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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第47章 狂熱乱踊
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第17話 サンドワームの襲撃

「速いな!」


 風を切る感覚が自分の力で飛ぶ時と違って新鮮で思わずはしゃいでしまう。

 男の子なら誰もが一度は憧れたことがあるような状況にあったからだ。


「おい、あんまり騒ぐと落ちるぞ」

「平気だから安心しろ。この程度の揺れなら問題ないし、落ちたとしても自分の力で飛ぶことができるから墜落はない」

「飛べるならどうしてオレが運んでいるんだよ!」


 足元にはドラゴンの体となったレドラスがいる。

 何か非常事態が起こったマウリアの街。急いで戻る必要があったのだが、要請した負い目からレドラスが移動手段になることを買って出てくれた。


 空を飛ぶことができるドラゴンなら街まで数分で辿り着くことができる。それだけの速度を出すことができるのも乗っているのが、ドラゴンの飛行にも耐えられる俺たちだからだ。


「人が乗っているんだから、もっと思いやって飛びな」


 しかし、隣で俺たちと同じようにレドラスの背に座っているツァリスは不満を持っているようだった。


「なぁ……どうして母ちゃんはそっちにいるんだ?」

「アンタの母親じゃない、って何度言えば理解するんだい。まあ、ワタシは魔力を節約する必要があるからね。ドラゴンに変化するのだって魔力をそれなりに消費するんだよ」

「……そうか」


 その言葉に何か思うところがあったのかレドラスは黙ってしまった。

 実際、ドラゴンの状態だと人化した時よりも多くの魔力を消耗してしまう。こうして人間の姿で隣にいてくれるのが最も消耗を抑えることができる。


 それよりも目の前の光景の方が気にしなければならない。


「街が……!」


 誰かが叫んだ。だが、全員が同じ思いだった。

 観光地として美しかった街の中にサンドワームが何体も侵入しており、巨体で建物を潰していた。大きな体のサンドワームは、離れていても空からなら全体を把握することができる。

 全部で20体。


「こ、この野郎……!!」

「ちょっ!」


 街の上空まで飛んだレドラスが人化し、背中の大剣で斬り掛かる。さすがにドラゴンが下りられるほどのスペースはなく、人の姿になる必要があったのは分かる。

 しかし、周囲が全く見えていない。

 ドラゴンの姿のまま街の上空まで移動したせいで多くの人に火竜の姿を見られてしまった。しかも、中には人間の姿になるところまで見た人もいる。


 それになによりも……


「俺たちが乗っていることを完全に忘れていたな」


 上に誰かがいることすらも忘れていたため空中に放り出されることとなった。


「そっちはいい。どうやってなのか知らないが、街の中に魔物が侵入している」


 街には魔物を寄せ付けない結界が設置してある。街のように多くの人が住む場所にしかないが、結界が健在なら魔物に侵入されることはない。

 理由は分からないが、街への侵入時に結界の存在が感じられなかった。もし、結界が健在なら魔物であるレドラスも拒まれていたはずだ。

 普段は人化し、力を抑えることで結界を誤魔化しているだけに過ぎない。だが、街で暴れているサンドワームは人化などしていないし、結界を誤魔化す真似もしていない。ただ暴れているだけである。


「さすがにこんな状況は放置できない。細かい指示は抜きにして、全員やりたいように動け」

『了解』


 眷属の5人があちこちへ散ってサンドワームの討伐に向かう。手加減をしなければ独力でも討伐は可能なはずだ。


 地面に着地する。

 すると、その瞬間を狙っていたのか着地した大通りの左右にあった建物から2体のサンドワームが建物を壊しながら現れる。人なんて簡単に飲み込めてしまうほど大きな口を開け、涎が撒き散らされている。


「おい!」


 襲われようとしている姿に気付いた冒険者の一人が叫ぶ。


「邪魔だ」


 そんな冒険者を無視して神剣を振るう。

 左右から迫っていたサンドワームを斬り捨て、目的の人物がいる方へと近付く。


「おまえ……」

「ああ、よく見ればゼルゲンか」


 全身に傷を負ったゼルゲン。最前線で敵の攻撃を受けるのだから最も激しい場にいるのだから、傷を負っていてもおかしくない。だが、今の彼は必要以上の傷を負っていた。たった数分の間に激しい戦闘があったことを物語っている。

 彼はマウリアでもベテランの冒険者だ。俺の向かった先にいたのも当然と言えば当然だろう。


「何があったのか教えてほしい、ギルドマスター」


 ギルドマスターのアルハンドに尋ねる。

 このような状況になっては彼の存在は、領主の次に守るべきと言っていいほど重要になっている。

 陣頭指揮を執っている彼をゼルゲンたちが中心になって守っている。


「状況は見て分からないのか? とにかく魔物が侵入してきて手一杯といった状況だ。街は建物も人も酷い有様だ。さっき火竜が飛んでいるところを見た。余裕があるようなら手伝ってくれないか?」


 ひどく慌てている様子のアルハンド。

 通常は、街へ入らないように動く。ところが今回は何の予兆もなく街に現れたせいで対応が完全に後手となってしまっている。

 焦るのも無理はない。


「安心しろ。今、ウチのメンバーが討伐していってくれている」


 眷属の手によってサンドワームの数は順調に減らしている。ただ、市街戦なせいでメリッサが十分に活躍できず不満が燻っていた。

 俺の近くにはツァリスだけがいる。彼女は魔力の消耗を考えて戦闘を避け、俺のアドバイザーとして近くにいてくれていた。


「何かあった時に備える為にも何があったのか教えてほしい」

「……分かった。サンドワームは任せよう」


 事の始まりは唐突に訪れた。

 小さな揺れを感じて冒険者ギルドの建物から出たところ、街の外にサンドワームが何体もいるのが確認できた。サンドワームは口から液体を吐き出し、街を覆っていた結界が液体に濡れることとなる。

 たとえ液体が溶解液だったとしても結界が溶かされるわけではない。

 だが、今は完全に結界が消失してしまっている。


「どうしてなのか理由は分からないが、溶解液に塗れて少しすると結界が割れたんだ」

「割れた?」

「そうだ。まるで砕け散るかのように割れた」


 守る物がなくなった街は魔物に蹂躙されることとなった。

 状況は分かった。


「まずサンドワームを倒す。その後で付け焼刃かもしれないけど、結界を修復して魔物が近付けないようにする。全員、それで問題ないな」

『はい』


 サンドワームも順調に数を減らしていっている。


「よし、このままいけば……」

「あんまり前に出ない方がいいぞ」

「へ?」


 ゼルゲンの正面で地面を割って巨大な魔物が姿を現す。

 長い胴体に小さな足が何本も生えた虫――百足だ。濁ったような色をしており、体を持ち上げた状態で口から滴る涎が地面につくと、溶けて大きな穴が開いてしまう。


「あとは、こいつを倒せば終わりかな」

☆コミカライズ情報☆

7月23日(土)

異世界コレクターのコミカライズ第2巻が発売されます。

ぜひ手に取ってみてください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 熱が弱点じゃなさそうなムカデって聞いただけでめっちゃ厄介そう……潰しても殺虫剤かけてもなかなか死なないんだよね……
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