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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第8章 食材狩猟
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第11話 冬の主

 翌日の午後。

 アイラと一緒に冒険者ギルドを訪れていた。


「シルビア張り切っていたわね」

「豚肉がけっこう狩れたから今日は下準備だけになるはずなんだけどな」


 昨日の夜の内に収穫した獲物を母に見せると喜んでくれた。

 まさか前日まで収穫がなく、たった1日の間にこれだけ狩ってくると思っていなかったため、準備が整っておらず今朝からシルビアとオリビアさん、母の3人で調理に取り掛かっている。


 その後、メリッサも連れて3人で母の実家である商家へと入手した肉の商談に向かい、当主の予定を確認した。

 どうにか予定を組んでもらって明後日には会えることになった。

 その時にはクリスも連れて行って祖父との面談になる。


 話し合いを終えた後、メリッサは同じように忙しい実家の手伝いへと行った。


 で、色々と用事を済ませた俺が冒険者ギルドに来ている理由は、依頼票を見る為だった。ただし、依頼を受けるつもりはない。


「普通は冬になると手に入れられる素材が減って冒険者への依頼そのものが減ったりするんだけど、この街だと普通に依頼があるわね」

「理由は単純だ。迷宮があるからだ」


 迷宮の環境は外の季節に関係なく常に一定に保たれている。

 現に外はコートが欠かせないほど寒い冬でもリゾートフィールドでは水着が可能なほど温かくなっている。

 草木が枯れて薬草が取れない冬でも迷宮に行けば手に入れることができる。

 お金のない新人冒険者の中には冬を過ごせるだけの貯金がなく働かなくてはならない者もいる。他の街だと街の中でできる雑用をしてお金を稼ぐが、迷宮の11階まで行ける実力があれば薬草を採取してきた方が儲かる。


「これは、あたしが今までいた街にはなかったことね」


 俺よりも早く冒険者になったアイラはアリスター以外の街での冬についても詳しかった。

 冒険者になってからの冬は寒い中で魔物を倒しながら素材を売って路銀を稼ぎ、体が鈍らないようにしていたらしい。


「今年はのんびりと過ごすことができそうでよかったわ」


 体を動かすにも迷宮へ行けば寒さに関係なく動かすことができる。


「せっかくだから手付かずの71階に行ってみるか?」

「それ、意味がなくない!?」


 迷宮の地下71階から75階は氷雪フィールドと呼ばれる雪と氷に覆われた階層になっていた。

 ただし、前人未到なので誰にも知られていない。


「他にはどんな依頼があるかな……ん?」


 冬特有の依頼でもないかと依頼票を眺めていると冒険者ギルドに来客があった。


「あの人は……」


 アリスター家から支給される鎧を着ていることから来客が兵士だということは全員が分かった。それに冒険者ギルドにいるのは、多くが街を出入りすることの多い冒険者だ。そのため街の門番である彼とは何度も顔を合わせたことがあった。

 そんな門番が慌てた様子で冒険者ギルドへと駆けこんで来た。


「何かあったのかな?」


 門番の様子を見てアイラが首を傾げる。

 ギルドの奥からやって来た職員が駆けこんで来た門番に水の入ったコップを渡し門番を落ち着かせていた。


「どうしたのですか?」

「ギルドマスターをお願いします。シルバーファングが現れました」

「……少々、お待ちください」


 今度は職員が慌ててギルドの奥へと消えて行く。

 するとギルド内がざわざわし始めた。


「おい、シルバーファングだって」

「どこのどいつだ手を出したのは……」

「外には出られないのか」


 今日も外へ出て狩りを行う予定だった冒険者が肩を落としていた。

 残りの日数を考えると1日でも無駄にはできない。だが、さすがにまだ寒い早朝から出かけるようなことはせず、温かくなる昼を待っている冒険者はギルドで時間を潰していた。


「シルバーファング?」


 聞いたことのない名前の魔物だ。


『どうしてシルバーファングがこんなところにいるんだ!?』

「どうした?」


 いつものように俺たちの様子を覗いていた迷宮核が慌てていた。


『どうして君がシルバーファングを知らないんだ』

「だって聞いたことのない名前だし」

『迷宮の地下75階でボスをしている魔物だよ』

「は?」


 ボスは、その階層で出てくる魔物よりも圧倒的に強い。

 具体的には地下75階に出現する魔物をどうにか倒せる程度の実力しかない場合には複数のパーティで協力して戦わなければ討伐することはできない。

 そして、地下75階に出現する魔物は上層のボスと同程度の実力がある。

 そんな強力なボスが街の近くに現れた……?


「ちょっと待っていろ」


 冒険者ギルド内の様子を確認しながら迷宮核と会話しているとギルドマスターが階段を下りてきた。

 ギルド内には多くの冒険者。

 ギルドの中心には疲れから門番が座り込んでいた。


「ギルドマスター……」


 門番が立ち上がる。


「シルバーファングが出現したそうだな」

「はい。自分は直接見たわけではありませんが、街へ逃げ込むように走って来た冒険者がシルバーファングを見たと言っていました。先輩が領主に伝えに走り、自分は冒険者ギルドへ知らせるよう言われました」

「分かった。こっちでも対処させてもらう」

「お願いします」


 伝えるべき言葉を伝えると門番は自分の持ち場である門へと戻って行く。

 ギルド内の状態や迷宮核の反応から緊急事態だということはなんとなく分かる。


「すまないが、緊急依頼を出させてもらう」


 緊急依頼――強力な魔物や多くの冒険者の手を借りなければならない事態が発生した時に出される依頼。

 前回は、疫病が発生した時に薬草を募る依頼が出された。


「今回の依頼内容は『シルバーファングがアリスターを襲った場合の防衛』だ。ちなみにAランク以上の冒険者及びBランク以上の冒険者パーティには強制的に参加してもらうことになる」


 強制参加と聞いてギルド内がさらに騒がしくなる。


「あたしたちには関係なさそうね」


 俺の冒険者ランクはB。

 パーティメンバーのランクはアイラがCランクで、シルビアもこつこつと依頼を受け続けたおかげでCランクになった。メリッサも既にDランクだ。

 俺よりも格下のランクである彼女たちとパーティを組んでいるため俺たちのパーティとしてのランクはCランクだった。

 そのため今回の緊急依頼に強制参加させられることはない。


 だが、気になることはある。


「ルーティさん」

「どうしましたマルス君?」


 俺たちの担当であるルーティさんは、俺たちのランクを把握しているため強制参加する必要がないことを分かっている。


「シルバーファングって何者ですか?」

「冒険者では有名な話ですが、知りませんか?」

「聞いたことのない名前ですね」

「おそらくマルス君が先輩から色々と話を聞いていたのは本当に新人の頃だった夏が始まったばかりの話でしたからシルバーファングの話題は頭になかったのかもしれませんね」


 それだけ有名な魔物らしい。

 ただし、ルーティさんの言い方から冬限定の魔物だということが窺える。


「シルバーファングは冬になるとどこからともなく現れ、アリスターの東にある山を自分の縄張りにする虎型の魔物です。冬の間しか現れないので初めての冬であるマルス君が知らなくても仕方ないですね」

「冬限定の虎……」


 この数日の狩りが思い出される。


「シルバーファングという魔物の肉も美味しいんですか?」

「分かりません」

「分からない?」

「シルバーファングが過去に討伐されたのは何十年も前の話です。数年前にSランクパーティが複数組んでシルバーファングの討伐へと向かいましたが、討伐には失敗。死者は出ませんでしたが、その時の負傷が原因でパーティの1つは解散する事態になりました」


 最後に討伐されたのが数十年前の話では、肉の味など誰も知らないだろう。

 一種の伝説となっているシルバーファングへとSランク冒険者が挑んだが、壊滅させられたことからその後は誰も挑んでいない。


「その強さから辺境では、冬の主とまで呼ばれている魔物です」


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