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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第46章 黄昏聖浄
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第19話 妖精郷の真実-後-

「なぜ、妾が何かをしたと?」

「少なくとも、この世界が人工的なのか、それとも人為的なのかはわからないけど何らかの力によって生み出されたのは間違いないと思っている」


 根に原因があると分かった直後にメリッサは神樹周辺の土を掘り返し、シルビアも手伝っていた。

 結果、根元に近い部分で白い綿のような物がいくつも見つかった。

 錬金術に詳しいメリッサと植物を個人的に育てているシルビアの二人に言わせれば、別の環境へ無理やり置かれたことによるストレスが原因の病気らしい。


 つまり――植樹による被害。

 神が植えたとされる神樹に普通の植物の病気が当てはまるのか分からない。ただし、適用される可能性はある。


「……少し、昔話をしよう」


 アルバの口から語られるのは伝承で、一般的には知られていない魔力災害が発生した際の出来事。だが、聞いている者の中には伝承ではなく、実際に起こった事だと知っている者がいる。

 始まりは、遠距離との通信に不調が来すようになったことだった。当時は魔力を利用して遠方とやり取りできる技術が確立されていた。


 そんな当たり前ができなくなった。

 次第に生活を支えていた魔力によるエネルギーも不足するようになる。

 人々が災害の厳しさに気付いたのは全てが手遅れになった頃だった。そうなると人間に残された選択肢は、神が用意した迷宮へ行き地下へと潜ることか、異常を来した魔力がある地上で死を迎えるぐらいだった。


「妾は、ある国を治める女王だった」

「ちょ……まさか当時の人間なのか!?」


 俺の問いにアルバが頷く。

 何らかの方法によって当時の記憶を受け継ぐなどして重要な情報を知っている、程度にしか思っていなかったため驚かずにはいられなかった。

 ミエルも驚きから口を開けっぱなしにしている。妖精郷にいる妖精もアルバがそんなに長生きだとは知らなかった。


「安心しな。当時から生きているのは妾だけだ」


 それだけの長命はエルフでも不可能だ。

 妖精の中でも特別な加護が働いている。


「これは神樹を利用しようとした妾への呪いだよ」

「呪い?」

「神樹がどうやって植えられたのか知っているかい?」


 そういえば知らない。

 俺が知っているのは、神樹が環境の浄化を目的にしていることと、神が植えたことぐらいだ。

 誰が、何を目的にしたのか。

 それだけ分かっていれば十分だと思っていた。


「その頃になると人が次々と倒れていった。遠くを確認するのも古い時代の道具に頼って肉眼で探さないといけない」


 文明が廃れていく状況に人々は苦労していた。

 何か希望になる物を探していた人々が目にしたのは、数十日に一度だが空から落ちてくる隕石だった。


 その隕石に見えた物こそ神樹を発芽させる種だった。

 種の落ちた場所には巨大なクレーターができ、魔力災害によって異常を来した魔力を吸い取って神樹は数日で今と変わらない大きさにまで成長する。そうして周囲の環境の浄化を開始していた。


 そうした光景を人々は双眼鏡で見ており、学者たちは利用するべきだと女王へ進言し、報告を受けた女王も承諾した。


「少しして妾の国にも神樹の種が落ちた。だが、落ちた場所は首都からかなり距離が離れていたんじゃ」


 墜落する前から場所を計算していた学者たち。

 その場所では、利用するのも難しくなってしまう。


「だから移動させることにした」


 墜落地点へと赴き、発芽が始まって根を張り始めたばかりの神樹の周囲を掘削して首都の近くへと移動させる。

 首都の近くで成長を始めた神樹は、かつての文明を取り戻す勢いで環境の浄化を始めた。


 誰もが喜んで笑顔になった。

 これで、かつての栄華を取り戻せるかもしれない。


「だけど人間が勝手に神の植えた樹を移動させるなんてやっちゃいけないことだったんだ」


 神樹が完全に成長した頃から倒れる人々が続出した。

 浄化されて高純度の魔力が満ちるようになったことで肉体が適用にできずに倒れてしまう。

 無理やりにでも適用したのがエルフだ。


 神は、神樹を人の生活圏から離れた場所に設置した。それは、こうなることが最初から分かっていたからだ。それをアルバたちは自分たちが利用する為に、自分たちにとって都合のいい場所へと移動させてしまった。


「自業自得。そう言われれば仕方ないけど、何も知らなかった頃の妾たちがやったのはそれだけじゃないんだよ」


 貴重な素材が得られたことで一部の学者が効率的に環境を浄化する術を見つけようとした。

 神樹そのものをどうこうする術は見つからなかった。


 しかし、神樹の力が適用される範囲を【空間魔法】で限定することで効率を引き上げることに成功した。


「ある空間にのみ滞留し続けた魔力は、人間をエルフに進化させるんじゃなくて妖精にまで存在を引き上げることになったんだよ」


 それが妖精誕生の秘話だった。

 さらに神樹の影響を受けていた土地は、時空の歪みへと引きずり込まれて、今の妖精郷がある世界を形作ることとなった。


「気付いた時には、妾の国はこんな鎖された世界へと変わり果てていた」


 アルバが生かそうと思っていた人々の多くは、妖精へと転じた時の影響で耐えられずに亡くなってしまった。

 耐えられたのは、若い女性だけ。

 だから生き残った若い女性学者と共に神樹を頼り、新しい命が神樹から生まれるようにした。

 国は亡くなってしまったが、そこに生きる人々だけは生かしたい。


「妖精郷がこのような世界なのは、全て女王であった妾が世界を浄化する為に送られた神樹を自分たちだけの為に利用したことが原因だ。そしてこの体は、その罪に対する罰だ」


 アルバ以外の妖精はエルフと同様に200年ほどで寿命を迎える。

 しかし、アルバだけは何千もの時間を老いた姿のまま生き続けることとなった。妖精になったことで自ら死を選びたくても、どうすれば死ぬことができるのか分からないため地獄のような日々を生き続けなければならなかった。


 額を手で抑えて俯いている。

 彼女は自分と同類である妖精にも事情を説明することができなかった。ずっと後悔していたが故に、誰かに言いたかったが、言ったところで妖精の生活が変わることはない。


「じゃあ、あの貪食蟻は……」

「妖精郷も最初はもっと広かった」


 神樹は世界を浄化する為の装置だった。

 対して妖精郷のある世界は狭すぎる。

 純度の高すぎる魔力に世界そのものが耐え切れず、徐々に崩壊するようになっていた。


「それが少し前から崩壊の速度が加速していった」


 神樹が選んだ手段は、生み出した魔物に魔力を食わせ、少しでも消耗させることだった。

 その為に用意されたのが『貪食蟻』だった。


「あの蟻は神樹が生み出したもので、妖精郷に危害をくわえる存在だった」

「そん、な……!」


 ミエルが強くテーブルを叩く。

 数日の襲撃で貪食蟻に倒れた仲間は何人もいる。だが、貪食蟻の存在を求めていたのは妖精が信仰とする神樹だった。


「どうして教えてくれなかったんですか!」

「教えたところで無意味だからだ。神樹は妖精を邪魔だと判断し、滅ぼすことを決定した。だが、妾たち妖精は神樹の加護がなければ生きていくことができない。それは神樹に呪われた妾たちも同じだ。神樹を破壊すれば蟻の侵略は止まるだろうが、数時間と経たずに死亡してしまう」


 エルフ以上に強い加護を受けている。だが、あまりに強すぎたため神樹から離れてしまうと亡くなってしまう。

 俺たちを招いたのもミエルたちを諦めさせるのが目的だ。


「じゃあ、そろそろ説明させてもらおうか」

「なに?」

「神樹を破壊することなく、妖精が生きていける手段を用意してやる」

「そんなこと……」

「その代わり、依頼内容が変わるんだから報酬にも手を加えさせてもらおう」

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― 新着の感想 ―
[一言] 迷宮核「なんだか仕事を押し付けられそうな気がする……」 海に出た妖精は大陸の反対側に辿り着く前に消滅したのかな?
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