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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第1章 借金返済
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第15話 心配

「お願いします。息子が昨日から帰らないんです」

「お兄様を探して下さい」


 アリスターの街に戻り、真っ直ぐ冒険者ギルドにやってくると聞き覚えのある声が聞こえてきた。


 母と妹の声だ。

 まあ、冒険者になると言ったその日の内に、どこへ行くとも伝えずに家へ帰らなかったら心配して探し回るはずだ。


 普通の家庭がどの程度心配するか分からないが、家では数日前に父が仕事に出て行ったきり行方を告げずに帰って来なかった。俺まで同じようにいなくなってしまったのではないかと不安に押しつぶされそうになったのだろう。


「お願いします……あの子まで帰って来なかったら、わたし……」

「わたしも……これ以上、家族がいなくなるのは嫌なんです」


 二人が受付のカウンターの前で泣き崩れる。


「そう言われましても……」


 困った表情で対応しているのは俺の冒険者登録をしてくれた受付のお姉さんだ。

 おそらく、冒険者ギルドの中で一番俺との面識があるということで二人の対応をするように言われたのだろう。

 ギルド内にいる冒険者の視線は冷ややか、というか気にしていないようだった。


「どうやら、新人がいなくなったらしいな」

「ま、よくある話だぜ」


 泣き崩れる二人の会話。


 冒険者はとても危険な仕事だ。

 そんな仕事を続けていれば死んでしまうこともある。特に多いのが自分にできること、限界を知らない新人の冒険者だ。


 たしかに俺もあの隠し部屋で死んでいてもおかしくなかった。

 二人を取り囲んでいる冒険者の間を縫うようにして、二人の傍まで近付く。


「安心して下さい。マルス君は、冒険者登録していますので、こちらでも管理している冒険者カードによって彼が生きていることは確認できています。もしかしたら怪我をしていて動けないだけなのかもしれません」

「でしたら、捜索をお願いします」

「ですが、冒険者ギルドに依頼を出す、ということになったら依頼料が必要になりますが……」

「大丈夫です! 今はありませんが、息子の命には代えられません。たとえ、体を売ってでも、そのお金は――」

「必要ないので、絶対に止めてください!」


 怒鳴り声を上げて、母にそれ以上の言葉を言わせない。


 まったく……二人にそんなことをさせない為に冒険者になったというのに、俺の失敗でそんなことをさせるわけにはいかない。


 たくさんの人からの視線が集まる。

 あ~、それはそうだな。泣き崩れている母親に向かって、突然怒鳴り声を出したんだから突然登場した相手を怪しむよな。


 だが、泣き崩れている二人と、それを宥める人にとっては知っている人物で……


「マルス!」

「お兄様!」


 母と妹が抱き付いてくる。

 衆目があってちょっと恥ずかしいけど、二人には心配させてしまったみたいだし、二人の好きなようにさせてあげよう。


 泣いている二人の背中を撫でてあげると少しずつ落ち着きを取り戻していったようだ。

 その様子を見ていた受付のお姉さんが、


「さ、見ていたなら事情は分かったでしょ。あなたたちもさっさと仕事に行きなさい」


 冒険者たちがほっこりとした表情になってその場を後にする。


「それで、事情を説明してもらえますか?」




 ☆ ☆ ☆




 受付のお姉さんに案内されてギルドの2階にある応接室を使わせてもらう。


 ここでは、それなりの地位にある人と聞かれたくない話をする時に使う部屋なのだと説明された。


 お姉さんが全員にお茶を行き渡らせてからゆっくりと事情を説明する。


「今朝早くにこの二人がギルドに駆け込んできてね。帰らない君がどこに行ったのか知らないか、と詰め寄って来たのよ。君と話をしたのも私だけだったから、私の方で『迷宮に行くつもりだった』と伝えたら不安になってしまったらしくてね。無事に帰って来てくれたみたいでよかったわ」


 お姉さんが自分のお茶を飲む。


「それで、昨日の内に帰って来られなかったのには理由があるのかしら?」


 ここで本当の事を言うわけにはいかない。


 ――迷宮に潜ったら探索者(シーカー)ではなく、迷宮主(ダンジョンマスター)になってしまいました。


 こんな事を言ったところで誰にも信じてもらえない。


 それに、それ以外のボアズたちとの間にあったことも伝えるわけにはいかない。いや、ギルドの職員であるお姉さんにだけならいいかもしれないが、こんなに心配させてしまった母と妹にこれ以上の心配をかけるわけにはいかない。

 しかし、何も言わない、というわけにもいかないので少しばかり誤魔化させてもらうことにしよう。さすがに真実の瞳なんてスキルを持っている人間がゴロゴロいるわけがない。


「実は、地下2階にあった落とし穴から落ちて川に流されてしまったんです。その後のことは意識が混濁していてよく覚えていないんですけど、途中にあったポーションを飲んだら体調も回復しました。そこからは、どうにか這い上がってきた感じです」

「川、ということは地下6階ですね。そんな危険な落とし穴があるならギルドとしても注意を促すべきなんですが、次の構造変化は3日後です。その時には、落とし穴も無くなっている可能性がありますね」


 一応、後で設定して隠し部屋も含めてきちんと消えるように調整しておこう。


「お兄様、大丈夫なんですか!?」


 隣を見ると怪我をしたと聞いて表情を青くしている妹がいた。


「大丈夫よクリス」


 狼狽する妹を母が宥めていた。


「そうだよ。途中でいい物を拾ってね。ポーションだけじゃなくて、装備も手に入ったんだ」

「そういえば、昨日見た時とは装備が随分と違っていますね」


 昨日、冒険者登録に訪れた時は兵士のような恰好をしていたからな。

 それに比べれば今の黒コートと腰の剣は明らかに格が違う。


 もちろん嘘の設定は考えてある。


「実は、俺が拾ったのはポーションじゃなくて、ポーションや装備が入っていたこいつなんです」


 右手の中指に嵌められた指輪をお姉さんに見せる。

 さすがは冒険者ギルドの受付嬢なのか、一目見ただけでそれが何か見抜いていた。


「触れた物を亜空間に収納することのできる収納(ストレージ)リングですね。なるほど、たくさん手に入れすぎだと思っていましたが、それぞれ別々に手に入れたのではなく、全てが収まった魔法道具(マジックアイテム)を手に入れたということですね」

「そうです」


 まったくの大嘘であるが、とりあえず肯定しておく。

 これで、今後魔法道具を出したとしてもこの収納リングに入っていた物だと言い訳をすることができる。


「無事だった理由については分かりました。ですが、先ほどは罠による事故だと言っていましたが、本当ですか?」


 お姉さんが訝しんだ目を向けてくる。

 俺の前にも新人狩りにあった新人冒険者がいたらしいから、あの6人の冒険者を疑って俺もその被害に遭ったと考えているのだろう。


「はい、本当のことですよ」


 笑顔を浮かべながら嘘を吐く。

 アルミラさんのように真実の瞳を持っている人がそうそういるはずもないことから、そう簡単に俺の嘘が看破されるとは思えない。


 お姉さんは、半信半疑といった様子で、


「分かりました。ギルドでは罠によって怪我をするものの手に入れたポーションで回復し、戻ってきたと報告します」


 手を差し出してきた。


「ありがとうございます、お姉さん」


 俺も答えて握手する。


「私の名前はルーティです。受付嬢の勘でしかありませんが、あなたは大成するような気がします。有望な冒険者とは受付嬢として仲良くしたいですからね」




 ☆ ☆ ☆




 冒険者ギルドを家族3人で後にすると、家へと真っ直ぐに向かう。

 家の前では、辺りを行ったり来たりする兄の姿があった。


「マルス、本当に無事だったんだな!?」

「心配を掛けたようで、すみません」

「いや、いいさ」


 話を聞けば、仕事があるということで朝は仕方なく職場に向かったが、冒険者ギルドから俺が見つかったという報告を聞いて居ても立ってもいられず、休みを貰って俺の様子を見に来てしまったらしい。


 4人で食卓の前に座ると今後についての話し合いを始める。


 とは言っても……


「マルス、冒険者なんて危険な仕事は辞めた方がいいわ」

「そうです。お兄様」

「借金については、俺がどうにかするから、お前が気にする必要はないんだぞ」


 俺に危険なことはするな、冒険者は辞めた方がいい。というものだった。


 とはいえ、家族にも内緒だが、職業:迷宮主(ダンジョンマスター)は辞められるようなものではない。


 とりあえず、安心させようと収納リングから皮袋を取り出す。


「これは……?」

「中身を見てください」


 食卓の上に置いた時の音から中身について予想できた兄だったが、さすがに信じられないのかゆっくりと皮袋を開ける。


 そこには……


「金貨が10枚以上入っているぞ」

「え?」


 初めて見る量の金貨に妹も皮袋の中身を覗き込んでいた。


「これも迷宮で見つけた物ですが、全部で15枚あります。借金については、これで全額返済することができます。冒険者については、借金も返済できたということで、しばらくは迷宮に挑むつもりはないので、ゆっくりと地力を付けながら続けたいと思います」

「分かったわ。あなたも考えて結論を出したようだから私は反論しないわ」


 母は俺の意見に賛成してくれた。

 兄と妹の二人も母が賛成するなら、ということで了承してくれた。


 3人とも借金という心配がなくなったおかげか、父が行方不明になってから不安だった表情が今日は少し落ち着いていた。

 俺も、家族の顔を見て安心してしまったのか、


「あ……」


 お腹が鳴ってしまった。


 そういえば、体力はポーションで回復してくれたが、昨日の朝から何も食べていなかった。


「分かったわ。少し早いけど、夕食にしましょうか」

「私も手伝うわ、母様」

「あ、材料に関しては少し贅沢してもいいですよ。ここに伯爵に色を付けて借金を返しても多い金貨があるんで、今日ぐらいは贅沢をしましょうね」

「そうね」


 金貨を1枚渡すと母と妹が夕食をどうしようか、と楽しそうにしながら悩んでいた。


 その様子を眺めている兄に疲れたからベッドを貸してもらうよう頼み、兄の部屋で一人になると、休むわけでもなく、ある事について悩む。


「どうしよう、これ……」


 俺の目の前には見慣れたステータスカードがあった。


 ただし、そのステータスは全く見慣れないものになっていた。




==========

 名前:マルス

 年齢:15歳

 職業:迷宮主(ダンジョンマスター) 冒険者

 性別:男


 レベル:6

 体力:10051

 筋力:10053

 俊敏:10037

 魔力:10025


 スキル:迷宮操作 迷宮適応

 適性魔法:迷宮魔法 土

==========




 なんだ、このステータス!?

 オールステータス1万超えなんて聞いたことないぞ!!?


第1章のリザルト

・迷宮主の権限

・圧倒的なステータス

・いくつものスキルや魔法

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[一言] 主人公の家族は元村人で貴族ではないのに彼は自分の母親に~ますとか使っている事に違和感を感じた。 幾らでもよそよそし過ぎて、家族の一員としての親しみが感じていない。
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