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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第8章 食材狩猟
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第8話 訓練の成果

 訓練に1日半を費やした。

 雪が降ってから4日目。

 2日目と同じようにゆっくりと草原を歩いていた。


「雪、か……」


 空を見上げると朝は晴れていたにもかかわらず雪が降り始めていた。

 気温が低くなり、ほとんどの動物が温かさの残る場所に姿を隠し、空には普通の(・・・)鳥はいない。

 その代わりに魔物の鷲が4羽飛んでいた。


「来たぞ」


 空に放っていた使い魔と視界を共有することによって魔物の姿を探し出していた。

 広範囲を探させる為に4羽をそれぞれ別方向に飛ばしているため俺の脳には負担が掛かっていた。それでも我慢できないほどではない。

 使い魔である鷲と視界を共有した俺の目には1キロ先からこちらへ近付いてくる真っ白な鳥の魔物が3羽いた。


「近くに冒険者はいますか?」

「いるけど興味がないみたいだ」


 スノウホークはかなり高い場所を飛んでいる。

 冒険者の中にも弓矢や魔法によって遠距離を攻撃する手段を持った者がいるが、それでもスノウホークがいる高度に対応できるほどではなかった。


「届きそうか?」

「わたしには無理です」

「あたしも届けるだけなら問題ないけど、あんな遠いんじゃ威力が足りないかもしれないわ」


 どうにか当てることができたとしても傷を与えられなくては意味がない。

 シルビアとアイラでは空にいるスノウホークに攻撃を当てることができない。


「では私の番ですね」


 左手に杖を持って右手の人差し指と中指を空へ向けたメリッサが近くへスノウホークがやって来るのを待つ。

 スノウホークが近付いてくる。

 途中、何度か空へ向かって矢が射られるがスノウホークの群れに届くことなく地面へと落ちて行く。


「あの程度の高度なら十分届きます」


 ――ズドォン!


 メリッサの指先から爆音を伴って発射された風の弾丸がスノウホークの両翼を撃ち抜く。

 翼を撃ち抜かれて飛んでいることができなくなったスノウホークが地面へと落ちる。同じ群れに属していたもう2羽のスノウホークは地面に落ちた仲間を無視してどこかへと飛んで行く。


「はい、これはお前が貰っておくといいよ」

「ありがとうございます」


 地面に落ちたスノウホークを回収するとメリッサへと渡す。

 収納リングへと消えたスノウホークを見届けて改めてメリッサの使った力について思ったことを言う。


「ところで、今のどこが狩りなんだ」


 メリッサの訓練には最初しか付き合っていなかったが、音を立てずに静かに攻撃することを目的にしていたはずだ。

 しかし、今使われた力はどうみても隠密性などない。


「私は思ったのです。私の魔力資質を考えると隠れて狩りをするよりも速度を重視して一瞬で相手に攻撃を当てた方が確実だと」


 たしかにメリッサの指先から放たれた風の弾丸がスノウホークの両翼を貫くまで2秒と掛かっていない。発射された爆音を聞きつけても逃げられる時間がなければ意味がない。

 たしかに合理的だ。


「けど、あの状態はどうなんだ?」

「大丈夫です。使い物にならなくなったのは翼だけですから肉は無事です」


 メリッサの魔法に貫かれた翼は消失していた。

 回収できたのは肉が期待できる胴体部分。

 羽の方も状態が良ければ買い取ってもらえるので勿体ないと言えば勿体ない。


「ま、いいんだけどな」


 お金に困っているわけではないので問題ない。


「次の獲物を見つけたから移動するぞ」


 スノウホークを回収している間も使い魔に地上を探させていたおかげで目当てであるスノウラビットを見つけた。


「次は誰がやる?」

「あたしがやるわ」


 スノウラビットから遠く離れた位置からアイラが隠者の聖弓を構える。

 その目は真剣そのもの。

 声を掛けるのも躊躇われてしまう。


「きゅ!」


 いつの間にかアイラの弓から矢が放たれていた。

 矢を射た瞬間を見逃してしまった。

 自分へと迫る矢に気付いていなかったスノウラビットだったが、寒さのせいかスノウラビットの腹に突き刺さるものの急所ではなかったせいで生きており、俺たちとは反対方向へと走る。

 が、方向を変えた直後に短剣が首元に突き刺さる。


「仕留めるならきちんと仕留めてよね」

「……ありがとう」

「まあ、練習だと思えばいい方だろ」


 以前は簡単に逃げられてしまったスノウラビットだが、パーティ単位で考えれば簡単に狩ることができるようになった。


「それもこれもこれだけ離れた位置から攻撃できるからなんだけどな」


 俺たちはスノウラビットから100メートル離れた場所から攻撃していた。

 今も使い魔と視界を共有しているため他の冒険者が数十メートル手前から攻撃をして気配を隠しながら近付いて仕留めようとしている姿が見える。


 訓練の成果としては……


「お前たちは、狩りの訓練をしていたんじゃないのか!?」


 メリッサは魔法の速度を上昇させ、シルビアとアイラは攻撃が相手に届くまでの速さを鍛えていた。

 はっきり言って隠密能力は鍛えられていない。


『いや、1日半の間に色々と試していたんだけどこっちの方が簡単だったんだよ』

「たしかに成果は出ているけども……!」


 魔物を倒すことには成功した。

 しかし、ステータス任せの解決方法でいいのだろうか?


「お、こんなところに獲物が放置されていやがる」


 そんな言い争いをしている間にシルビアの仕留めたスノウラビットを手に入れようと冒険者が地面に倒れているスノウラビットに近付く。


 ――グサッ!

 ――サク!


「いてぇぇぇ!」


 冒険者の腕に短剣と矢が突き刺さる。


「それは、わたしたちの仕留めた獲物です」

「横取りは許さないわよ」


 シルビアとアイラがスノウラビットを回収しようとした冒険者へ走って近付く。


 メリットと顔を見合わせると俺たちも仕方なく近付く。


「なんだよ、あんたたち! 俺が何をしたっていうんだ!」

「あんたがあたしたちの仕留めた獲物を横取りしようとするからでしょ」

「は、はぁ!?」


 男の言いたいことも分かる。

 彼は、俺たちが100メートルほど離れた場所から走って近付いてくるのを見ていた。普通は、狩りとはいえそれほどの遠距離から仕留めるような真似をしない。

 俺たちが仕留めたと思われなかったとしても仕方ない。


「あんた一人で狩りをしているのか?」

「いや、近くに仲間がいるが……」

「だったら傷は仲間に手当てしてもらうんだな」


 スノウラビットを収納する。


「普通に考えて仕留めた獲物をそのまま放置していくはずがないだろ」


 冬に寒くなったせいで獣や魔物の数が少なくなっている。

 そんな状況で予定以上の数を仕留めたとしても多少の無茶をして運び込むはずだ。


「くそ、悪かったよ」


 逆恨みでもされては困るのでメリッサに頼んで最低限の傷だけを治してもらう。

 ふらふらとした足取りで腕を押さえながら来た方向へと戻って行く。


「大丈夫か!?」


 少し歩くと3人の仲間が迎えに来てくれた。

 傷を負った仲間の姿を見ると慌てて駆け寄る。


 仲間、特に先頭を走るハンマーを持った彼には見覚えがあった。


「ご主人様?」

「あの先頭にいる奴がグレッグだ」

「ああ、彼が……」


 グレッグは俺が酒場で腕相撲をして倒した相手だ。

 その後でどうなったのか覚えてないが、話に聞くとボコボコにしてしまったらしい。潰した手もボコボコにされた様子もなく武器を持っていた。


「何があった!?」

「いや、それが……」


 男が言い難そうにしていた。


「あいつらに何かされたのか?」

「いや、それは……」


 そんなことをしていたら誤解されてしまうだろ。


「奴には借りがあるんだ。ちょうどいい」


 酒場で会った時とは違って武器を持ったグレッグがこっちに近付いてくる。

 しかも仲間の二人までもが剣を鞘から抜いていた。


「なんというかむさくるしいパーティだな」


 全員が男で前衛。

 そのため筋肉質な男だけだった。


「ま、降りかかる火の粉は払わせてもらうさ」


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