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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第44章 世界解放
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第12話 辺境の村の行く末-後-

 1日で銀貨5枚。

 1ヵ月も生活していれば金貨を1枚以上掛けてしまうことになる。

 短期でならいいが、長期だと負担になる。


「安心してください。借りるのは数日だけになりますよ」

「どうしてだよ」

「俺たちが開拓に必要な作業の大半を終わらせてしまいますからね」

「なにっ……!?」


 冒険者の何人かが声を荒げる。

 危険な魔物がおり、石化が怖くて森へは入りたくない。だが、自分たちの引き受けた仕事を後から俺に掻っ攫われるのは気に食わない。なにより成功報酬と獲物が減らされるのを看過できない。


「その辺は配慮しますよ。森にいる石化を使ってくる魔物を倒すのと、海までの道を作る。あとは細々とした作業はありますが、それでも皆さんの稼ぎを大きく奪うような真似はしません」

「それなら……」


 森にいる魔物はAランク冒険者でもどうにもならないだろう、と予測していた。依頼を引き受けたこの場にいたなら無理を承知で頼んでいたかもしれないが、残念ながら今回の依頼を受けた冒険者の中にAランク冒険者はいなかった。

 あの魔物は国の総力を挙げてでも討伐しなくてはならない魔物。


「というわけでウチのメンバーに一言伝えて料金を払ったら自由に使っていいですよ」


 説明をしている間にイリスの手によって30戸のコテージが出現していた。


「よし……!」


 料金を考慮しても魅力的に映ったらしく予約が殺到する。


 1日の売り上げが金貨1枚。

 俺たちレベルが稼げる金額としては少ない方だが、安定した収入がある状況は安心感が違う。


「で、そちらは何の用ですか?」


 さらに冒険者だけで済まなくなる。


「こっちにもいいか?」

「もちろんですよ」


 騎士団からも要請を受けてコテージを出す。

 全員の要望を受けた頃には30戸のコテージが並んでいた。


「怪我人もいるから助かった」


 代表者であるゼラトさんとしては怪我人――石化している人を安全な場所に運んでどうにかしたかった。

 しかし、馬車で1日もあれば到着する距離とはいえ、アリスターまで運ぶのは道中での事を考えれば安全とは言えない。


「いえ、騎士団の方たちには出すように最初から依頼されていましたから」

「アリスター家からか?」

「はい」


 領主も現状は把握している。

 少しずつ不満が溜まっているのは理解していたが、危険な魔物が森にいる以上、討伐することが難しかったとしても見張りや出てきた時の足止めに人員は必要だった。

 まだアリスターへ帰すわけにはいかない。

 せめて待機している間、快適に過ごせるよう力を貸した。


「冒険者には銀貨5枚で貸しましたけど、これだって何もない場所に造るよりは安く済んでいるんですよ」

「それだけが目的ではないだろう」

「気付いていましたか」


 デイトン村から少し離れた場所にコテージを用意した。

 目視できる距離で、目と鼻の先とはいえ離れている。


「これがアリスター家から提示された森の中に造る予定の道です」


 この数年間で森の規模や環境の調査は済んでいる。

 さらに港町を建設できるほどの場所は限られており、森の中を走る道は効率的に造られなければならない。


「なるほど」

「デイトン村の人間が殊勝な態度だったなら別の案もあったんですけど、これまで交渉が上手くいっていないようなので効率重視でいくことになりました」

「……デイトン村からは反感を買うことになるぞ」

「知りませんよ」


 デイトン村の人々は誰もが自分たちの村の前を通って森の中へ行くものだとばかり思っていた。

 だが、何度も交渉したのに積極的な協力は得られなかった。

 生活が大きく変わってしまうことを恐れた老人たちによる反対があったためだ。


「既にアリスター家はデイトン村を見限ることにしました」


 効率を重視するならデイトン村近くの街道を利用するのは非効率的だ。

 だから、新たな村を街道があることを前提に建てる。


「数十分前まで何もなかった場所ですけど、メリッサがちょっと手を加えて整地してあります。もう少し時間をもらえれば最低限のライフラインを調えることはできます」


 新しい村の下地を作るところまでは準備した。

 ここから先は村へ移住することとなる人々がするべきことだ。最初から全てが用意されている村より、ある程度まで用意されて自分たちで作り上げた方が移住してきた人たちも作った村に愛着がわく。


「だが、デイトン村からは反発があるんじゃないか?」

「あんな小さな村が文句を言ったところでどうにかなると思っていますか? 相手は辺境伯です。いくら声を荒げたところで揉み消されてしまうのがオチでしょう」


 実際、小さな村の長程度の権力ならアリスターにいる多くの人が持っている。

 他の人々の声に埋もれて見向きもしないだろう。


「そもそも税を安くしてもらったり、アリスター家が負担している大規模な商隊まで派遣してもらっているんです。せめて騎士団を受け入れるなりして協力する姿勢を見せなければ切られますよ」


 アリスター家にとってデイトン村は切り捨ててしまっても問題のない些末な相手。

 それでも誠意を見せようと交渉をしてくれたのは俺の故郷であることを知っていたからだ。故郷に対して無礼な振る舞いをするのは無礼だと判断した。まあ、デイトン村に対して何をされたところで今さら何を思ったりすることはないのだが、話を合わせておく。


「彼らは変わることを恐れているようですが、彼らの意思なんて無視して世界は変化してしまいます」


 その変化について行くことができない者は、足手纏いとなって転ばされることになる。


「まあ、好きにやっていい。アリスター家からの指示なら私の口から何かを言うことはない」


 ゼラトさんが騎士団のいるコテージへと向かう。


「1日で金貨1枚以上。随分と簡単な商売だな」

「ええ、これで十分でしょう」


 目の前にある複数のコテージを見てメリッサが納得した。

 俺とイリスは指示されるまま出していっただけだが、メリッサは今後も使うことを計算して出す場所を決めていた。


「このコテージを再利用すれば開拓拠点の確保は簡単になるでしょう」

「ついでに利用料ももらえて俺たちの懐も潤う」


 今後、森は多くの冒険者に利用されることとなる。

 こういう簡易的な休憩所があった方がいい。


「……うるさいな」

「お、起きたな」


 シルビアに膝枕されていたノエルが頭を抱えながら起きる。

 周囲がこれだけ煩ければ叩き起こされても仕方ない。


「何があったのかは覚えているな」

「もちろん。助けてくれてありがとう」


 アイラによる気絶やイリスの献身。

 どちらもノエルははっきりと覚えていた。


「なら、敵の居場所も覚えているな」

「もちろん」

「じゃあ、魔物退治といきますか」

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― 新着の感想 ―
[一言] ああ、やっぱりそうなったか…… 仮にデイトン村がなくなったとして森で間引きしてる冒険者としても目視出来る距離なら少し手間になるだけだしなぁ。次は意欲的な人たちが集まってくれることを祈りたい。…
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