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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第46章 黄昏聖浄
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第20話 VS神樹①

 翌日。

 魔力を完全に回復させた状態で神樹へと近付く。


「【炎弾(フレイムバレット)】」


 突き出した指を神樹へと向け、指先から炎の弾丸を発射する。

 真っ直ぐ炎の弾丸。森の中で使用するには危険な魔法。だからこそ……


「やっぱり邪魔してきたな」


 神樹の中からすり抜けるようにして出て来たマガトが硬化した腕で受け止め、炎の弾丸は消失してしまう。


「20連発だ」


 飛んでくる炎の弾丸をマガトが両腕を振って打ち落とす。

 小さな火の粉が地面に落ちるが、さすがにその程度の火では地面に生えている草を燃やせない。


「ムイミ」


 尾を地面に突き刺す。炎弾によって焦がされた腕が元通りになる。

 余裕があるらしくマガトは笑っている。


「【魔導衝波】」


 元に戻った腕の状態を確かめる為、顔を下へ向けた隙を衝いて飛び込むとマガトの腹に拳を叩き込む。同時に流された魔力が体内で暴発し、上半身と下半身に分かれさせた。

 マガトの上半身が地面に落ちる。だが、下半身は2本の足で立ったままで、吹き飛んだ場所から肉が盛り上がって再生が始まる。


「ムダ、だと……ドコ、イッタ?」


 再生を終えたマガトの耳に届いた走り去る足音。

 再生が完了するまで数秒の時間を要する。マガトの再生能力は神樹から与えられる力に依存しており、再生が完了するまでの間に残されたマガトの体をどうにかしたところで何もない状態からでも再生される可能性がある。

 なら、大元から絶つしかない。


「【炎弾】」


 何百発という無数の炎の弾丸を放ちながら走る。

 炎の弾丸の前に地中から飛び出して来た神樹の根が立ちはだかり壁となる。

 後ろから翅を広げたマガトが迫る。尾は地面から出た根と繋がれており、力が使い放題になったおかげで遠慮なく真っ直ぐ突っ込んでくる。


「ぐぅ……」


 振り向きながら突っ込んできたマガトへ拳を叩き込む。

 少しでも早くどうにかしようと焦っていた相手を殴るのは簡単だった。


「片手間な攻撃じゃ神樹には届かないか」


 蹲ろうとしていたマガトを蹴って後ろへ飛ばす。


「ダメージはあるだろうけど、どうせすぐに再生するんだろ」


 俺の言葉は正しく、すぐにマガトは何事もなかったように平然と立ち上がる。

 最初は表情の乏しかったマガトだが、冒険者やリヒデルトから生命力を吸収した際に知識を得ている。ただし、賢くなった代償に表情の乏しかった顔に感情が露わになるようになっている。

 普通は問題にならないが、マガトのように力を守る為に求められている者にとっては足枷になっている。なにより抑える術を知らないせいで、何を思っているのか顔を見られるだけで筒抜けになっている。


「ソレがわかっていて、ナゼたたかいをツヅケル?」

「再生能力を持つ相手への対処法なんて限られている」


 再生も何らかのスキルに頼っている。

 そして、スキルなら使用する度に魔力や瘴気が消費されることになる。

 戦いを続けていれば、いずれはスキルの使用に必要な魔力や瘴気が尽きて再生もできなくなる。決して無敵などではない。


「わかっていないナ」


 ただし、消耗戦への弱点をマガトは解消している。

 尾と神樹の根が接続されている。おかげで神樹から供給される膨大な量の瘴気――神気を利用して再生させることができている。


「お前に与えられる神気が無限に近いことは知っている」


 なにせ妖精郷のある神樹によって維持されている。

 範囲が限定されているとはいえ、世界を維持できてしまうような存在からの力の供給。いったい、いつになったら尽きるのか分からない。


「昨日、俺に尾を斬られたことから対策を練ったことは褒めてもいい」


 今も地中ではマガトの尾と繋がろうと狙っている根がある。

 再び切断したところで神樹の方から繋がろうと根を伸ばし、膨大な神気を送り込んで死んだ状態から再生させる。

 向こうも俺との戦いが最後になると分かっている。だから、倒された状態から多くの神気を消耗すると分かっていながらマガトの再生に力を注ぐ。


「どうやら、お前以外の特殊な貪食蟻はいないんだな」


 それだけが懸念だった。

 こんな強い相手を何体も相手にしながら神樹をどうにかする術は思いつかなかった。


「ソウダ。オレ、だけが『特別』なんだ」


 特別。その言葉に強い思い入れがあるのか強調されていた。


「なら、しっかりと守れよ――【炎壁(フレイムウォール)】」


 魔法によって炎の壁が出現する。

 幻覚などではなく、実際に燃えている炎であるため瞬く間に森を燃やし尽くす勢いで広がっていく。

 これなら神樹まで届かせることもできる。


「……正気カ!?」

「早くどうにかしないと森が……神樹が燃えることになるぞ」

「……」


 一瞬だけ迷ったものの神樹の方へと駆け出すマガト。彼にとって何よりも優先させなければならないのは神樹の防衛。

 走るマガトの腕が大きく膨張する。大きさと重さは、そのまま破壊力となって地面を大きく吹き飛ばし、衝撃によって森を燃やす炎も搔き消される。マガトが燃えている森を消火する手段なんて限られている。


「ギィ!」

「おっと動くなよ。森が完全に燃え尽きてしまうのは俺も困るけど、ある程度は燃やしてしまう許可は得ている」

「キサ……!」


 後ろから羽交い絞めにして動けないようにする。


「母ヨ」


 マガトへ神気がさらに供給される。

 どういう構造をしているのか知らないが、供給される量に比例してマガトの体も大きくなる。

 人間の1.5倍に相当する大きさにまでなる。

 正直言ってこんな相手の動きを抑えておくのは辛い。


「【電撃(エレクトリック)】」


 体に纏うように放たれた電撃。

 接触しているおかげでマガトが電撃をまともに受ける。マガトのステータスを考えれば体を一時的に痺れさせる程度の威力でしかないが、ある程度の時間だけ身動きを封じるだけなら十分な威力だ。

 突き飛ばして倒れたマガトの体に神樹の根が刺さる。

 今の状態のマガトに炎をどうにかするだけの力はない。


「ギィィィィィ!!」


 吠える。

 仲間に意思を伝える為のものだったが、伝える先は他の貪食蟻ではない。


「お」


 地面が揺れているのが足を伝って分かる。

 すぐさま空へと飛ぶと地面を割って地中から大量の根が飛び出してくる。

 隔絶された世界で地震は起こらない。しかし、地中にある大量の太い根が蠢けば地震と似た災害は起こる。


「ま、そうするしかないよな」


 燃えている範囲をマガトが認識し、それを神樹へ伝えることで地中の根が飛び出してきて炎を消す。

 森の草木を燃やしていた炎だったが、太い神樹の根まで燃やすことはできず、微かに燻っていた部分も他の根に叩かれて消されてしまう。


「残念ダッタナ」


 これでも神樹まで届くことはなかった。

 いや……


「これで十分らしい」

「……?」


 マガトは俺の言っている意味が分かっていない。

 そもそも最初――俺が一人で姿を現した時点で、他の仲間が何をしているのか気にするべきだったのにマガトは一切の注意を払っていなかった。


「――やれ」


 神樹の近くに飛んできた1本の錫杖が突き刺さる。

 ノエルが投げた錫杖で、スキルを発動させる為の起点にしていた。


「!?」


 揺れた地面にマガトが立っていられず膝をついてしまう。

 神樹の根による地震に似た現象などではなく、スキルによって引き起こされた正真正銘の災害。


「陥没」


 地震によって神樹を中心とした広範囲の地面が陥没する。露わになった地中には飛び出していなかった神樹の根が見える……いったい、どれだけの根があるんだ?


「まあ、いい。これで計画を第2段階に進めることができる」

「計画?」

「――神樹の移植計画だ」

本来なら森での戦闘で禁じ手の炎を使ってしまっていますが、マガトや神樹なら必ず消火してくれるだろうと信じているし、ダメだった時には地震で一気に消してしまう予定でいました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゼオン「世界を維持出来る神樹を移植するんだって?協力しようじゃないか」(ニッコリ) よく異世界の魔法で火魔法は森の中では厳禁ってあるけどよほど火力が高い場合じゃないも生木とか燃えそうにない…
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