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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第47章 狂熱乱踊
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第14話 マウリア火山・登頂

 転がって来た岩を剣で斬る。半分だけになった岩の片方からマグマが溢れ、人の上半身を形作ろうとする。切り捨てられたもう片方からは何も出てこない。


「魔石が核になっているのは間違いないな」


 マグマ人形が襲い掛かって来るよりも早く岩を何度も斬る。

 魔石を守る岩が小さくなるとマグマの大きさも小さくなり、人の形が維持できなくなって魔石が斬られると同時に消失する。

 山を少し登った先ではアイラが剣を振り下ろしていた。岩を両断し、ちょうど魔石があったらしく斬られたことでマグマ人形になる前に倒せた。


「アイラ、斬るなら魔石を狙え!」

「ちょっと! シルビアじゃないんだから燃えている岩の中にある魔石を捉えるなんて無理よ」


 アイラも岩の中にある魔石の位置を捉えるぐらいはできる。しかし、燃えているマグマを纏うことで魔力の流れが搔き乱されて、集中しなければ正確な位置を捉えることができずにいた。

 理屈から魔石を斬ることでしか倒せないことを理解していた。

 だが、弱点も抱えている。


「こいつらの魔石は大きい。マグマなんて膨大なエネルギーを必要としている物を生み出す必要があるせいで魔石も大きくなっているんだ。それに、ちょっと傷付けられただけで維持が難しくなるぐらいデリケートだ」


 無理に両断する必要もない。一部を削り取るだけでも倒すには十分なダメージとなる。


「とにかく細かくするつもりで斬り捨てていけ」

「りょうかい」


 アイラが頂上に向かって斜面を駆け上がって行く。

 火山からは今も岩が放たれ続けている。こちらの排除を最優先にしているためか魔物の生成に力を使ったとしても余力に構うことなく続けている。いや、相手が火山を完全に支配しているなら火山の持つ膨大なエネルギーを手中に収めていることになる。数十体の魔物を生み出し続けることなど苦にならない。


「どうしますか?」


 シルビアが聞いてくる。

 襲撃が続いているが、今のところは他の気配が捉えられていない。


「ただ無駄な襲撃を続けているだけだとは思えない。お前とノエルは索敵を続けていろ。とりあえず一気に斜面を駆け上がるぞ」


 昨日と同じように単純な山登りをしている状況ではなくなった。たえず岩が雪崩のように落ちてくるのに安心して進めるはずがない。

 最短距離。崖にも思えるような斜面を駆け上がる必要がある。


「アイラが道を切り開く。メリッサの魔法で上の方にある岩を先制して砕け。イリスは二人が討ち漏らした敵の排除だ」


 指示をすると3人がそれぞれの動きを見せる。

 問題は、襲撃された場所から一歩も動けずにいるレドラスだ。


「お前は先に進まないのか?」

「だ、だって……こんな魔物の襲撃があるなんて思っていなかったから!」

「火山の途中で魔物が襲って来ることはほとんどないらしいな」


 火山内部にいる魔物は、火山内の環境が適しているため外へ出てくることは滅多にないと言っていい。

 外にいる魔物も山に近付きすぎると苦しむこととなるため近寄らない。

 麓で魔物を狩っていて危機に陥った冒険者たちは街へ逃げ帰るよりも山を登った方が安全な場合もあるらしい。


 俺たちは事前に情報を得て知っており、マウリア島の冒険者として1年近く活動したことがあるレドラスは当然のように知っていた。

 普段では絶対に考えられない出来事。


「まさか、オレが一緒にいたから……?」

「だろうな」


 敵にはレドラスを火山に近付けたくない理由がある。


「より正確に言うなら俺たちとお前が一緒にいるからだろうな」

「え……?」


 敵の正体については凡そだが予想できている。

 俺たちがレドラスを連れて行くことで不都合が生じる。


「昨日、俺たちだけで火山まで行った時には何もなかった……何も感じることができなかったんだ」


 火竜の代わりとなる存在がいるなど全く予想もできなかった。

 それは、敵が俺たちの来訪を知って本気で隠れたからだ。調査されるよりも自身の存在が露見することを恐れた。


「お前がいれば何らかの理由で隠れ続けることはできない、と判断した。だから先手を打って攻撃を仕掛けてきたんだ」

「なんで……」

「……恐いのか?」


 レドラスを言いようのない不安が襲っていた。

 ドラゴンとして生まれた時から同種以外に対して恐怖を抱いたことなどない。だが、今も襲撃を仕掛けてきている相手はドラゴンであろうと構うことなく襲撃してきた。


 ドラゴンを恐れない。

 その事実がレドラスにとっては恐かった。


「そういえばアンタは里の奥で大事に育てられていたね」

「母ちゃん」

「ま、仕方ないと言えば仕方ないね。なんせツァリスが生んだ最後の子供だ」


 ドラゴンたちの住む里で最も強く、尊敬されていたツァリス。本人は魔法の研究に精を出していたため長のような立場を望まなかったが、長に準ずる権力を持っていて、彼女の子供たちも相応の権力が与えられていた。

 そんな兄弟の中で最後に生まれたレドラスには多大な期待が寄せられていた。


「ドラゴンは魔物の中で最強種だよ。けど、魔物よりも圧倒的に強い力を持った存在はいるんだ。ワタシも若い頃に挑んで打ち負かされて強くなろうと決心したんだよ」

「それって、いったい……」

「『神』だよ」


 滅多に現れることはない。

 そんな相手と何度も遭遇し、身近にもいるせいで忘れがちになってしまいそうになるが、人の力ではどうにもならず、ドラゴンでも太刀打ちできない存在が神だ。


「……オレは正直言って恐い。そんな存在がどうしてオレみたいなのを敵視するんだよ」

「そんなのワタシが知るわけないだろ」

「……」

「けどね……このままで本当にいいのかい?」

「え……」

「相手はアンタの存在を問題視しているけど、脅威には感じてないから完全に舐めている。こんな襲撃をしてきたのが証拠さ」


 マグマ人形の襲撃は数が多く、普通に山を進むには厄介になっただけで俺たちにとって脅威にはなっていない。

 何か別の目的がないと言うのなら、相手が傲慢なだけでしかない。


「ご主人様!」


 シルビアが頂上の方を見ながら叫んだ。


「おい、マジかよ」


 頂上を見れば翼の生えた悪魔の石像が鎮座していた。ただ、そこにいるだけなら全く問題ない。しかし、口を大きく広げるとマグマが蛇口のように溢れ出した。


「どうしますか?」


 選択肢など一つしかない。


「……受け止めるしかない」


 距離はあるものの後ろには人が住む街がある。噴火したわけではないため気付いた人はおらず、放置すれば街に甚大な被害をもたらすこととなる。


「アイラ、斬ってこい」

「え、さすがにマグマが流れてくる場所を走るわけにはいかないから回り込むことになるわよ」

「供給源を止めないことにはどうにもならない」


 まずは悪魔像を止める必要がある。


「回り込んだらあたしが斬るよりもマグマがそっちに流れる方が早いからね」

「そっちは俺が対処する」


 斜面をただ流れるだけのどんどん広がっていく。

 どれだけの範囲に干渉すればいいのか把握。


「――【世界】」


 マグマの流れる先に石壁を出現させる。

 迷宮にある火山フィールドにある石壁。それを必要最小限の厚さで出現させ、受け止めたマグマを横へと流す。流れたマグマは緩やかな曲線を描く壁に沿って移動していく。


「これで時間は稼いだぞ」


 悪魔像が横へ動いて石壁のない場所にマグマを流そうとする。


「残念。こっちは行き止まりよ」


 悪魔像が動いた方向からアイラが走り、剣閃が悪魔像の首を跳ね飛ばす。


「終わったわよ」

「ご苦労」

「岩も止まったし、見た感じこっちは異常ないみたいだからイリスかメリッサが早く来てくれない。頂上からもう暑くて仕方ないわ」

「そういうわけだ。文句言ってるし、早く登るぞ」

「はい」


 全員の意識が頂上へ向く。


 ドゴォ!!

 下の方から地面を吹き飛ばす音が響き渡る。

☆コミカライズ情報☆

7月23日(土)

異世界コレクターのコミカライズ第2巻が発売されます。

ぜひ手に取ってみてください。

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