転移→迷宮内ならどこへでも。消費魔力は微量。

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