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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第47章 狂熱乱踊
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第2話 サンドワームー前ー

 マウリア火山。

 それは、港から北方へ50キロほど進んだ先に存在している巨大な火山。

 見た目は直径10キロメートル、標高3000メートルほどのなだらかな山だ。普通の山と比べても大きく、斜面がなだらかなこともあって噴火が起きていた大昔は港町まで溶岩が到達していたらしい。観光地として栄えることができたのも火竜の恩恵が大きい。

 その大きさと規模から、当初は溶岩が噴出して堆積し、冷えたことで周囲に大地が生まれた。

 マウリアの街は火山に土地を借りているようなもの。


「あつい……」


 暑さに耐えかねて魔法で発生させた冷たい風を体に当てる。心地よくなるものの一時しのぎにしからない。


「メリッサ、魔法でパパッと冷やしてくれ」

「無茶を言わないでください」

「私が魔法で一気に凍らせようか?」

「そんな無駄なことをしなくても大丈夫です」


 イリスなら魔法で山全体を凍らせることだってできる。だが、そんなことをすれば魔力の消費が無視できないし、凍てつかせた大地も時間が経てば溶けてしまう。

 メリッサが言ったように魔力の無駄遣いにしかならない。


「じゃあ、ノエル。雨を降らせれば多少は涼しくなるだろ」

「まあ、今よりは快適になるはずだけど、こんな場所で人為的に雨を降らせていいの?」


 ノエルの【天候操作】なら雨を降らせることだってできる。

 ただし、滅多に雨が降らない場所で雨を降らせれば後に大きな影響を及ぼすこととなる。

 緊急時以外には使い勝手の悪いスキルだった。


「地道に進むしかないか」


 長距離を移動するだけならスキルを使用してパパッと移動してしまうことも不可能ではない。

 ただし、そうできない理由が道中にある。


「よう。初めて見る顔だな」

「あ、ああ」


 暑さで意識が散漫になっていたのか話せる距離に近付かれるまで気付くことができなかった。

 そんな距離まで近付いているのに離れれば不審に思われてしまう。数日は滞在する予定なのだから現地の冒険者とは円満な関係を築かなければならない。


 話し掛けてきたのは大楯を手にした大柄な男。重装備と言えるのは大楯ぐらいで、急所を守る胸当てはあるものの日に焼けた肌を晒した部分の方が多い。

 大楯を持った男はリーダーらしく、彼の後ろには筋骨隆々とした冒険者が9人もいた。全員が同じパーティなら10人と人数の多いパーティだ。


「ああ。少し前に来たばかりで、ちょっと観光気分で火山を登ってみることにしたんだ」


 依頼を受けていることは伏せた。


「止めておけ。ここは観光で登るような場所じゃないぞ」

「ゼルゲン!」

「お、来たな」


 仲間から呼ばれて大楯を持った男――ゼルゲンが俺たちの近くから離れ、楯を構える。

 周囲には火山の荒涼とした大地が続くばかりで魔物の姿は見当たらない。

 遠くでは魔物と戦っている。だが、火山までの道には戦闘をしていない冒険者の姿が何人も見ることができ、彼らの中には緊張から身構えている者がいる。


「下か」

「はい」


 ずっと俯いたままだったシルビア。彼女には地中を移動する魔物の気配が捉えられていた。

 地面が微かに揺れているのを感じて意識を地中へ向ければ、地中を高速で移動する『何か』の存在を捉えることができた。


 直後、ミミズ型の魔物――サンドワームが地面を割って姿を現す。

 ミミズと言っても普通のミミズとは比べようがないほどの大きさがあり、平均的な大きさでも20メートル、主と呼ばれるほど強くなったのなら5倍までに成長することもある。


 今回出てきたのは平均的なサイズのサンドワーム。地中からの襲撃であってもマウリアの冒険者たちにとっては慣れたものなのか冷静に回避し、突撃してきたところを大楯で受け止めていた。


「へぇ、けっこうやるな」


 押し込まれたが、それでも楯を持つ手に力を込めてサンドワームを逆に押し返そうとする。

 鍛えられた力。なによりもサンドワームと何度もやり合ったことがあるのか、純粋な力とは異なる技術があった。

 そうして耐えている間に仲間が自分の武器でサンドワームの体を傷付ける。全員が大きな武器を所持しており、動きが止まったところへ攻撃することを想定している。

 攻撃を受けたサンドワームの体から緑色の血が流れ、やがて力尽きると倒れて動かなくなる。


「よし、今日の収穫は上出来だな」

「収穫?」

「そうだ。こいつの肉は味こそ褒められたものじゃないが、量がかなり多いから重宝されているんだ。それに肝だって薬の材料になる。1匹狩るだけで、それなりの稼ぎになるんだ」


 火山付近は農業に適していない環境な上、魔物が出没するせいで危険だ。

 こうして肉が定期的に手に入るのは島の人にとって助かるのだろう。


「でも、危険じゃないか?」


 サンドワームは簡単に倒せるような相手ではない。

 今回は簡単に倒すことができたように見えたが、それは彼らがサンドワームの討伐方法を心得ていただけにすぎない。


「ま、昔から伝えられてきた方法のおかげだ。俺もこの島で生まれ育って、親世代の冒険者から教わったことをそのままやっているだけなんだ」


 その方法を実行できるよう体を鍛えるのも止めなかった。

 島にとって兵士のような存在で感謝されていた。偶然にも手にすることができた迷宮の力に頼り、どれだけ鍛えても兵士のように強くなることができなかった俺とは全く違う。


「さあ、解体して持ち帰るぞ」


 サンドワームの弱点は、体の表面こそ硬くて攻撃が通りにくいものの、打たれ弱いためにある程度のダメージを受けると死んでしまうこと。

 その弱点のおかげで体がそのまま残っていた。

 ただし、収納リングを使ってもそのまま状態だと収納することができない。そこで体を切り分けて持ち帰るしかなかった。


 彼らは慣れた手付きで捌いていく。

 その様子を見させてもらった。何が火竜の調査に役立つのか分からないためマウリア島に関する情報は何でも収集するつもりだ。


「ゼルゲン、だったか?」

「ああ、気付いている」


 俺が注意するよりも先に気付いていたらしく、険しい表情を下――地中へと向けていた。


「全員、作業を中止だ」

「ゼルゲンさん。この反応って……」

「ああ、間違いなく次が来たんだろうな」


 地中に新たなサンドワームが現れた。

 それも複数の反応が感じられる。残念ながら地中であるせいで『複数』であること以上の情報は得ることができなかった。


「2体です」


 しかし、シルビアはしっかりと捉えられていたようで断言した。

 そうして断言する様子はゼルゲンにも伝わった。


「チッ、複数だと……!? おい、さっさと撤収するぞ」


 解体中だったサンドワームもそのままにして撤収しようとしていた。


「逃げるのか?」

「ああ。俺たちは基本的に1体ずつしか狩らない」


 基本的にゼルゲンがサンドワームの動きを止め、他の仲間がダメージを蓄積させて討伐する。

 それが彼らの討伐方法であったため、同時に複数のサンドワームを相手にする真似はできなかった。


「せっかくの獲物を置いたままにするのは勿体ないが、命には代えられないから捨て置くしかない」


 まだ解体の途中であるため収納することができたのは、本当に一部でしかない。

 1体の動きを止めている間に、他のサンドワームから攻撃されれば陣形は崩れて全滅へと繋がることになりかねない。

 だから彼らの選択は正しい。


「……つまり、1体だけならどうにかできるって言うんだな」

「ああ」

「せっかくだ。俺たちもマウリア島でのデビュー戦といくか」

7月23日(土)

異世界コレクターのコミカライズ第2巻が発売されます。

ぜひ手に取ってみてください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 熱い場所なら布面積の少ない女性冒険者が来ると思ってました……なおムキムキなおっさん10人 [気になる点] 火山って肌焼けしないようにむしろ肌は見せないイメージあるけど冒険者なら動きやすいよ…
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