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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第47章 狂熱乱踊
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第1話 火山島

本当にお久しぶりです。

火山の火竜編開始したいと思います。

 マウリア島。

 メティス王国王都の西にある大きな島で、温泉が有名な観光地だった。今のような冬は温まりに来た観光客によって島全体が賑わっている。


「……おかしいな」


 船から降りて思わず呟いた。

 島へは海を渡る必要があったが、空を飛んでの移動も俺たちなら可能だったが、そんなことをすれば騒ぎが起こるのは目に見えていたため観光者と同様に船で移動した。


 サッと見渡した程度だが、致命的な問題が起きているようには思えない。

 魔物の襲撃や環境の劇的な変化。そういった分かりやすい異常がない。


「今の私たちなら呼ぶだけでもかなりの金額が必要になります。依頼者も意味がないのに呼ぶはずがありません。ですが、何かは起きているようです」


 下船するメリッサは島を取り巻く異様な魔力に気付いていた。

 どうやら何事もなく終わる、などということにはならないようだ。


「――行くぞ」



 ☆ ☆ ☆



 マウリア島の冒険者ギルドへ入る。ギルド内にいる冒険者は薄手の服を着た者が多く、島全体を覆う熱気もあって現在が冬だということを感じさせない。

 新しい場所へ踏み入れれば、どうしても注目を集めてしまう。

 温泉で有名な場所らしい雰囲気だが、独特の雰囲気を考慮すれば『いつも通り』といった感じだ。

 そんな視線を無視してカウンターの前に立つ。


「も、もしかして……あの有名なマルスさんですか?」


 カウンターの奥にいた受付嬢が自己紹介する前に椅子から立ち上がる。


「ええと……『あの』というのがどういうのか知らないけど、俺の名前はマルスだけど……」

「失礼しました。ギルドマスターから数日以内には来てくれるだろう、と言われていたので訪れたら部屋まで案内するよう言われていたんです」


 今回の依頼人は、ここのギルドマスターだ。

 詳しい状況を確認するためにもギルドマスターから話を聞く必要があった。


「じゃあ、案内をお願いします」

「それが……ギルドマスターは留守にしているんです。なにせ依頼の要請をしてから三日しか経過していません。これまでの経歴を考えれば、こちらが考えられないほど速く到着するだろうとは予想していましたけど、実際は予想以上でした」


 目的地が温泉地と聞いて女性陣のやる気がいつもより強くなった。

 普通にアリスターからの距離を考えれば速い馬車を用意したとしても1ヵ月以上の時間がかかる。ギルドマスターは俺たちならそれでも半月程度で辿り着けるかもしれないと予想していたらしい。


 実際には三日しか経過していないため、留守にしている件に関しては早く来すぎてしまったこちらに落ち度があると言っていい。


「なんだかすみません」

「いえ、こちらこそギルドマスターが留守にしていてすみません。元冒険者なので執務室にいるよりも、問題が起こると自分の足で確かめずにはいられないんです」


 ギルドマスターが留守にしていても支える職員が優秀ならギルドの運営に大きな支障はない。


「わたしはギルドの中では若手な方ですが、込み入った事情を説明するならわたしの方が向いているので個別に対応させてもらいます」


 ギルドの奥にある個室に案内されて受付嬢――セリンからマウリア島を取り巻く問題について聞く。


 マウリア島は中心に火山がある。

 火山――マウリア火山は今も活動を続けている活火山で、山の頂上から覗き込めば煮えたぎるマグマを確認することができる。

 以前は温泉以外にも火山の観光でも商売をしていた。

 随分と商魂逞しいと感心していたが、そんなことができるのには理由があった。


「いつからかは分かりませんが、火山の内部には火竜が住み着いていました」


 少なくとも火山の観光事業が始まった100年前には火竜の存在を確認することができていた。

 火竜は人を襲うことなく火山で眠るように過ごしており、思い出したように外へ飛び立つことはあったものの数日ほどすると巣である火山へと戻ってきていた。


 活火山であるマウリア火山が観光できるのには火竜の存在が重要だった。

 火竜は生きていくのに食料を必要とせず、火山に満ちる魔力を喰らうことで生命を維持していた。そうして魔力が火竜によって捕食されたことで火山の活動は表面部分で抑えられ、周囲に温泉という恵みだけをもたらしていた。

 マウリア島で生きる人々にとって火竜は欠かせない存在となっており、一部の者は祀ってしまうほどだった。


「俺たちがアリスターのギルドで聞いたのは『火山の調査』だった」

「まさか……火竜が人を襲ったの!? なら、すぐにでも行かないと!」


 今にも部屋を出ていきそうなアイラを呼び止める。


「アイラ」

「なによ?」

「その心配はない。もし、本当に火竜が襲って来ているなら、ギルドは落ち着きすぎだ」


 ギルドの雰囲気は『いつも通り』といった様子だった。

 考えられるのは騒動を伏せているか、慌てる必要のある問題が迫っていない。


「はい。冒険者ギルドからの発表で火山から火竜がいなくなったこと、それでも火山が安定していることが知らされています。それが今から1年ほど前の話です」


 火竜の不在は島の住人にとって日常となっていた。

 そして、火竜がいなくなっても以前と変わらないため火竜の不在も忘れられようとしていた。


「ですが、そんなはずがないんです」


 火竜によって火山が安定していたのは間違いない。

 火竜が不在の現在でも火山が安定している、ということは火竜以外の要素が安定させている可能性が高い。


「冒険者の多くは火竜が不在でも『問題なし』と判断して以前と同じように活動を続けています。ですが、ギルドマスターだけは1年が経った今も独自に火山の調査を続けています」


 だが1年が経った今も調査は芳しくない。

 ギルドの掲示板に依頼票を張るなどして調査の協力を要請しているものの一般的な冒険者からの情報は芳しくない。

 だから高額であろうと『普通ではない』俺たちを雇うことにした。


「今日もギルドマスターは火山にいます。あなたたちにお願いしたいのは火竜がいなくなっても安定したままの火山の調査と消えた火竜の行方を捜すことです」


 火竜は忽然と姿を消したらしく、誰も飛び立つ姿を目撃していない。ギルドは誰の目にも留まらない場所で死んでしまったのではないだろうか、と予想していた。そうでなければ人の目があるのにドラゴンの巨体を見失った理由が分からない。


「事情は分かった。まずは火山の方から調べることにしよう」

「お願いします。宿はギルドマスターが最高級の場所を予約してくれています。吉報をお待ちしています」


 最高級。

 その言葉に心躍らせながら冒険者ギルドを後にする。

7月23日(土)

異世界コレクターのコミカライズ第2巻が発売されます。

ぜひ手に取ってみてください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新だー! そしておのれゼオンめ……え、まだわからない? [一言] 平和になったら家族旅行に来たい場所だなぁ。普通なら来るまでが大変なんだろうけども
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