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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第44章 世界解放
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第6話 ドードーの街―後―

「迷宮の……主!?」

「知っていたんじゃないですか?」


 俺の告白に声を荒げるルーティさんを見てからギルドマスターへ視線を向ける。


「こんな重大な事を本人の了承もなしに話すわけがないだろ。だが、俺としては予想ぐらいしているものだとばかり思っていたんだがな」

「予想なんてできるわけがないじゃないですか……」

「そうか? 俺には『マルス君たちの秘密は公表するべきではありません』なんて言っていただろ」

「あれは……何か特別なアイテムでも手に入れたんだろう、って思っていたからです。そうでなければ冒険者になったばかりのマルス君があれだけの成果を挙げられるはずがありませんから」


 まさか迷宮そのものを手に入れられるとは思わない。


「で、迷宮の最下層の奥にはよく分からない世界があって、そこに消えたドードーの街があった。しかも神様の世界だって……?」

「はい」

「冗談にも程がある……って言えたらよかったんだけどな」


 ギルドマスターは呆れていた。

 事情を話す俺たちの口調から冗談の類ではないと分かってしまったからだ。


「こちらがドードーの街に興味を示している理由は教えました。そちらが把握している情報も教えてください」


 ギルドマスターとルーティさんが視線を合わせる。

 ただのギルド職員には伝えられていない情報。簡単には教えることができない。


「分かりました」


 だが、俺たちの話を信じるなら自分たちみたいなただの人間の手には負えないと判断し、俺たちへ委ねる決心をした。


「事の発端は3日前です。イシュガリア公国にある冒険者ギルドから全世界の冒険者ギルドへ緊急の通信が発せられました」


 冒険者ギルドには通信の魔法道具がある。それで危険な魔物や世界各国の情勢を教えて冒険者の身を守っている。

 ただし、通信用の魔法道具は多くの魔力を必要としていて一度の使用で魔石をいくつも無駄にしてしまう。そのため必要な時に、必要な場所へ、必要な情報を流すようにしている。

 全世界への通信は、それだけ内容が急を要するということだ。


「数年前から迷宮のおかげで潤っていたドードーの街から離れた場所にある街からドードーの街がある場所で強烈な光が空に向かって放たれるのが目撃されました」


 誰もが一目見ただけで分かるほどの異常事態。

 ドードーの街からの救援はなかったが、何が起こったのか調査するため近隣の街にある冒険者ギルドと領主は独自に調査の人員を派遣することにした。


 何人もの調査員が集ったドードーの街。

 だが、調査員たちが目撃したのは跡形もなく消え去ったドードーの街があった場所のみ。街にあった建物や生活していた人といったありとあらゆるものを消えてなくなっていた。


 すぐに調査が行われたが、何も見つけることができなかった。

 その状況から『転移』を疑ったが、街が移動するなど災害レベルの問題で、痕跡を追うどころではなかった。

 少しでも多くの情報を求めた周辺の領主たちは冒険者ギルドを通して情報を求めることにした。

 自分たちも同じように消えてしまっては困るからだ。


「何があったのかは理解しました」


 街から空へと上がる光。

 それを街にいた人々は見上げてしまったため、移動後のドードーの街の人々は空を見上げたまま停止していた。


「何らかの方法によって街ごと向こう側まで転移させられたのでしょう。ですが、向こう側の世界に馴染むことができなかったのか全員が停止してしまった」


 俺たちも【世界】がなければ停止させられてしまうような世界だ。普通の人間が平然としていられるわけがない。


「それがドードーの街に起こった出来事です」

「そんな事……どうやって報告すればいいんだよ。手掛かりでもいいから何か情報を掴んだら報告する義務があるんだぞ」


 ギルドマスターが思わず呟いてしまった。

 迷宮に関する事は報告することができないし、報告したところで信じてもらえるとは到底思えない。

 それに、ある程度は許容するが、俺が迷宮主である事まで報告するようなら敵対するつもりだと見做す。


「ま、何も聞かなかったことにするのが一番でしょう」


 それぐらいしか選択肢がない。


「一つ確認です。ドードーの街があった場所には本当に何も残されていなかったのですか?」

「ああ……」

「いえ、一つだけ残されているものがありました」


 肯定しようとしたギルドマスターの言葉をルーティさんが否定する。


「迷宮の入口です。街の中心には地下へと続く階段だけが残されていました」


 見た目は以前と変わらない。

 しかし、周囲の物は地下室も含めて全てが消失してしまっているというのに以前よりも低い位置に迷宮の入口だけがあった。


「それが聞けただけで十分です。俺から提供できる情報はもうないですね」

「いえ、ありがとうございます。おそらくマルス君の情報以上に価値のある情報が出てくることはないでしょう」


 現状、最下層の向こう側へ行けるのは俺とゼオンのパーティのみ。

 向こうへ行かなければドードーの街がどうなったかなど知る術はない。


「これからどうするつもりなんだ?」


 ゼオンには敗北してしまった。

 今のままでは勝つ術がない。


「敵も強くなりますが、スキルを強化させます」


 もう一段階は強くすることができるはずだ。


「それから戦力を増やします」

「増やす?」

「具体的に言えば、ある迷宮を最大まで拡張させることで迷宮主の味方を増やします」


 エルマーが管理しているパレント迷宮の事だ。

 最初はリオに協力を頼もうかとも思ったが、帝都の迷宮を限界まで拡張させた場合に生じる問題を考えた結果、リオに協力を頼むのは不可能だと判断した。

 事情を説明すればエルマーなら協力してくれる。


「もう一回やっているんですから、難易度が上がっていてもやることは変わりませんよ」


 階層数の問題だけではない。

 あまり時間を掛けていると同じ事をゼオンにやられて主導権を握られてしまう可能性がある。


「まあ、気になることがあるとすれば、それが向こうの目的だった場合かな」


 イリスには懸念があった。

 俺に危機感を抱かせることで5つ目の柱を俺たちに用意させる。

 自分たちが動いて準備するよりも確実な方法だ。


「それでも、何もしないよりはマシだ」

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