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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第47章 狂熱乱踊
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第6話 火竜の巣

 岩壁から突き出た大きな岩盤。そこは、まるでマグマの海に浮いた島のように思えた。

 ドラゴンが寝ていても問題ないだけの頑丈さがある。


「ここにドラゴンがいたのは間違いないみたいね」

「そうか? 鱗の1枚でも落ちていれば分かりやすいんだけどね」

「……本当に迷宮の主?」


 ノエルが呆れて息を吐く。

 迷宮には多種多様な魔物が生きている。そんな場所を管理する俺が魔物の痕跡を見つけられないようではダメらしい。

 俺の目には、ただ岩の島があるようにしか見えない。事前に火竜の住処だと説明を聞いていなければ、何もない島だと見逃していたはずだ。


「ここ」


 ノエルが円を描くように島をグルッと指差す。


「体を丸めて寝ていた跡がある」

「は……どこに?」

「ちょっと削れているでしょ」


 言われれば剥げているのに気付ける。

 円を描くように剥げているため、ノエルが言うように普段から火竜が体を丸めていたのだろう。


「ここにいたのは間違いないと思う」

「物理的な痕跡だけではありません。この場所にはドラゴンがいた魔力が残されています」

「え、でも火竜がいなくなったのって1年も前の話だろ」

「ですから私しか気づけなかったのです」


 メリッサはドラゴンの魔力に気付けたらしいが、俺には全く分からない。ただ、あまりに小さすぎて『竜種』であるのは間違いないらしいが、得意としている属性までは判明しないらしい。

 とにかく二人に言わせれば火竜が『以前は』いたのは間違いないらしい。


「で、ここに戻ってきているのか?」


 答えは否だった。

 中層まで来れば体の大きな火竜の姿を目にすることはできる。目撃されなくなった頃から戻って来ていないようだ。


 こんな所まで来たのに分かったのは、既に判明していた事実だけ。


「いいえ、無駄ではありません。マウリア島にいる冒険者の実力では中層から覗いて存在をたまに確認するだけで精一杯です。魔力の残滓まで調べるような真似はしていなかったでしょう」


 戻って来ていないことに確信が持てた。


「それに巣の大きさを自分たちの目で見たことで、火竜がどれだけ大きいのかもわかったのは大きいわね」

「迷宮にいるドラゴンと同程度だな」


 予想していたように見逃すような大きさではない。大きなドラゴンが飛び立てば翼の音で島にいる誰かに気付かれてしまう。


 島のどこかにいる。

 問題はどこにいるのか、ということだが……


「それについては一つ可能性があります」

「本当か!」

「ただ、これをやられてしまうと見つけるのが問題になります」


 いなくなった火竜を見つける方法は後回しにしよう。


「先にこっちを片付ける必要があるな」

「ゴォアアアァァ!!」


 火山全体に響き渡るような重厚な咆哮。直後、マグマの海から翼の生えたトカゲを思わせるような魔物が飛び出してくる。


 魔物には警戒をする必要がある。

 だが、それよりも優先して考えなければならないのは、マグマの海から飛び出してきたという部分だ。


「イリスは俺が確保する。全員、跳べ!」


 すぐにイリスの状態を確認すれば羽衣が消え、氷神の加護を使用できなくなってしまっていた。火山に満ちる熱気によって維持ができなくなり、マグマの海を覆っていた氷も溶かされていた。

 咄嗟にイリスの体を抱えると火竜の巣だった島から飛び出す。


 マグマの海から飛び出して来た魔物が口からマグマの塊を吐き出す。火竜の巣に当たるとはじけてあちこちに火の粉が舞う。

 島そのものが崩壊するようなことはないが、マグマの塊のせいで熱せられてしばらくは着地できるような状態ではない。


 俺と同様にイリス以外の眷属も各々の方法で島から脱出して飛んでいる。

 再度、魔物がマグマの塊を吐き出そうとする。


「【枯風】」


 メリッサの起こした風が吐き出されたマグマの塊を包み込んで外側を削り取ると岩が落ちていく。

 風で包み込むによって内側の物体を枯らして風化させてしまう魔法だが、マグマの塊が相手では岩の外にある炎を消して岩を小さくするだけで精一杯だった。


「さて、こいつは何だろうな」

「マウリア火山が用意した最強の戦力ってところじゃない?」


 アリアが不敵な笑みを浮かべる。

 マグマの海から飛び出して来た魔物は、翼の生えたトカゲ――ドラゴンの形を模倣していて全身にマグマを纏っていた。胴体の中心に魔石が封じ込められた岩があるのを感知できる。


 奥深い場所にいた火竜を模した魔物。ただし、全長が10メートルほどしかなくマグマで体が作られているせいかドラゴンが持つ特有の威圧感がまるで足りていない。あくまでも形を模倣しただけの魔物。

 厄介なのは飛び出してくる直前まで気配に気付けなかったことだ。

 マグマ竜が四方に散った俺たちの姿を捉える。意味もないのにキョロキョロと頭を動かしていたが、俺に狙いを定めると突っ込んでくる。

 体を捻ると、どうにか顎による攻撃を回避する。


「躊躇なしだな」


 壁を背にして飛んでいた。そのため攻撃に突っ込めば壁へ衝突することになり、マグマ竜の体を構成するマグマが弾ける。

 だが、この程度はマグマ竜にとってダメージにはならない。

 宙に浮いた岩へ弾け飛んだマグマが集まってドラゴンの形へと変わる。


 そうして再び俺へと狙いを定める。


「しつこい奴だ」


 いや、狙いは俺じゃない。抱えられたままグッタリしているイリスだ。疲労しているイリスもマグマ竜にとって餌にしか見えていなかった。

 イリスも自分が狙われたことに気付いたのか離れようとする。


「お前は下に下りてくる時に役立ってくれたんだから、こういう時ぐらいは仲間に頼ることにしようぜ」


 空中を駆けたアイラがマグマ竜に向かって剣を振り下ろす。

 狙いは――胴体の中心部分。そこに魔石を内包した岩がある。


「あっつっ!」


 マグマ竜は近付くだけでも火と熱に苦しめられる。アイラの斬撃なら遠距離からでもマグマ竜を切断することができる。だが、斬ることができたのはマグマ竜の首だけで、魔石には斬撃を当てられていない。

 切断されて落ちた首から上だったが、吸い寄せられるように元の場所へ戻ると何事もなかったかのようにアイラへ敵意を向ける。

 マグマの巨大な顎を開ける。


「【閃条】」


 ノエルの手から雷が迸り、マグマ竜の頭部を霧散させる。

 さらに幾条もの雷が容赦なく迸りマグマ竜の体を貫いていくが、マグマを弾き飛ばすだけで中心にある岩に当たった雷も弾かれてしまう。纏っているマグマがノエルの魔力を散らしてしまい、中心へ到達する頃には威力が不足してしまう。

 魔石を破壊するなら強力な一撃が必要になる。


「メリッサ」

「私がやっても構いませんが、アイラさんのやる気を削ぐわけにはいかないでしょう」


 マグマ竜の敵意がアイラからノエルへ向いたことで、アイラには意識を集中させられるだけの余裕ができた。


「シルビア、教えて」

「次は外さないでよね」

「誰に向かって言っているのよ!」


 ――斬。

 アイラの振り下ろした剣から斬撃が飛び、マグマ竜の体を両断する。

 正確に放たれた斬撃は見えない位置にある魔石も一撃で斬り、体を維持できなくなったマグマ竜が落ちていく。


「いやぁ、最初に外した時はどうなるかと思ったわよ」

「お前が外すなんて珍しいな」

「うん。ここが火山だっていうことを忘れていて、自分の体がどうなっているのか気付かなかったのよ」


 そう言って剣を握っていた手を見つめるアイラ。

 大量の汗を掻いていたせいで剣を握った時に滑って狙いがわずかにだが逸れてしまった。だから2回目は滑ることがないよう振り下ろした。


「しかし、こいつだけは弱点が分かりやすくて助かったな」

「いえ、魔石を内包していたからこそ核を中心に何度も再生することができたのでしょう」


 上層にいたマグマの魔物は一定のダメージをマグマに与えると動かなくなった。だが、マグマ竜は魔石という核があったから何度もマグマを利用して再生させることができた。


「とにかく火山を出ることにしよう。こんな場所にいつまでもいたら死ぬことになるぞ」


 元から熱には弱いイリスが限界みたいだ。

☆コミカライズ情報☆

7月23日(土)

異世界コレクターのコミカライズ第2巻が発売されます。

ぜひ手に取ってみてください。

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