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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第47章 狂熱乱踊
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第3話 サンドワームー後ー

 サンドワームは地中を移動するが、力で掘削しているわけではなくスキルによって土を押し退けて道を作り出している。

 それゆえに掘削した時の振動は発生しない。地中から感じられるのはサンドワームが這った時の音だけだ。


「――来ます」


 シルビアの言葉を合図に上へ跳ぶ。

 直後、2体のサンドワームが地中から飛び出してくる。


「どうやらお前たちには俺が随分と美味く見えているようだな」


 地中で生活しているサンドワームの視力は低い。代わりに魔力を感知する能力が進化しており、地中にいながら地上の様子が手に取るように分かる。

 そんな体をしているためサンドワームが好むのは魔力が強い生物。

 人間離れした魔力を持つ俺は、サンドワームにとって極上の餌にしか見えなかったはずだ。上へ跳んだ俺に向かって牙が生えた大きな口を開けながら飛び上がってくる。


「おい!」

「1体は任せる」


 こっちもサンドワームとの戦闘に慣れているわけではない。


「いや、誰が受け止めるんだよ」


 ゼルゲンが言うように俺たちのパーティに盾役はいない。

 だが、足を止めるだけなら受け止める必要は必ずしも必要ではない。


「【石弾(ストーンバレット)】」


 魔法で生み出された石の弾丸をサンドワームへ向けて飛ばす。

 石弾の大きさは拳よりも小さく、サンドワームの大きさを考えれば心許ない。けれども生成する際に強度を上げ、サンドワームでも思わず歩みを止めずにはいられないようにした。

 そして、発射する弾丸の数は300発。


「ほら、止まった」


 撃ち続ければサンドワームを足止めすることもできる。


「よし、任せろ」


 ゼルゲンの掲げる楯が強い光を放つ。


 スキル【挑発】。

 対象の意識を自分へと向けることができる盾役に与えられたスキル。スキルの効果を受けたサンドワームがゼルゲンの方へと向かう。


 その間も残ったサンドワームへ石弾を撃ち続ける。

 石弾を受けながらサンドワームが睨み付けてくる。


「悪いな。これが俺たちのやり方だ。そんなにダメージはないんだろうけど、斬られてくれ」


 アイラの振り上げた剣がサンドワームの体を斬る。

 大量の血を流しているが、まだ生きている。


「チッ、しぶといわね」


 サンドワームの体に剣を突き刺した状態のまま尾の方へと走り出していく。

 切り開いた場所から血が大量に流れ、尾の先へ到着した頃には完全に息絶えていた。


「ご苦労さん」

「これぐらいなら全然大したことはしていないわ」


 剣を振って付着した血を飛ばすアイラの息は全く乱れていなかった。


「……強いな」


 ゼルゲンもサンドワームの討伐を終えていた。

 ただし、二体目の討伐は体に負担がかかったのか息を大きく乱していた。


「それなりに強いことは自負している。だから、こんな場所へ観光に来ても問題ないんだ」

「どうやら、そうみたいだ」


 実力を見せたのは俺とアイラだけだが、同じパーティで行動しているのだから少なくとも同等の力を他の者も保有していると予想してもらえたはずだ。

 実力を見せたことで彼らも納得してくれたことだろう。


「さすがに依頼内容を教えるわけにはいかないけど、俺たちは依頼である事について調べているんだ」

「ある事?」

「あんたたちは昔からここで狩りをしているんだろ」

「そうだな。他所から来た奴の中にはバカにする奴もいるけど、俺たちにとっては親から引き継いだ大事な役割だ」


 こうなると冒険者というよりも狩人と呼んだ方が正確なのかもしれない。


「……何ヵ月か前からサンドワームの数が増えたな」

「増えた?」

「そうだ。サンドワームは数が少ないから遭遇したとしても月に5体程度だ」


 だから以前は街の自衛が本来の目的だった。


「1日に3体も出てくること自体が稀なんだ」


 最近は培ってきたノウハウが通用しなくて困っていた。

 ただし、サンドワームの強さ自体は変わっていないため冷静になれば今日のような状況にも対処することができた。今日も撤退しながらも次への討伐に繋げるつもりでいた。


「気になるのは、ここにはサンドワーム以外の魔物だっている。なのに数が増えたって分かるのはサンドワームだけなんだ」

「……状況は理解した」


 どういうわけかサンドワームの数だけが増えている。もしかしたら気付いていないだけでほかの魔物も数を増やしているのかもしれない。

 けど、今の状況で最も重要なのは『魔物の数が増えている』それだけだ。


「ありがとう。あんたたちは街まで帰るんだろ」

「そうだ」

「どうやら近くに他のサンドワームもいないみたいだし、必要なら持って帰ってもいいぞ」

「いいのか?」


 俺とアイラで倒したサンドワームの所有権を放棄する。

 解体して持ち帰れば売れるのだろうが、そんなことに時間を費やすよりも先へ進まなければならない。


「貸し一つってことで納得してくれればいいさ」

「……なら、借りにしておこう」


 サンドワームを渡しゼルゲンたちと別れると火山へと向かう。

 道中、気にするのはゼルゲンから得られた情報だ。


「シルビア、お前はどう思う?」


 彼女にだけは地中にいるサンドワームの動きが手に取るように分かっていた。付近に他のサンドワームがいないのも確認済みだ。


「地中から何かを感じないか、そういうことですよね」

「そうだ」

「わたしでは何も感知することができません」


 ほかの魔物の存在も感知することはできるが、普通とは違う何らかの異常のようには思えない。


「メリッサはどう?」

「残念ながら何も感じません」

「わたしもそれらしい反応は感じられない、かな?」


 魔力感知のできるメリッサ、神気に詳しいイリスでも何も見つけることができない。


「……なら、サンドワームの増加と火竜は関係ないのか?」

「そう決めつけるのは早計でしょう。少なくとも『何か』が起こっているのは間違いないのですから」

「そうだな」


 後に俺は後悔することとなる。

 冒険者たちに貸しを作る為にサンドワームの死体を渡してしまった。だが、倒したサンドワームにこそ手掛かりがあり、冒険者たちでは気付けないことにも俺たちが解体して調べれば気付くことがあった。

 最初から可能性として提示されていれば間に合うこともできたはずだ。

7月23日(土)

異世界コレクターのコミカライズ第2巻が発売されます。

ぜひ手に取ってみてください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 他の生態に影響が出てないならワームの栄養になるなにかが増えたかワームそのものが変質したかだからなぁ……最後の一文が不穏な感じだけどどうなることやら [一言] 石弾の連撃……サンドワームの叩…
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