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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第45章 消失都市
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第1話 消えた都市の調査依頼

ちょっとリアルが忙しくストックが20話しかできていませんが、45章の7割はできているので11月は投稿したいと思います。

 屋敷の外を見ると雪が降り始めていた。

 寒さを考えれば外出を控える人の方が多そうだが、外から子供たちの陽気な声に混じって男性の活気に溢れた声も聞こえてくる。

 アリスターのあるアーカナム地方では雪が降る頃になると、この時期にしか現れない魔物が見られるようになり、そういった魔物は肉や素材が貴重なこともあって高値で取引される。

 本格的に寒くなる前に稼ごうと冒険者たちが動き出していた。


 他にも辺境でしか得られない商品を冬になる前に買い付けようと多くの商人が訪れている。

 これから数日間は活気に溢れることになる。


「随分と賑やかですね」


 応接室のソファに座ったミシュリナさんが窓に目を向けながら口を開いた。


「あなたたちは行かないのですか?」

「もう何年も前からアリスターにいますから顔と名前、それからどれくらいの強いのか知れ渡ってしまっているんです。今さら少しばかり高値で取引される獲物を他の冒険者から獲ろうとは思いませんね」


 冬にしか現れない魔物は、一般的な冒険者にとって稼ぐチャンス。

 俺たちみたいな高ランクの冒険者が狩りに動けば彼らの獲物を奪い取ってしまうことになる。

 それに生活を支えてくれる収入は迷宮だ。これから数日間は外にいる魔物を狩る人の方が多くなるため迷宮を訪れる人は少なくなるだろうが、彼らは雪が積もった後はアリスターに常駐する。

 稼ぐため、体を動かすため……それぞれ理由はあるだろうが、安定して稼ぐことのできる迷宮へ足を運ぶことになる。

 冬にだけ出現する魔物を狩るよりも、そっちの方が稼げる。彼らのやる気を削がない為にも下手に手を出さない方がいい。


「ま、エルマーたちは久しぶりに帰ってきたので、今年の狩りには参加しているみたいですけどね」


 彼らにとって冒険者になってから初めての冬。他の冒険者に混じって狩りに精を出している。

 普段よりも強くなっている魔物。以前の強さなら心配したところだが、迷宮主や迷宮眷属になったことで強くなっているため、よほどのミスでもしないかぎり返り討ちに遭うことはない。

 だから今日は屋敷にいない。


「用件を聞きましょうか」


 イシュガリア公国から訪れた『聖女』であるミシュリナさんとクラウディアさん。

 アリスターまで移動するには普通の手段では数か月掛かる。何度か訪れたことのあるアリスターの屋敷だが、彼女はある人物に頼むことで移動時間の短縮をお願いしていた。

 移動時間は短縮できるが、簡単ではないためよほどの事がないと行わない。


「誰かに聞かれるわけにはいかなかったため通信することができず、伝言を頼むこともできませんでした」


 冒険者ギルドには離れた場所にいる相手との通信を可能にする魔法道具がある。使用に多くの魔石を消費してしまうため手軽に使える魔法道具ではないが、緊急時には活用されている。

 少し前にもドードーの街が消失したことを世界中の冒険者ギルドへ知らせる為に用いられている。


「そのドードーの街のことでお願いがあって来たのです」


 イシュガリア公国の西にあるドードーの街。

 栄えていた街だったが、数週間前に原因不明の消失を遂げ、街があった痕跡が微塵もなくなっていた。

 俺たちには原因が分かっている。同じように迷宮主であるゼオンが迷宮の最下層より先にある別次元の世界へと街そのものを飛ばした。建物だけでなく、そこで生活していた人々まで飛ばされてしまったため表沙汰にはなっていないものの、一部ではかなりの事件になっていた。

 多くの機関が情報を集めているものの今のところ有力な情報が得られていない。


「ドードーの街が消えた原因なら伝えてあるはずです」


 個人間で用いられる通信用の魔法道具がある。ミシュリナさんにも渡してあるので、何かあれば連絡を取ることは可能だ。

 だが、事前の連絡もなく訪れた。


「通信で話せるような内容ではありません」


 通信用の魔法道具は便利だが、通信を傍受する魔法道具がないわけではない。


「現在、調査の為にイシュガリア公国が魔法使いと護衛に多くの騎士を派遣しました」


 それも派遣は既に数回行われている。


「ところが誰一人として行方が分かりません」


 ドードーの街に近い場所を訪れた痕跡は見つかった。

 ところが、そこから先の行方が一向に分からない。


「私たちの他にも冒険者ギルドが独自に調査隊を向かわせました」


 調査隊がどうなったのか詳細は分からない。

 それでも『帰還できなかった』という結果だけは知ることができた。


「貴方たちから事前に教えられたおかげでドードーの街がどうなったのか、私は知ることができます」


 ただし、情報の出処を公表することができない以上、別の手段で情報を得る必要がある。

 そこで出されたのが調査隊。国から選ばれた優秀な人たちで構成されており、何かしらの情報は持ち帰ってくれるものだとばかり思っていた。


「父からどうにかするよう頼まれました」


 戦闘能力の低い『聖女』に危険な場所へ行け、と言っているわけではない。


「つまり、公国から俺への正式な依頼ですか?」


 俺たちの間に個人的な繋がりがあることを公王は知っている。

 たとえ冒険者への依頼が冒険者ギルドを通されていなかったとしても、国からの正式な依頼なら関係の弱い国が相手でも断りにくい。


「いいえ、あくまでも内密に引き受けてほしい、ということです」


 もっとも公にしていいのなら『聖女』ほどの重要人物を秘密裏に送り込むはずがない。


「内密に依頼する理由は何ですか?」

「少し前に『睡眠病』という事件が解決したばかりです。そこに街が消えたなどという噂が広まるのは困るのです」


 だから記録にも残したくない。


「それに、ドードーの街があった場所の地域では『睡眠病』による被害が酷かったところです。周辺の都市を治める領主の中には『何かあるのでは?』と不安になる者が多いんです」


 何かある、と言うよりも前の事件の黒幕と今回の事件の実行犯は同一人物だ。

 そこまで情報を掴んでいても詳細を公開することができない。


「もうあなたたちに頼るしかないんです」

「……」


 事情は理解した。

 俺たちなら国が解決できなかった問題を委ねる相手として十分な功績がある。依頼されたとしても不思議ではない。

 それに問題と無関係というわけではない。


「こちらの提示する条件を呑んでくれるなら、依頼を引き受けてもいいです」

「本当ですか! お金なら可能な範囲で用意します」

「要求するのはお金ではありません」


 魔物を討伐した際、得られた報酬からいくらかの税金が取られることになっている。


「途中で色々な物を手にすることになると思います。それらの所有権が全て俺にあることを証明していただきたい」

「それは……」


 『聖女』であっても難しい問題だった。

 なにせイシュガリア公国は領地を治める貴族の力が強い国。公王の方が強くても領主に反対されると頷かせるのが難しい。


「ま、難しく考える必要はありません。俺たちがほしいのは目に見えた物資なんかじゃないですから」

「どういう……」


 詳しい説明をしている暇はない。


「どうせ今回も同行するつもりでしょう」

「もちろんです。あなたたちほど戦う力はありませんが、身を守れる程度にはあります」

「……というわけで、来たばかりで申し訳ないけど、現地までの移動をお願い」


 そうして部屋の隅の方に置いたソファで寝ているソニアに頼む。


「簡単に移動できる距離じゃないんだけど」

「今、あの都市があった場所で何があったのか知る必要がある。それは巡り巡ってリオの役に立つはずだ」

「……いいよ。その代わり、帰りの魔力までは保証しないから」

「帰りはこっちでどうにかするから大丈夫」


 ミシュリナさんの要請を受けてイシュガリア公国からアリスターへの移動。その前にグレンヴァルガ帝国からも移動しているため1日にかなりの距離を移動していることになる。

 さすがに連続での使用は辛いらしく、今までも朝にやってきて夕方までのんびりしていることが多かった。


「あたしの戦闘力だと足手まといになる可能性が高い。本来なら『聖女』と一緒に待っているべき」


 だが、ミシュリナさんは国の危機を前についてくる気でいる。

 もう拒否できるような雰囲気ではない。


「というわけで、送って行ったらあたしは退場させてもらう」

迷宮の向こう側から調べることはできないので、消えた地上側の都市を調査。

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