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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第47章 狂熱乱踊
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第23話 循環する噴火

 火山の上空から噴火の様子を観察する。

 周囲には噴煙が充満しているけど、風で受け流してやれば影響を受けない。


「おい」

「どうした?」


 声が足元から聞こえてくる。


「ここからどうすればいい」

「そうだな……」


 念話で確認する。

 どうやら、もう大丈夫みたいだ。


「十分以上も観察していたんだから十分だ」

「なに言ってやがる? まだ、ここに来てから1分も経っていないぞ」

「お前の中ではそうなんだろうけど、俺たちの中では違うんだよ」


 火口付近に対して【世界】を発動させて時間を止めた。

 目撃者はいるが遠くにある山を溶岩が流れるのを見ているだけで、止まっているようには見えない。初めて見る溶岩に「こんなものか」と感想を抱いている程度でしかない。

 噴火は始まった。しかし、遠くにあって全く迫ってきているように見えない……実際に火口付近の時間を止めていたのだからほとんど動いていない。そのせいで危機感が全く抱けていなかった。


「これもツァリスの思惑通りか」


 最大の要因となっているのはレドラスの存在だ。

 火竜が火山を鎮めてくれる。そう信じているから待つことができている。


「余計な混乱が生まれなくてこっちとしてはありがたい」


 溶岩が流れ始めた火山に向かって【世界】を発動させる。

 山の斜面を流れる溶岩の前に土壁が出現する。


「いつの間に……」


 唐突に現れた土壁にレドラスが驚きを露わにする。

 どうせ、土壁で受け止めるなんて考えているんだろう。


「こんな土壁1枚でどうにかなるわけないだろ」


 高さ10メートル、幅100メートルの土壁。

 溶岩流を受け止めたとしても、すぐに横に溢れて流れ出てしまうことになる。


「信じているぞ、二人とも」


 上空から火山を見下ろす。全体が見える光景に現実では存在していない線が視界に表示される。

 出現した線に沿って新たな土壁を出現する。

 山を囲むように現れた巨大な土壁。遠くから見れば帽子のように見えなくもないだろう。


「おい、こんなことをしてどうするつもりだ?」

「見て分からないのか。受け止めて流すんだよ」

「いや、溶岩流だぞ!?」


 レドラスの言いたいこともある。

 溶岩と土では少しばかり耐えられたとしても、いつの間にか土壁を溶かしてしまうことになる。


「大丈夫だ。さっき実証しただろ」

「量が全然違うぞ」


 魔物が流した溶岩流を受け止めることには成功した。

 しかし、今度は噴火によるものであるため流れてくる量が違う。延々と流れ続けてくるため、いずれは耐えられなくなってしまう。


「その心配はない。今度のはただの土壁じゃない」


 迷宮にある土壁を出現させた。迷宮の恩恵が受けられないせいで『破壊不可』でなくなってしまったが、溶岩流に耐えられるだけの力はある。


「なにせ火山フィールドにある壁をそのまま持ってきているんだ。溶岩に耐えられるのは保証済みだ」


 冒険者に壊せるよう『破壊不可』の効果を一部分だけ打ち消すことは可能で、それでも壊れることのなかった土壁。たとえ上から大量に流れて来ても耐えることができるはずだ。

 それに受け止めて終わりではない。土壁のある場所まで流れた溶岩流は、火山に沿って流れる土壁に角度をつけている。


 ゆっくりとした動きだが溶岩が流され、土壁も続いている。

 そうして、ある場所へと誘導していた。


「さあ、次の場所だ」


 レドラスの背から飛び降りると溶岩の進行方向とは逆へ進む。

 山を囲むように造られているように見える土壁だったけど、山の中腹のとある場所で途切れていた。

 周囲には何もない。

 何故ここまででしかないのかレドラスには分からなかった。


「どうするつもりだ? すぐにここにも溶岩が迫って来るぞ」

「俺がさっき造ったのは言ってしまえば排水路だ」

「はぁ」

「排水路の先には捨てる為の排水口が必要だろ」


 山に対して【迷宮操作】を使用する。

 任意の場所に罠を作成するスキル。【迷宮操作】の中でも最も使い勝手のいい落とし穴を瞬時に作成する。

 直径100メートルの巨大な穴が出現する。

 準備が整うと、遠くから溶岩が流れてくるのが見える。


「まさか……」

「火山の中から出てきた溶岩なら火山の中に戻してやればいい」


 飛んでいるレドラスの背に飛び移る。

 上空にいる俺たちに溶岩流は何の問題もなく、落とし穴に溶岩が流れていく光景を眺めることができた。


「噴火をどうにかするっていうのは……」

「さすがに噴火そのものを止めることはできない。けど、こうして流れ出した溶岩をどうにかするだけならできるんだよ」


 人為的に引き起こされた噴火だったというのも可能だった理由の一つだった。急な噴火だったためエネルギーが足りずに勢いが弱かった。

 長年レドラスによって噴火が起きていないこともあって障害物になる物が多く、溶岩の流れが抑えられるなどもあったことで速度が緩められた。

 いくつかの要因があったことで準備するのに十分な時間が得られた。


「でも、溶岩を落とした穴は大丈夫なのか?」

「大丈夫なのはお前も見ただろ」


 穴を開けると同時に補強を行っている。溶岩を押さえた土壁と同じ材質にしているので、耐えられるのは実証済みだ。

 この場所を選んだのも火山内部までの厚さが最も薄いからだ。穴を開け、補強するのにも迷宮の魔力を消耗している。可能なら節約した方がいい。


「いつの間に薄い場所なんか調べたんだ?」

「昨日、何の為に探索したと思っているんだ」


 火山を見学しただけで終わるはずがない。

 壁の向こうからも魔物が現れたため、壁の厚さや道があることを事前に調査していた。

 こんなことに使うとは思っていなかったため時間は掛かってしまったが、イリスが記憶していたのをメリッサが計算して最適なポイントを割り出した。


「これで街が被害を受けるのは防げる」

「こんな方法で大丈夫なのか?」

「さすがに長い期間を掛けた発生した自然現象なら難しかったけど、今回は人為的に引き起こされたものだ」


 いくら神の力だったとしても噴火の爆発を長時間も維持するのは難しい。

 溶岩流の量も徐々に少なくなり、火山内部へ排出が可能な量だけで止まることになるはずだ。

 噴火の爆発が何時間も続くようなら土壁を越えてしまったり、穴で詰まったりなどして不測の事態が起こるかもしれない。


「さあ、最終決戦といこうか」

「最終決戦?」

「これ以上ペレを放置すると何かされても困る。確実なのは次の行動を起こされる前に仕留めることだ」


 レドラスに指示して火山の上まで移動する。

 上から見下ろす火山は内部の様子がはっきりと見え、グツグツと煮え滾り、爆発が時折起こっているのが見える。


 爆発が起こり、すぐそばを溶岩が通り過ぎていく。山に落ちた溶岩は斜面に沿って下へ流れていくことになるが、土壁に沿って流れて再び火山内部へと戻ることになる。

 噴火から十数分しか経過していないのに鎮静が見え始めていた。


「所詮は力が弱くなった神の力だ。この程度が限界だったみたいだな」


 それでも止められなければ十分な効果はあったはずだった。


「それで、どうするんだ?」

「もちろん突っ込むんだよ……お前が」

「へ?」


 呆けているレドラスの尻尾を掴むと、火山の奥深くに向かって放り投げる。

☆コミカライズ情報☆

7月23日(土)

異世界コレクターのコミカライズ第2巻が本日発売されました。

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[良い点] やっぱり『レドラス(武器)』じゃないか!? [一言] レドラスさまのおかげじゃあ、ありがたやありがたや…… さぁて! レドラスまんじゅうにレドラス焼きにレドラスの描かれたペナント! 町お…
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