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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第44章 世界解放
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第16話 石化の恐怖

 あちこちで倒れている人々を背負って一ヵ所へ集める。

 集められた場所はメリッサによる【回復魔法】の効果が常時働くよう回復効果を持つ結界が展開されていた。

 結界の中にいるだけで効果が微弱であるものの衰弱した体を回復させることができる。今、運ぶ為の人員を呼びにアイラが走っているが、到着する前に衰弱してしまう可能性もある。


 犠牲者を出さないと決めた。なら、今の内にできることはやっておくべきだ。


「大丈夫ですか?」

「うぅ……」


 森の中を探索していた俺の前では兵士の制服を着た男性が倒れていた。

 石化からは解放されたが、衰弱が酷い為に解放されたと同時に倒れた。


「生きてはいますね」


 屈んで兵士の状態を確認していると結界の維持を続けているメリッサが近付いてくる。

 彼女が持つ杖の先端にある宝石には光が灯されている。結界維持に必要な魔力が供給されており、維持するだけなら近くで供給するだけでいい。


「ああ、生きている。それよりもこいつだ」


 うつ伏せに倒れた兵士の体を抱えてみると赤い宝石があった。

 デイトン村の近くで駐屯していた場所で一人の騎士を石化から解放している。その時にも石化から解放されると同時に赤い宝石が近くに転がっていた。


 その場にいた人たちは石化から解放された事に喜び、急に出てきた宝石に気付いた様子はなかったため責任者と兄にだけ報告して回収させてもらった。

 ただの宝石ではない。それは出現の方法からも明らかだろう。


「さっき運んだ人にもあった」


 近くにいる人から結界内へと運び、目の前で倒れている人は4人目だ。

 最初に石化から解放した騎士から出てきた宝石は爪ほどの破片と呼んでも差し支えない大きさだった。

 先に運んだ3人は少し大きくなって爪ほどの大きさになっている。


「この兵士は特に酷いな」


 足元に転がる宝石は拳ほどの大きさがある。

 さらに色も同じ赤であっても、足元の宝石の方が暗く淀んでいる。


「メリッサ、この人には強い【回復魔法】を掛けてくれ」

「はい」


 せっかく助けることに成功した命だ。今から死なれては目覚めが悪くなる。


「……ハッ!!」


 まるで忘れていた息をするかのように兵士が急に意識を覚醒させる。


「目が覚めましたか」

「ぼくは……」

「自分に何が起こったのかは把握していますか?」

「はい……」


 先に目覚めさせた騎士も石化していた間の意識があった。

 おそらく自分の身に何が起こったのか理解しているだろう、という判断からの質問だったが間違っていなかったようだ。


 兵士がゆっくりと体を起き上がらせる。


「なんか、よく分からないけど、気付いたら体が動かせなくなっていて、体だけでなく目も動かすことができなくなっていて……いつの間にか体に何かが巻き付いて運ばれたんです」


 目に映るのは正面の光景のみ。ただし、頭部どころか眼球を動かすことも石化させられているせいでできない。

 そんな状態でありながら意識はある。

 大蛇によって尾で運ばれたとしても抵抗することすらできない。


「そこで、見たんだ……!!」


 人の形をした石像……いや、石化させられた人間。

 そこで、兵士もようやく自分が石化させられていることに気付いた。

 自分の状態を知って激しく動揺するが、抵抗できずに集められる石化した人々を眺めていることしかできなかった。


「あなたたち……マルスさんたちが、助けてくれたんですか?」

「俺の事を知っているんですか?」

「アリスターに住んでいる人間であなたたちを知らない人間はいませんよ」


 最大戦力であるため、騎士や兵士からも緊急時には頼られることがある。


「とにかく、助かったんですね……よかった」


 兵士が必死に俺の服を掴んでくる。

 掴む手はガクガクと小さく震えており、必死に縋りついていた。


「あのまま死んじゃうんじゃないかって」

「もう大丈夫ですから」

「よく分からないけど、そんな気がしたんです」


 額に手を当てて【睡眠(スリープ)】を使用する。

 回復させたことで起こしてしまったが、まだ石化していた間の動揺が抜け切っていないため眠らせておいた方がいい。兵士程度の実力では迷宮魔法に耐えることはできない。


「どうやら迎えが来たようです」

「ああ」


 遠くから何人もの足音が聞こえる。

 ただ気になるのは予想よりも早いことだ。


「お待たせ」


 兄を伴ったアイラが駆け寄ってくる。


「随分と早いな」

「それが森の入口で待っていたみたいなの」

「お前たちが入った時点で問題は解決したようなものだからな」


 兄から向けられる絶対の信頼。

 相手がどれだけ強大な力を持った魔物だとしても俺たちが負けるはずがない。

 そう信じて邪魔にならないよう森の外で待機していた。しかも、解放された人々を運ぶ手段に困ることを見越して担架まで用意している。


「すいません。まだ全員を集め終わっていないんです」

「それは気にする必要ない。ここからの仕事は俺たちの方でやる」


 兄が連れてきた兵士にテキパキと指示を出し、兵士たちが倒れた人々を森の外まで運び出そうとする。


「どうやらまだいるようです」

「……!?」


 俺の言葉に警戒を強める騎士と兵士たちだったが、こちらへ訪れたのは敵ではない。


「よう。俺たちも協力させてもらうぜ」


 現れたのは冒険者たち。


「お前たちが森に入って行くのが見えたからな。上手くいけば今日中に決着がつくと思っていたんだよ」

「期待に添えたようならなによりだ」

「はっ」


 倒れている人々の中には冒険者もいる。仲間を助ける為、協力してくれることとなった。


「手を貸すぜ」

「すまない。助かる」

「周辺の警戒は、わたしたちに任せてください」


 体格の大きな冒険者が倒れていた冒険者を背負い、パーティメンバーである女性が周囲を警戒していた。

 冒険者の協力に騎士が素直に応じていた。

 荒くれ者の方が多い冒険者。普段は冒険者の事を下に見ていることの多い騎士だが、石化から解放された騎士を運んでくれる冒険者もいるため感謝していた。


「それで、肝心の魔物はどうしたんだ?」


 兄が尋ねてくる。


「既に回収済みです。ここで出すこともできますが……」


 近くにゼラトさんがいないか探すが、彼の姿を見つけることはできない。


「ゼラトさんには向こうで待機してもらっている」


 さすがに責任者が現場まで出てくるようなことはなかった。


「向こうへ戻ったら見せたいと思います。ただ、一つだけ確認しておきたいんですけど素材については通常通りでいいんですよね」


 領主の管理する土地で魔物を倒した場合、その魔物の素材を手にする代わりに税金を納める必要がある。ただし、領主から依頼されて討伐した場合には例外として税金を納める必要もない。

 俺たちにとって助かるのは、詳細な素材の報告が必要ないこと。


「石化していた人たちから出てきた宝石は俺たちの方で回収させてもらいます」


 報告した場合、宝石にしか見えない代物であるため税金の算定などで面倒なことになるのは目に見えている。


「たぶん大丈夫だと思うけど、それは何なんだ?」

「戻ったら説明しますよ」


 所有権は俺にあるが、心情的には譲渡したくない代物だからな。

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