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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第8章 食材狩猟
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第7話 狩猟訓練

「要は魔力を抑えることができればいいのですね」

『できるのかい?』


 俺も魔法を使える影響から魔力量を大凡計ることができる。

 メリッサの魔力量は、制約の指輪で抑えた状態でも一般的な魔法使いと比べると遥かに強い。


「では――」


 目を閉じて意識を研ぎ澄ませるとメリッサの中でスイッチが切り替わる。


「なっ……」


 思わず言葉を失くしてしまう。

 メリッサから感じられていたはずの燃え上がる炎のような感覚を受けた魔力の反応が静かな落ち着いたものへと変化する。


「慣れればこの程度のことはできるようになります」


 メリッサが持つもう1つのスキル『地母神の加護』。

 魔法使用時に消費魔力量を抑えてくれるスキルだが、使い方次第では体から放出される魔力の量も抑えることが可能とのことらしい。


「これで感知範囲にいても問題ありません」

『これは、嬉しい誤算だね』


 魔力を抑えられる技量があるなら簡単に見つけられるようなことにはならない。


『じゃあ、次の段階に行こうか』


 問題は、攻撃方法だ。


『君たちの今までの戦い方は隠密能力に乏しい。まずは、分かりやすく武器から揃えてみることにしようか』


 迷宮の溜め込んだ魔力を消費して制約の指輪が入っていた宝箱より大きな宝箱が出現し、勝手に蓋が開く。

 宝箱の中を4人で覗いてみると弓が入っていた。


『それは、「隠者の聖弓」。アイラに渡した聖剣と同じように攻撃に聖属性の力を与えることができる弓だよ。もちろん、それだけじゃないけどね』


 試しに持ってみて魔力を注いでみる。

 すると、弓に光り輝く矢が生み出された。


「これのどこが隠者なんだ?」


 光る矢なんて目立って仕方ない。

 ただ、魔力で矢を生み出すことができるというのは助かる。


『試しにどこかへ射ってみるといいよ』


 そう言われても……


「俺は弓なんて使ったことないぞ」


 兵士としての訓練は最低限父から受けていたおかげで剣や槍、盾の使い方は分かるが、弓のような専門的な技術力を求められる武器の使い方なんて知らない。


「そういうことならあたしがやる」

「使えるのか?」

「一番得意なのは剣だけど、武器に関しては一通り使えるから問題ないわ」


 アイラに隠者の聖弓を渡す。

 入り口の方へ弓を向けて構える。

 その姿は、扱えると言っただけのことはあってきちんとしていた。

 矢から手を放す。すると、弓から放たれた直後に矢の姿が消える。


「は?」


 気付いた時には矢の放たれた先にある壁に矢が突き刺さっていた。


「何も気付かなかったんだけど」


 矢が放たれた瞬間には気付いたが、そこからどのような軌道を描いて壁に突き刺さったのか分からない。おまけに壁に突き刺さった瞬間の音もしなかった。


『今のが「隠者の聖弓」の効果。放たれた矢の姿を消し、音すらも喪失させることができる』

「凄いな……」


 これなら矢を射った後で相手に気付かれる心配はない。


『欠点としては、矢1本につき魔力を100ぐらい消費しちゃうことかな』


 俺たちなら問題ない。


「というわけで『隠者の聖弓』はお前に渡すよ」

「あたしでいいの?」

「他に弓を使える奴がいるか?」


 シルビアとメリッサが首を横に振っている。

 さっき言ったように俺も扱えない。


「というわけでお前が使うしかないんだよ」

『大切に扱ってよ。それだってAランクの魔法道具なんだから』


 当然、ランクに見合っただけの魔力を消費している。

 しかし、今は遺跡で荒稼ぎしてきた利益のほとんどを魔力変換で迷宮の魔力に変換させて迷宮の力へと変えている。おかげで、まだ新しい装備を出せるだけの余力がある。


『次は、これかな』


 だからと言って高ランクの装備をポンポンと出さないでほしい。


「これは?」


 新たに現れた宝箱の中に入っていた装備は、少し長めの短剣だ。

 それが4本入っている。


『シルビア、試しに魔力を流してから投げてみるといいよ』

「こう、ですか?」


 魔力を込められた短剣を投げる。

 すると、壁に突き刺さるまで真っ直ぐに突き進んだ。


「……理解しました」

『その短剣は、投げる直前に自分が思い描いた通りの軌道を沿わせることのできる短剣。ナイフの方が投げやすいのかもしれないけど、そういった機能を持たせたせいで大きくなっちゃったんだ』

「問題ありません」


 普段から短剣をメイン武器にして戦っているシルビアには短剣の投擲も問題ないらしい。

 他の3本は予備として扱う。


「私はどうしますか?」


 他の2人に新しい装備品が贈られたのだ。

 自分にも贈られると思ってもおかしくない。


『君は、魔法の練習かな』

「……え?」

『魔法の場合は装備品を与えても隠密性を上げるのって難しいんだよね。そういうわけで訓練あるのみだよ』


 目の前の景色が一瞬で変わる。

 迷宮核によって強制的に転移させられた。

 迷宮主である俺には現在いる階層の全体図も含めて自分が地下何階にいるのか分かるようになっている。


「地下45階――密林フィールドか」


 地上は冬で時には雪が降ってくるにもかかわらず、地下45階はジメジメとした温かさがあり、巨大な木や葉が生い茂っていた。

 熱帯地方でのみ生息することができるはずの熱帯植物に囲まれた世界。

 それが地下41階から45階にある『密林フィールド』だ。


「こんな所に連れて来て何をさせるつもりだ? いや、ここに連れてきた時点で何をさせるつもりなのかは分かるけど」


 密林フィールドに出現する魔物は、ほとんどが獰猛な獣型の魔物だ。

 大型の獣でも体を隠すことができるほど大きな植物に隠れながら迷い込んだ冒険者の命を刈り取る。


『武器は渡したんだから次は実戦あるのみだよ』

「そういうことですか」


 シルビアが20メートル離れた場所にある木に向かって短剣を投げる。

 短剣が突き刺さった場所には、体長1メートルを超えるヤモリのような姿をした魔物が体を休めていたが、突然迫って来た攻撃に反応することができずに体を短剣に貫かれていた。


「なら、あたしも……」


 アイラも弓を構えて次々に魔物へ向かって矢を放っていく。

 しかし、久しぶりに弓を使ったせいか上手く当てることができないでいた。それでもしばらくすれば狙った場所に当てられるようになったので練習させていれば問題ないだろう。


『で、メリッサはこっち』


 迷宮核の声が上から聞こえてくる。

 空を見上げるとシルビアとアイラの攻撃に驚いたのか鳥型の魔物がどこかへと逃げ出していた。


『ここにいる魔物は獣に近付けているから鳥は警戒心が強いよ。目標は、気付かれることなく全ての鳥を撃ち落とすことだね』

「分かりました」


 杖を使わず人差指だけを鳥のいる場所に向けると指先から圧縮された風の弾丸が発射される。

 しかし、鳥型の魔物は直前にメリッサの攻撃に気付いたらしく軌道を急激に変えて回避していた。


『ダメダメ。普通に撃っていたんじゃ絶対に当たらないよ。もっと静かに、それでいて速く撃たないと絶対に当たらないよ』

「はい」


 メリッサが額に汗を流しながら集中している。


 3人ともが訓練に励んでいる。


「俺は何をしようか?」


 迷宮核から何の武器ももらっていなければアドバイスももらっていない。

 何をすればいいのか分からない。


『君に何か必要なのかな?』

「いや、俺にだって狩りスキルはないだろ」

『でも、さっきやったように遠くから隠れて狙撃する必要があるのかな?』


 俺が本気になれば遠距離攻撃が必要な距離からでも逃げ出した魔物に追いつくことができる。それに一撃で倒せるだけの力もあるため装備品による強化や狙撃技術の訓練をしなければならない必要性が感じられなかった。

 けれど、3人が頑張っている中で俺だけ何もしないのは嫌だ!


『だったら索敵能力でも高めれば』

「いや、索敵ならシルビアがいるだろ」

『それ以上の広範囲を索敵すればっていう話だよ』


 俺もステータスが向上してくれたおかげで視力が強化されている。それでも【探知】のスキルを持っているシルビアには感覚で及ばない。


『君には、もっと索敵に使える能力があるじゃないか』

「……ああ、使い魔のことか」


 シルビアとずっと一緒に行動していたせいで忘れてしまっていた。

 迷宮主として迷宮内にいる魔物を使役することができる。

 これまでは、よく好んで街の中にいても目立たない鼠型の魔物に監視させたり、空から鷲型の魔物に遠距離を見てもらったりしていた。


「そうか、鷲に広範囲を偵察させるんだな」

『ただし、1羽や2羽じゃ足りない』


 召喚(サモン)を使用すると近くに鷲を4羽呼び寄せる。


「悪いけど、俺に協力してくれるかな」


 了解を示すように4羽の鷲が片方の翼を上げる。

 うん、賢い子たちだ。


 4羽の同時使役は、体に掛かる負担が大きくなる。

 俺にも練習が必要なことが見つかった。


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