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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第45章 消失都市
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第21話 消滅都市への思惑

「どうして、お前がここにいる!?」


 リオがゼオンに掴み掛ろうとする。しかし、伸ばした手が空を切る。目を離した覚えもないのに気付いた時にはゼオンの位置が僅かにだがズレていた。

 異様な様子に主を心配してカトレアも駆け付けてくる。


「歪魔を放置していていいのか?」

「いいわけないだろ」

「そうだろうな。いくら冒険者として活動していたとしても救援に駆け付けた皇帝が働かないわけにはいかない」


 それも他の冒険者に敵意を向けている。

 ゼオンの素性などを知らない者が見れば、リオが他の冒険者の行動を阻害しているようにしか見えない。それも目の前にいる相手の胸倉を掴むことができない、という頓珍漢な行動だ。


「これ以上の恥を晒すのは皇帝としてマズいんじゃないか?」

「くっ……」


 指摘されリオが引き下がる。

 だが、今回の事件の犯人と思しき相手を放置するつもりはない。


「悪いが今回の件は俺にも想定外だ」

「なに……?」

「街を転移させ、空間が歪んでしまうほどの力場が発生する」


 ここまではゼオンの想定通りだった。

 しかし、そこから先は予想していなかった事態が続いた。


「俺の想定なら、すぐに元通りになるはずだった」


 街を転移させる前に小規模な転移でテストを行っていた。さすがに街ほど巨大な物を転移させるとなるとゼオンの力だけでは不足している恐れがあったため迷宮の力を借りることにした。

 もしかしたら迷宮の力を借りたのが悪かったのかもしれない。


「俺の予想に反して数日が経っても空間が元通りになることはなかった」


 さらにマルスたちが介入したことで悪魔が生まれ、空間の歪みが拡大することとなった。

 トリオンが生まれる前の状況を見ていたゼオンには拡大していくことが予想できていた。ただし、それは今とは比べ物にならないほどゆっくりしたものだと思っており、メルストへ到着するのも自然に拡大しているだけなら数年は先の出来事だったはずだった。

 それが悪魔の介入により信じられないほどの速度で拡大している。


「今はメルストまで吞み込まれるのは困る。いや、もう向こう側は困ってしまうほど混沌としている」


 現在はゼオンの望んだ状況ではない。

 だから……


「協力はしてやる」


 外壁の上に立ったシャルルの射った矢が歪魔の頭部を吹き飛ばして絶命させる。

 直撃する前に空間の歪みが発生して矢を防ごうとしたが、耐えられないほどの威力があったため止めることができず、動きを止められている歪魔は逃げることもできなかった。

 だが、倒れた歪魔の隣に新たな歪魔が2体出現する。


「クソッ、やっぱり倒しても倒してもキリがないぞ」

「そうだな」

「そうだな!? こんな無駄な事を繰り返して何になるっていうんだ!」

「そうだ。ここでの戦闘は無駄でしかない。この戦いを終わらせるなら、大元である悪魔を倒さないといけない」


 トリオンが次々に援軍を送ってくるため尽きることのない戦いをしなければならない。

 終わらせる為にはトリオンの討伐が不可欠となる。


「それでも街へ行かせたくないなら倒し続けるしかないんだよ」


 戦っていれば歪魔の注意を惹くことができる。

 それは、事前に取り決められていた通りだ。


「協力してお前にどんな利点があるって言うんだ?」


 ゼオンが協力してくれようとしているのは間違いない。

 だが、協力してくれる理由がわからない内はリオから疑念が晴れることはない。


「俺の目的は、この状況を鎮めることだ」

「……信じていいのか?」

「ああ。利害が一致している間は協力してやる」


 拳を握りしめてリオが歪魔に向かって駆け、カトレアもサポートするべく同じように駆け抜ける。

 離れた場所で状況を見守っていたテオドアに詳しい事情がわからない。だから、自分の役割を果たす為にリオを追い、ゼオンの隣に栗色の長い髪を腰まで伸ばした美女が現れたところまでしか見ていなかった。


「よろしいのですか?」

「そんなにあいつらに協力するのがマズいことか?」

「ええ、そうですね。想定外の事態が起きてしまいました。テストの段階でこのような問題が発生してしまいますと今後の計画も見直さなければなりません」


 栗色の髪の女性――テュアルの見つめる先では少女にも見えるリュゼが歪魔を相手に無双している。彼女の剣戟の前では空間の歪みなど壁にならない。

 自分たちなら歪魔を倒せる。

 最初からわかっていたことだったが、証拠となる光景を見て安堵していた。

 だが、自分たちが介入しなければメルストまで歪魔が到達された可能性が高いことも理解していた。


「だからこそ、だ。俺たちの障害となるような問題は少ない方がいいだろ。都市がさらに向こうへ移動したら、お前の負担が増えることになるんだ。そっちにばかり構っていられないんだから手を貸した方がいいだろ」

「気遣っていただけるのはありがたいです」


 今も歪魔に魔法を放ちながら、テュアルは別の作業を行っていた。

 あまり歪魔を増やしてほしくないところだが、歪魔を消耗させるのが最もマルスたちの役に立てるとわかっているだけに受け入れるしかない。


「ですが、私が気にしているのは彼らと接触する可能性があることです」

「それは問題ない。あいつは俺が近くにいることに気付いていた」


 マルスはゼオンの介入に気付いていた。ただし、姿を見たわけでもないし、痕跡があったわけでもない。ただ近くにいる、という思いだけがどこかにあって確信を持っていた。

 そして意図した問題でもない、と判断した。


「こっちを気にしながらもどうこうするつもりがなさそうだった。あいつなら悪魔の討伐も含めてこっちの思い通りに動いてくれるだろ」

「ええ。そうなってくれないとこちらも困ります」



 ☆ ☆ ☆



「本当によかったのですか?」


 ドードーの街が目前に迫った所でシルビアが声を掛けて来た。

 何が言いたいのかは分かっている。彼女ならおそらく気付いていたはずだ。


「ゼオンか?」


 誰かに見られている感覚はあった。ただし、どこから監視しているのかわからなかったため行動に移すことができなかった。

 だが、敵意のようなものは感じなかった。


「放っておいても大丈夫だろ。どうやら歪魔はあいつらにとっても邪魔な存在らしいからな」


 監視をしていたのは、おそらく間違いない。

 詳しい目的はわからないが、こちらの動向を気にしていた。


「こっちはこっちで仕事を終わらせるぞ」


 ドードーの街の外壁があった場所を越えた瞬間、上空から5発の歪励弾が飛んでくる。

 敵の攻撃を把握するよりも早く走る足を止める。

 眼前を歪励弾が通り過ぎて地面を落ちて行く。


「出てこい。隠れていたところでこっちには位置がバレバレだぞ」

「ホント、やりにくい相手だね」


 グニャリと歪んだ空間の向こうからトリオンが姿を現す。

歪曲悪魔とのラストバトル……といきたいところですが、既に対抗策を用意しているため戦闘と呼べるものになりませんでした。

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