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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第44章 世界解放
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第29話 メリッサの世界-後-

「もう隠れるのは止めだ」


 姿が見えやすいよう石化したコテージの上に立つ。

 同じようにシルビアとアイラ、ノエルもコテージの上に立ち、4人で大蛇を取り囲む。


 大蛇の頭部は俺に向けられているが、灰蛇は側面と後ろにいる3人へ向けられている。いや、正確に言うなら俺の後ろにいるメリッサとイリスに本体である大蛇の頭部が向けられている。

 大蛇の頭部にある眼と胴体の紋様から石化の眼光が放たれる。


「メリッサみたいなことはできないが、アレがヒントになった」


 大量の石弾を放つ。

 石の弾丸は眼光に当たると石化し、地面へ落ちて行く。


「なにも全ての攻撃を回避する必要はなかったんだ」


 さらに何十枚の壁を用意する。

 メリッサを守るように展開された壁。質よりも量を優先させているため彼女たちの体を隠す役に立ってくれている。


「あとは……」


 魔法で大きな岩を造り出し、前方へばら撒く。

 空中に浮く岩を蹴って無秩序に跳びながら大蛇へと近付く。

 大蛇も石化の眼光を放つが、俺の通り過ぎた場所を迸らせ、蹴って破片となった岩に当たって石化させるだけになる。


 そのまま接近すると大蛇の顔を蹴り上げる。


『わっ!』


 ノエルの驚いた声が頭の中に聞こえる。


『もう、当たるところだったじゃない』

『タイミングは事前に教えていただろ』

『それでも髪が動いたせいで回避したと思っていた攻撃が近くまで来たんだから、驚くのも仕方ないでしょ』


 後ろへ蹴り上げたことで頭部にある灰蛇も動いた。


『マルス、止めて』

「――【世界】」


 時間が停止する。

 停止している間も空中にいたアイラは落ちる。


「解除」


 時間が再び動き出すとアイラの頭上を眼光が通り過ぎて行く。

 石化の眼光を外してしまった灰蛇がすぐに下へ頭部を向ける。もう何度も体験しているため時間が停止していることは想定されている。だが、灰蛇が狙いを定められるようになる頃には、既にアイラはいなくなっている。

 複数の灰蛇がアイラの姿を追う。目視以外の方法で追える灰蛇がアイラの位置を捉えるが、あちこちを移動し続けているせいで狙いを定めることができない。


『もう絶対に当たるなよ。イリスの【回帰】には期待できないんだから、回避に時間停止が必要そうなら遠慮なく言え』

『もちろん』


 自力で時間停止と同様の事ができるシルビアには余裕がある。

 アイラとノエルも事前に言っておけば遠慮するようなことはない。


「さて、あとはメリッサとイリス次第だ」



 ☆ ☆ ☆



「それで私は何をすればいい?」


 メリッサの近くに着地し合流したイリス。

 時間はマルスが稼いでくれるが、何分も稼げるほどの余裕はない。


「イリスさんに要求するのは【蒼氷羽衣(ブリザードローブ)】です」


 【氷神の加護】を得たことで発現させることができた【氷魔法】の極致。


「……理解して言っている?」


 神から得られた加護は強大だ。故に消費してしまう魔力も膨大となる。

 失敗した時点でイリスは役立たずとなる。


「私に懸けてくれるのですよね?」

「……」


 イリスの全身から蒼い魔力が迸り、蒼く輝く羽衣に包まれる。

 大蛇が迸る魔力に気付いて顔を向ける。しかし、イリスに注意を向けるわけにはいかないマルスに殴られて仰け反る。


「余所見とは随分と余裕があるじゃないか」


 殴られた際の傷も再生されてしまう。

 だが、離れた場所にいる二人よりもマルスたち4人の方が無視できないのは事実だ。


「先に言っておく。復活した時に進化しているのか、昼間みたいに冷気で頭部を凍らせるのはできなかった」


 正確には表面を凍らせることはできる。しかし、内部から石化の眼光を当てられて石化させられ、内側から破壊されてしまう。

 やるなら強力な冷気で内部まで完全に凍結させる必要がある。


「たしかに【蒼氷羽衣】の冷気なら、できるかもしれない」


 ただし、もしかしたら失敗するかもしれない。

 危険な賭けであったためイリスも試してみるわけにはいかなかった。


「その点なら大丈夫です。今の私に必要なのは、相手を倒せる可能性を持った強力な魔法です」


 マルスは多彩な魔法を扱うことができるが、一撃における破壊力ならイリスの方が上回っている。


「ちょっと失礼します」

「メ、メリッサ!?」


 後ろからイリスに抱き着くメリッサ。

 密着と言っていいほどの接触にイリスから落ち着きが消える。


「動揺するのは構いませんが、魔法は絶対に解除しないでください」

「それは任せて」

「本当にお願いします。今の私には魔法の維持にまで意識を向けている余裕がないのです」


 イリスの体から冷気が漏れる。

 仲間であっても無防備な状態で、さらに密着している為にメリッサの体も冷えていくが、彼女は寒さなど一切見せることなく意識を集中させる。


「メリッサ?」


 心配になったイリスが呼び掛けても反応はない。

 シルビアやイリスと感覚を同調させて、魔石の位置を正確に捉える。狙うのは髪のようにある灰蛇の頭部だけでいい。


「目標捕捉」


 大蛇も周囲にいるマルスたちを無視してでもメリッサたちこそ排除するべきだと気付く。

 体が斬られ、殴られることにも構わず石化の眼光を放つ。


「させるわけないだろ――【世界】」


 時間が停止する。

 メリッサとイリスは攻撃の為に動くことができない。


「さっきも言ったように回避だけが防ぐ方法じゃない」


 眼光の前に壁を魔法で生み出す。

 先ほどメリッサが行ったことをマルスなりの方法で実行してみせた。


 強力な攻撃である石化の眼光だが、何かに当たれば最初の攻撃が止まってしまうという欠点がある。

 再び時間が動き出しても眼光がメリッサに届くことはない。


「――やれ」 

「――【世界記録(アカシッククロニクル)】」


 直後、全ての灰蛇の頭部が巨大な氷柱に貫かれ、魔石を同時に砕かれたことで大蛇が轟音を響かせながら倒れる。



 ☆ ☆ ☆



「いや、同時に破壊したんじゃないな」


 倒れて動かなくなった大蛇を見下ろしながら呟く。

 メリッサが行ったのは魔法攻撃による同時破壊ではなく、全ての魔石が『破壊された』という事実の上書き。

 故にタイミングなど関係ない。

 メリッサが上書きした瞬間が、全ての魔石が破壊されたタイミングとなる。


「これが私に発現した【世界記録(アカシッククロニクル)】です。魔法によって起こり得る事象を世界へ直接上書きすることができます」


 強化された灰蛇の頭部を貫けるだけの威力がある氷柱。

 だが、どれだけ精密な操作をしたとしても対象が50もあっては誤差が生じてしまう可能性が高かった。

 そこでメリッサが世界へスキルで干渉した。


 ――灰蛇の頭部は氷柱に貫かれた。


 その事実だけが残り、【世界記録】が発動した瞬間には大蛇の死が確定してしまった。


「ただ、これは魔法使いであっても手にしていい力ではありませんね」

「あ、おい……!」


 メリッサが意識を失い掛けて横に倒れる。

 同時にイリスも魔力切れで倒れてしまったためシルビアが支え、俺もメリッサを抱える。


「けっこう魔力が残っていたはずなので平気だと思っていたのですが、さすがの私でも魔力を消費し過ぎたみたいです」


 目が虚ろだ。

 メリッサの場合は、魔力の消耗以上にスキルによる情報の処理によって多大な負荷が掛かっていた。

 聡明な彼女らしくなく、自分の不調の原因に気付けていない。


「少し休んでおけ。明日には回復しているだろ」

「……そうさせていただきます」

「同じく」


 メリッサとイリスの二人が同時に意識を落とす。

時間を吹き飛ばして結果だけを残した能力の魔法攻撃バージョンです。

主人公の切り札が時間停止なので、『加速』と『消去』は必須だと考えていました。

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