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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第47章 狂熱乱踊
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第11話 マウリアのギルドマスター

 マウリア島は保養地として有名な場所。

 そんな場所でも大通りから外れれば人が寄り付かない空き地が存在する。


「ぐへぇ」


 シルビアは自分たちを尾行していた男を捕らえると目立たない空き地へと放り投げた。

 相手の目的が分からない状況で危害を加えるのは得策ではない。


「ご苦労」

「いえ、気付くのが遅れて申し訳ございません」

「それだけ相手が優秀だって言うことだろ」


 無精髭を生やし、金色の髪はボサボサ。捕らえられた男はどうにも疲れた様子だった。

 そんな男でも能力は優秀なのだろう。


「どうやら斥候職の冒険者らしいけど、何の目的があって俺たちを尾行していたんだ?」

「その前に拘束を解いてくれないか?」


 男の体を縛っている鎖を解く。

 何か行動を起こしたところで俺の後ろで控えている5人の女性から押さえつけられて失敗に終わる。

 ツァリスも近くにいるが積極的に関わるつもりはないのか静観している。彼女はレドラスに対処する気しかない。


 拘束から解放された男が立ち上がる。


「まず自己紹介をしておこう。マウリアの冒険者ギルドでギルドマスターをしているアルハンドだ」

「ギルドマスター!?」


 到着した時に聞いた話では『自分も調査で外出していて留守にしている』としか聞いていなかった。

 見た目は40歳ぐらいの軽装をした冒険者にしか見えない。


「すいません」

「よくギルドマスターっぽくないって言われるから気にしていないさ。僕だってのんびり冒険者をしている方がいいけど、前のギルドマスターがいきなり逝っちゃったから誰かがやる必要があったのさ」


 ギルドマスターと言っても他の街のギルドマスターとの交渉や雑務の方が多い。

 前のギルドマスターが亡くなった時にアルハンドが所属していたパーティも解散するタイミングが重なり、そのパーティで偵察をしながら雑務を引き受けていたアルハンドがギルドマスターを引き受けることとなったらしい。

 とはいえギルドマスターに任命されてから2年しか経っていない。


「今回みたいに大きな騒ぎは僕がギルドマスターになってから初めてだ。だから、どうしても気が焦って自分で行動してしまうんだ。依頼した僕が迎えられなかったのは本当に申し訳なかったと思う」


 アルハンドが俺たちの到着を聞いたのは昨日の夜。

 そんな時間に訪れるのは失礼だと思い、今朝になるのを待って謝罪する為に自分の足で俺たちの所へ来た。


 偶然、宿の外で待っていたツァリスと合流したところだったらしく、不審に思って尾行することにした。ギルドマスターとしてマウリアを拠点に活動している冒険者の顔は全員知っているし、依頼を要請した俺たちパーティについても事前に調査している。

 アルハンドが知らない冒険者がいるとなれば警戒してしまう。


「遠くからチラッと見ただけだったけど、彼女の実力はSランク以上だと言っていい。巧妙に隠しているけど僕には君たち全員が規格外だっていうことぐらい理解できているさ」


 相手の実力を見ただけで計る。

 それぐらいできなければ優秀な斥候とは言えない。


「それよりも火竜がレドラだっていうのは本当なの?」

「……聞こえていたのか」


 聞かれたしまったことは俺の落ち度だ。

 鞘から剣を抜いてアルハンドに突き付ける。しかし、剣を向けられたアルハンドは動揺することなく俺の目を見続けていた。


「こんなものはしまった方がいい。君たちに僕を傷付けるつもりなんてない」

「どうして言い切れる?」

「相手はギルドマスターだよ。僕が君たちに会いに行くことはギルドの職員に伝えてある。そんな状況で僕の行方が分からなくなれば、真っ先に疑われるのは君たちだ。君たちなら僕に危害を加えるのがどれだけ愚かなのか理解しているはずだ」

「そうだな。ギルドマスターを始末するのはデメリットが大きい」


 だが、それとは別のメリットがある。


「君が迷宮主だっていうことを言い触らすつもりはない」

「……っ」


 迷宮主だという事実を大々的に公表されるのは困る。もう率先して隠しているわけではないが、それでも迷宮主であることが知られれば色々と迷宮について勘ぐられてしまうことになる。


「さっきも言ったように言い触らすつもりはない。その代わり、火竜を見つけるのに同行させてほしい」


 アルハンドは斥候をしていた経験を活かしてドラゴンが隠れられそうな場所を時間ができると虱潰しに探し回っていた。だが、どれだけ探してもドラゴンの姿どころか痕跡すら見つけることができなかった。

 そもそも前提が間違っている。相手はドラゴンから人間の姿へと変わっているため、アルハンドが探していたような場所にはいない。


 ずっと街の中にいた。

 それも冒険者として活動していたのだから人間の姿であったレドラと顔を合わせたことだってあった。


「後であんたたちから報告を聞くよりも自分で立ち会った方が手間を省ける。これからレドラに会うっていうなら僕も連れて行ってくれないかな」

「……いいだろう」



 ☆ ☆ ☆



「で、ギルドマスターも連れて来たっていうのか」


 街の門を出て少し歩いた先にある森の中にレドラスはいた。


「ああ。僕にはこの街の責任者として話を聞く権利があるはずだ。どうして姿を消していたんだ?」

「どうして? それこそオレに言う必要なんてないな」

「え……」


 アルハンドはマウリア島で生まれ、依頼で外へ行くことはあったもののずっとマウリア島を拠点にして生きて来た。

 だから島の人からどれだけ崇められているのかも知っていた。


「オレは住み易かったから火山にいただけだ。それを事情も知らない人間たちが勝手に崇めていただけだろ」


 火竜がいてくれるから活火山であるはずの火山が噴火せずにいてくれる。

 それは人間たちの勝手な思い込みで、レドラスに人間の生活を守っている認識はなかった。

 もっともレドラスがいるおかげで噴火していなかったのは事実だ。


「悪いが、どこにいようと文句を言われる筋合いはないな」

「そんな……」

「ちょっと」

「……あ? ぐへっ!?」


 いつの間にか近付いていたツァリスが腕でレドラスの頭を絞める。

 万力のような締め付けられ方をしたせいでレドラスの意識が遠のきかける。


「アンタの思惑が別にあったのかもしれない。そうだったしても何百年も続けていたことをいきなり止めて、事情の説明を1年間もしないまま近くで遊んでいた。迷惑を掛けているんだから相応の態度ってものがあるでしょ」

「わ、分かった……だから放してくれ」


 ツァリスとしても絞め落とすつもりなどなかったため要請を受けてあっさりと解放した。

 単純な力だけならレドラスの方が強そうなのだが、どうしてもツァリスに勝利できるイメージができない。


「オレだって戻ろうとしたさ。けど、ちょっと外出している間に巣を奪われた上に取り返すこともできなかったんだよ」


 ドラゴンから巣を奪い、守り抜く。

 そんなことができる存在は限られてくる。


「せっかくだから母ちゃんも『灼炎の女神』から巣を奪うのに協力してくれよ。オレが冒険者をしているのだって、協力者を見つける為なんだから」


☆コミカライズ情報☆

7月23日(土)

異世界コレクターのコミカライズ第2巻が発売されます。

ぜひ手に取ってみてください。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 同じ文章が繰り返されてる気がするのですが気のせいでしょうか?
[一言] 話が……ループしている!? おのれ、これもゼオンのせいに違いない(暴論)
[一言] 同じ文章がつづいてます。
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