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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第46章 黄昏聖浄
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第1話 侵入できない遺跡

3月は更新を続けたいと思います。

残念ながら年末年始は忙しかったため3割ほど書けていませんが、繁忙期も過ぎたので大丈夫だと思いたいです。

 冒険者ギルドを訪れる。

 今は冬で、雪まで積もっているため多くの冒険者が外での活動を控えている。依頼の受注そのものを控えるようになるが、冬に備えて貯蓄を怠っていた者は寒い状況でも依頼を受けなければならない。

 だが、アリスターには幸いにして近くに迷宮がある。少しの間だけ寒いのを我慢していれば環境が一定に保たれている迷宮へ行くことができる。


 今も何人かの冒険者たちが必要とされている素材を調べにギルドを……


「おい、今回もダメだったのか!?」

「ああ、そうらしい」

「クソッ、これで6回目だぞ!」


 予想よりも多い冒険者がギルドにいた。

 しかもギルド内にいるのは貯蓄が十分にあるはずの高ランク冒険者の方が多い。例年なら自分の家や借りている宿で体が鈍らない程度に籠っているはずだ。


「今回はウチからも人が行っているんだぞ」

「Aランクの冒険者のヒースだろ」


 辺境にある都市でありながらアリスターには複数のAランク冒険者がいる。

 近くに迷宮があり、様々な魔物が出現する辺境であるため冒険者の需要は多いためだ。

 ヒースさんも以前からアリスターを拠点にしている冒険者。格闘を主体にした討伐依頼を得意とした冒険者で、以前に依頼を一緒に受けたこともある。


「他にも何人か行っていたみたいだけど……」

「ヒースに無理だったんなら他の奴にも無理だろ」

「こんなことができるのは……」


 そこでようやくギルドにいた者たちが入ってきた俺たちの存在に気付いた。


「うわ、めっちゃ注目されているじゃん」


 今日の同行者はアイラ。

 彼女も剣士として破格の強さを持っているため有名で注目されることもあるが、今向けられている視線が普段と違うことに気付いた。


 期待、羨望。

 何かが起こっていることだけは間違いないようだ。


 見られながらカウンターの前へ進むとルーティさんが手招きしてくれた。


「君はほんとうにちょうどいいタイミングで来てくれるわね」

「ちょうどいい、って……俺たちはイシュガリア公国から帰ってきたことを報告しに来ただけですよ」


 『聖女』であるミシュリナさんに頼まれてイシュガリア公国を訪れた。問題そのものは数日で片付けることができたが、その後の歓待や迷宮の調整などもあって帰還の報告が遅れてしまった。

 冒険者が拠点にしている街へ帰ってきた場合には報告する義務がある。それというのも緊急の依頼があった時に戻って来たことを知らなければ依頼することすらできないからだ。

 とはいえ冒険者にも休息や事情がある。数日ぐらいなら問題にならない。


「今回も稼いできたんですか?」

「いや……」


 色々と得られたものはあった。

 ただし、冒険者が求めているような報酬は得られなかったため誤魔化すしかなかった。


「それよりも何かあったんですか?」

「実はマルス君たちが出て行った後で遺跡が見つかったという報告があったんです」


 遺跡。

 唐突に空間が歪んで向こう側にある別の世界と繋がってしまう。繋がった先は財宝の眠る施設である場合が多く、信じられないほどの利益を(もたら)してくれる。ただし、同時に危険な場所でもあるため探索に慣れた冒険者に依頼が出される。

 イリスと会ったのも初めて遺跡を訪れた時だった。


「この近くなんですか?」


 遺跡探索は、遺跡が見つかった場所の近くで一定以上の規模を持つ冒険者ギルドが管理することになっている。都市のギルドでも、その街の冒険者だけでは人手が足りなく、近くの街にも声を掛けることになる。

 多くの冒険者が集まる遺跡。誰かが管理しなければ、多くの財宝を巡って揉め事が起こるためだ。


「いえ、遺跡は王都からそれほど離れていない場所です」


 だから最初は王都と近くの街に声が掛けられ、いつものように遺跡の探索へ乗り出そうとした。

 そのため最初はアリスターにまで声が掛けられることはなかった。


「今回は問題が発生しました」

「失敗でもしたの?」


 アイラの問いにルーティさんが首を横に振る。


「そもそも遺跡へ入ることすらできませんでした」


 ルーティさんの話によれば、トラブルを避けるため次元の歪みを通る前に王都で落ち合ってから向かうことにした。王都の近くで発生するのは100年近くなかったことだったため慎重になっていたからだ。


 ところが、いざ次元の歪みへ進もうとしたところで向こう側から人が次元の歪みを通って現れた。


「え……次元の歪みって通れるんですか?」

「私も滅多に聞いたことがありません」


 以前のゴーレムの遺跡を訪れた時もゴーレムが次元の歪みを通って襲撃を受けたことはあった。

 ただし、あの時は一度侵入したことで遺跡が警戒状態になっており、強い力を持つ俺たちが近付いたことで迎撃の為に出て来た。

 基本的に遺跡の中にいる存在が、こちらにまで出てくることはない。


「ですが、向こうの目的は分かっています」


 遺跡から出て来た存在は、見た目は人の姿をしており、念話に近いスキルを持っているためか頭の中に翻訳された言葉が響いてきた。

 そのため向こうの要求は判明していた。


「どうやら現れたのは門番みたいなんです」

「門番?」

「はい。向こうの要求は『強い者を呼べ』らしいです」


 強い者を呼べ。

 強い者なら入ることを拒まないが、弱い者を入れる気は全くない。

 そこで次元の歪みの前で門番のように立ち、実力を試すテストを全員に対して行っていた。向こうもテストを何日も行っていれば消耗する。しかし、交代の要員も後から送られており、全員が王都から派遣された冒険者よりも強い。


 門番を倒せなかった王都の冒険者ギルドは、利益を捨ててまで中へ入ることを優先させた。即ち、もっと広い範囲にまで応援を要請して高ランクの冒険者に来てもらって対処することにした。

 ただし、今のところ門番を倒すことに成功できておらず、アリスターから派遣されたAランク冒険者であるヒースも失敗してしまった。


「それで俺たちに行ってほしいということで依頼が出たんですね」

「そういうことです」


 行くのは構わない。ただし、今はゼオンへの対策を優先させたかった。


「遺跡」

「どうした?」

「いいんじゃない」


 これから予定を伝えようとしたところでアイラから念話が届く。


『どうするつもりなのか分かっている。けど、どうやってゼオンの奴を倒すのか決まっていないんじゃない?』


 新しく手に入れた【世界】の能力。

 迷宮の環境を現実にも適用させられる能力で、ゼオンを倒せるだけの環境を適用させる。


 問題はどうやって倒すのか、ということだ。

 まだゼオンを倒せる環境は見つかっていない。


『向かう先が遺跡だっていうなら何かヒントがあるかもよ』


 アイラの言うとおりだ。

 自分たちで頭を唸らせているよりもヒントを求めて外へ出向いた方がいい。


「いいですよ。その依頼を受けます」

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[良い点] ここで遺跡が出てくるか……さて、どんな世界につながっていることやら [一言] いいね押させてーー!!
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