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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第43章 呪乱商都
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第36話 呪いのエネルギー源

「ふわぁ」

「おい、真面目に仕事をしろよ」

「けどよ……」


 ある広い部屋の前で二人の兵士が警備に立っており、一人が眠そうに欠伸をしたことを咎めた。

 彼らが立っている向こうは保管庫になっている。


「昨日回収されたっていう大量の魔石があるんでしょ。ここも危ないんじゃないですか?」

「ま、さすがに回収してきた奴らもそんなヘマはしないだろ」

「本当ですか?」


 後輩の兵士は魔石が暴発してしまうことを恐れていた。もし、保管庫にある魔石が暴発するようなことになれば、保管庫の前にいる自分たちはもちろん建物どころか周囲一帯が焦土と化してしまう。

 それだけ危険な代物だと分かっていた。


 対して先輩の兵士はそれほど恐れていなかった。


「大丈夫だ。俺たちがこうして扉の前に立って誰も入れなければ魔石が暴発することなんてないんだから」


 量が量であるため暴発した時は非常に危険である。ただし、魔石の暴発が自然に起こることは少なく、こうして自分たちが侵入を防いでいれば外的要因も排除することができる。


 そう考えて先輩兵士は警備に当たる。

 先輩兵士の言葉は間違っていない。魔石の暴発など簡単には起きず、誰も入らせないようにしていれば安心だ。


 だが、彼は転移による侵入を想定していなかった。ただ、それは保管庫が結界に守られているおかげで外部からの侵入が不可能である事を知っていたからだ。


「残念。見張りに見つからずに侵入する方法ならあるんです」


 保管庫へと侵入を果たしたパスリル。

 彼の右手の人差し指にある指輪の宝石から輝きが失われて暗くなる。宝石には魔法効果が付与されており、一度だけ事前に登録しておいた場所への転移を可能にすることができ、使用すると輝きが失われる。

 近距離でのみの移動。おまけに一度しか使えない。

 それでも結界があっても阻まれることがないため、いざという時の侵入用にいくつか用意しておいた。


「ちゃんと対策はしているみたいですね」


 保管してある魔石を持って行かれないよう移動すれば警報が鳴るように仕掛けが施されていた。

 これだけの魔石を持ち去られるだけでも危険が伴う。


「ま、私には関係のない話です」


 積み上げた魔石の中に魔法効果が付与された魔石を紛れ込ませる。

 周囲にある魔力を吸い取り、対になる魔石へ魔力を送ることができる。


「これで十分」


 左手の人差し指に嵌めた指輪の力を使って保管庫から離れる。

 それが呪術を反転させる数分前の話。



 ☆ ☆ ☆



 パスリルのネックレスから強い魔力が放たれ、光の塊が3つ街の方へと飛んで行く。

 光が何を引き起こすのか気になる。

 だが、今の俺が相手をしないといけないのはパスリルの方だ。


「魔力が減ってないな」

「そもそも一般人の私では呪いから身を守るのが精一杯で、こんなに強力な魔法道具を使用するなど不可能ですよ」


 普段から使用している転移、身を守る結界を生み出す魔法道具は使用条件を設けたり、効果を限定的にしたりすることで魔力の消耗を抑えている。

 同様に呪いを暴走させる魔法道具も効果を特化させることで魔力の消耗をギリギリまで抑え込んでいる。

 ただし、それでも多大な魔力を必要とした。

 一流の魔法使いが数十人は必要になる量で、商人であるパスリルが賄えるような量ではない。


「さっきもその方法で暴走させたのか」


 老化した呪いに気を取られていて気付かなかった。

 膨大な魔力は地上まで移送された魔石から得ていた。


「そこも利用されていたか」

「その件に関しては本当に助かりましたよ」


 おそらく地下にあったままなら利用することはできなかった。だが、地上へと移動されたことで距離の制限がなくなり、自由自在に利用することができるようになった。

 不正を露見させることも目的だと言うのならラドルシア商会を潰す為、何らかの方法で手掛かりとして情報を流出させた可能性が高い。


「予想以上に早く地上へ運ばれてしまったため、想定していた以上の警備が敷かれて中へ入れないかと思いましたが、通常通りの警備だったため助かりました」


 パスリルが左腕を掲げる。

 直後、剣を打ち合わせたような音が響く。


「酷い人ですね。会話の最中ですよ」


 短剣を構えたシルビアが斬りかかった。

 しかし、パスリルの腕に阻まれて金属音が響く。


「やっぱり簡単にはいかないか」

「どうして人間の腕から……」

「おそらく【硬化】を可能にする魔法道具でも使用したのでしょう」


 以前にも硬質化して剣と真っ向から戦った者はいた。

 魔法やスキルで出来たことが魔法道具で出来てもおかしくない。


「シルビア。お前に二つ目の依頼を任せていいか?」

「頼まれたので攻撃しましたけど、何を依頼されたのですか?」


 会話をしている間に隙があったら斬りかかるよう伝えていた。ただ、その際に殺してしまわないよう注意するようお願いもしていた。

 新しい依頼は、そういう依頼だ。


「依頼は二つ。暴走している呪いの鎮圧とパスリル・トレイマーズの捕縛だ」


 生きたまま捕らえることを望んでいる。

 どうやら友として話をしたいみたいで、捕らえることを望んでいる。


「俺はあっちをどうにかしてくる」


 真っ先に向かっていれば、強い力を放っていた保管されている魔石にも気付くことができたかもしれない。

 おそらく、俺が向かおうとしたときは魔力を流す方もしくは受け取る方で準備が出来ていなかった。だから会話をすることで少しでも時間を稼ぎたかったのだろう。街にある呪具を暴走させるとなると多くの魔力が必要になる。


「――聞いていたな」

『はい。状況は理解しています』


 メリッサからの返事。

 同時に【迷宮同調】で彼女の見ている景色が俺の視界にも投映される。


 都市の東側で巨大な鎧が出現し、巨大な剣を振り回している。

 西側ではマグマかと見紛う真っ赤な液体が溢れ、触れた物をドロドロに溶かしている。

 北側では突如として濃霧が発生している。

 悲鳴も聞こえてきており、被害は拡大を続けている。


「一つ一つ対処している時間的な余裕はない。全員で手分けして潰せ」

『アレも含めるのですか?』

「ああ。契約時はルヴィア一人だけだと思っていたから『都市で暴走する呪いの鎮圧』としか約束していなかったんだ」


 ルヴィア以外に三つも出現するとは思っていなかった。

 想定されていなかった、そう言ってしまえば契約内容通りだったと言い通すこともできる。


「ま、これぐらいはサービスしてやろう」


 建物まで近付いたところで魔力を解放する。


「やっぱりな」


 見える範囲にいた触手が一斉に俺の方を向く。

 触手の目的は生命力の吸収。魔力を放出したことで触手の意識を釣り上げることに成功した。これで建物の中にまだいる人たちの生還率が高くなる。


 右手で神剣を持ち、左手で魔法を放てるよう魔力を集中させる。

 襲い掛かってきた触手を神剣で斬り捨て、左手から炎を出して燃やし尽くす。


「街の方はそっちに任せる――上手くやってくれることを祈るよ」

『異世界コレクター~収納魔法で異世界を収集する~』コミカライズ!

第1話が更新されたので、よかったら読んでみてください。

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