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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第46章 黄昏聖浄
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第4話 門番との決闘-前-

「へぇ、アタイを倒すつもりでいるのかい?」

「もちろん」

「……いいだろう。アンタと戦ってやるよ」


 相手は戦う気になったらしく、地面に突き刺していた剣を抜く。

 一方、俺はアイラの急な行動に気が気でなかった。


『おい、どういうつもりだよ』


 表情は冷静なままに念話で尋ねる。

 周囲に多くの人がいる状況は本当に便利なスキルだ。


『相手は普通の人間じゃないんだぞ』

『うん、なんとなくわかるよ』

『なんとなく?』

『なんか気配が微妙なんだよね。獣人やエルフとも違う、かと言って神とかとも違うんだよね』


 アイラが言うように気配も人間に似せているだけで微妙に違う。

 その事に気付いているのはSランク冒険者の中にもいない。まあ、神と遭遇したことがあるのはSランク冒険者でも滅多になく、遭遇した場合には逃げるしか選択肢がない。

 経験がなければ比較することもできない。


「そっちの兄さんの方が強いんじゃないかい?」

「そうだね。マルスの方が強いよ」

「だったらそっちに任せな。アタイは弱い奴と戦う気はないよ」

「そう言わずにやろうよ」


 アイラの姿が消える。


「……っ!?」


 門番は気が抜けたまま正面にいるアイラを視界に捉えただけだったため、一気にトップスピードへと至ったことでアイラの姿を見失ってしまった。

 もうアイラの挑戦を門番は受けた。フライングなどと言わせるつもりはない。

 一瞬で駆け抜けたアイラが門番の手前で急停止し、頭上へ掲げた剣を鋭く振り下ろす。

 大きな剣を構え、門番がアイラの振り下ろした剣を受け止める。


「くぅ……!」


 アイラの持つ剣は長剣だ。しかし、門番の持つ剣と比べればサイズに大きな差がある。

 その差を見ればアイラの持つ剣の方が壊れたとしてもおかしくない。

 しかし、門番の剣の方が浴びせられる力に対して必死に耐えていた。


「こいつ……」


 ステータスはアイラの方が高い。それでいながら力を十全に発揮することができる使い方をしている。

 門番も相当強く、大きな剣を振り回せるだけの実力がある。

 だが、それだけでしかない。


「だったら!」


 1歩前へ踏み込んで門番が鍔迫り合いへと持ち込む。

 お互いの顔が相手の刃に触れそうな距離まで近付く。


「おい、止めないと!」


 隣にいるラエドが叫ぶ。

 ラエドが挑戦して、敗北してしまったのも同じ門番だった。


「大丈夫だ」


 仲間である俺や眷属、それにアイラの実力を知っているヒースは落ち着いていた。


「あいつは負けない」


 門番の実力は他の者も含めて高いことが分かった。

 なら、情報を集めて倒し易い相手を探すことに意味なんてない。


「これならどうだ!」


 門番の体から魔力が噴出する。

 拮抗していた力が崩れ、アイラが後ろへ押し込まれる。


「うん」


 いきなり門番の力が強くなった理由にアイラは納得した。


「身体能力の強化か」


 門番は舌打ちしたい気分に駆られた。たった一度だけ、それも強化したのは僅かで、時間も短かったのに見破られてしまった。

 俺やメリッサも気付いている。既に門番が決闘している姿を見た者も大きな剣を振り回す姿から気付いていた。


 身体能力強化。

 魔力を肉体へと行き渡らせることで身体能力を向上させ、肉体に纏うことで一部分の防御力を上げることもできる能力。魔力を多く持つ戦士なら必須技能と言ってもいい能力だ。

 門番が使用したのも何の変哲もない強化。


 ただし、気になるのは……


「疲れた様子がない。それに魔力の使用に淀みがないな」

「それは、主が表面的な部分しか見ていないからです」

「うん。内側はちょっと雑かな」

「……どういうことだ」


 メリッサとノエルの言葉の意味がわからず聞き返してしまうが二人とも答えてくれない。

 いじわるをしているわけではなく、ここには他の者もいる。迷宮同調でこっそり聞いてもいいが、答えを知ってしまうと反応に出てしまう。Sランク冒険者たちに知られない為にも知らない方がいい。


「答えを知ってしまうのはアイラさんが嫌います。今のアイラさんは戦闘中です。彼女の方で念話を調整する余裕があればいいのですが、今は決闘の方に意識が向いているみたいですから余裕なんてないでしょう」

「あ、そっちか」


 迷宮同調による念話は主と眷属間で距離に関係なく会話を可能にできるスキル。基本的には全員が聞くことができるが、個人の意思で聞かないよう、聞かれないようにすることはできる。

 問題となるのは今のアイラに聞かないようにするだけの余裕がないことだ。


「今のところは余裕だろうけど、熱中しちゃっているからな」


 アイラの瞳が輝いていた。久しぶりに一般人が相手で、それなりの力を出すことができる。


「そういえば決闘だっていうのに聞いていなかったね」

「何を?」

「アンタの名前を教えてくれる?」

「アイラよ」

「そう。アタイはミエルだ」


 門番――ミエルが剣を横に振るう。

 左から迫る剣は大きさに比べて速いもののアイラの本来の実力なら後ろへ跳んで回避するのは簡単だ。


 だが、簡単な手段を採るつもりがないのか聖剣を盾にしてミエルの剣を受け止める。


「な、に……!?」


 受け止めるだけに終わらず、聖剣を滑らせながら前へと進む。

 前――ミエルへ届く距離まで近付くと飛び掛かって顔を蹴り上げる。


「……うん?」


 蹴り上げた瞬間、アイラは奇妙な感覚を覚えていた。

 だが、それは保留にして足が地面に着くよりも先に聖剣を振ってミエルの剣を持つ手を斬り上げる。


「なるほど」


 蹴り上げた時は正確にわからなかった。だが、剣士である彼女は剣で斬った時の方が相手の状態を正確に知ることができる。

 だから剣が地面に落ちるよりも先に知ることができた。

 ミエルの持っていた剣が落ちる音が響く。多くの人が落ちた剣に注目するが、剣を握っていたはずの手はない。たしかにアイラが手首を斬ったからこそ剣は地面に落ちたはずだった。

 そうなればミエルの手に注目が集まる。

 そこには無事な手があった。


「蹴るなんて卑怯じゃない」

「別に剣で決闘するなんて言っていないでしょ。これはあたしとあんたの決闘なんだから。で、どうするの?」


 ミエルの剣はアイラの隣に落ちている。再び手にするようなことを決闘相手であるアイラが許すはずがない。

 もちろんミエルもそんなことは分かっている。


「問題ない。アタイの武器が一つだけだと思ったら大間違いだよ」


 腰に手を当てると隠してあった2本の短剣を手にする。

 左右の手にそれぞれ短剣を持つとアイラと対峙する。


「へぇ」

「なんだ?」

「ううん、べつに」


 なんでもないように言うアイラだったが、何を言いたいのか後ろから見ていた俺たち仲間には理解できた。

 短剣を手にしたミエルの構えはシルビアの構えに酷似していた。2本の短剣という武器も同じだ。


「――行くよ」


 颯爽と駆けたミエルが2本の短剣を振るう。

 だが、ミエルの攻撃全てをアイラは捌いていた。


「どうやら多少は力を出しても問題ない相手みたいだからね。久しぶりに相手をしてあげる」

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