第8話 ラグウェイ家の復興
ラグウェイ家。
かつては貴族として無難に町を治めていたが、ただ場所が都合よかったからという第3王子の自分勝手な理由で滅ぼされることになった。
領主だったメリッサの父親であるガエリオさんは襲われる町から逃げ延び、その時に逸れてしまった娘の情報を集める為にも商人となることを選んだ。
貴族だったラグウェイ家は滅んでしまったが、逸れてしまった家族はこうして集まることができた。
ある意味でラグウェイ家の復活は成された。
「いえ、本当の意味でラグウェイ家を復興させるのです」
「ですが、私たちには治める領地はないですし、この歳ですから貴族になるほどの功績を挙げて認めてもらうのは無理です」
ガエリオさんが否定しながら俺を見る。
以前、俺に対して王国から貴族叙爵の話が出た。
だが、その時は断った。メリッサがいれば貴族間の面倒事も解決できるかもしれないが、他のメンバーに政治や領地運営ができるはずがない。誰かに頼らなければならない状況は作り出したくなかった。
「計画ではこれから港町を海の近くに作ることになっています」
海上貿易ができるようにすることこそ最大の目的だと聞いている。
「開拓の準備を進めながら港町の運営ができる人間を探していましたが、なかなかいい人に巡り合うことができませんでした」
これまで何度も失敗している開拓。
有能な人間なら既に誰かに雇われているだろうし、成功する保証のない開拓村の領主なんて引き受けるはずがない。だが、最初は小さな港を持つ村だったとしても計画では最終的に辺境の経済を支える街にまで発展させるつもりでいる。能力のない人間に大事な初期段階を任せるわけにはいかない。
「それでラグウェイ家か」
ガエリオさんなら街の方向性は違うが、領地を治めていた経験がある。普段はアリスター家から派遣された家臣が手助けしてくれるだろうし、緊急時には対応できるだけの能力がある。
ただ、一つだけ問題があるとすれば年齢だ。計画は数十年先も見据えられており、その頃にもガエリオさんが現役で仕事を全うできるとは思えない。
最も忙しくなる頃には誰かへ引き継がなければならない。
「引き継げる人間なんて限られているな」
貴族なら血縁関係を最も大切にする。
もし、ガエリオさんが貴族で引退することになるのなら娘のどちらか、それが難しいのなら孫に引き継がせるのが無難だ。
「依頼内容と報酬については理解しました」
「では……!」
「ええ、引き受けますよ」
承諾することを伝えるとエリオットの顔に笑みが浮かべられる。
こういうところは、まだまだ子供だと痛感させられる。
「主」
しかし、メリッサは自分のせいで快諾させてしまったことが気に入らないのか咎めてくる。
それは彼女の両親も同じみたいで俺に迷惑を掛けてしまったと思っている。
「現在、デイトン村に数名の騎士と兵士を派遣しています」
「まずは彼らと合流すればいいですね」
「はい」
「やり方はこっちに任せてもらいますが、危険な魔物の排除はやらせてもらいますよ」
仕事の話は終わった。シルビアが屋敷の外まで案内し、待機していた護衛と共に領主の屋敷まで帰って行った。
部屋に残されたメリッサと家族。
「申し訳ない」
ガエリオさんが沈黙を破って謝罪する。
「まさか、こんな手段に出てくるとは……」