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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第42章 幻惑契約
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第9話 盗賊への奇襲

「へいっ!」


 大きな声を上げて木で造られた扉を蹴り飛ばす。


「な、なんだ!?」

「敵襲だ!!」

「全員、迎え撃てっ!」

「遅い」


 入口の近くにいた盗賊に向かって、蹴り飛ばした時にできた扉の破片を蹴って頭に当てる。


「へぶっ!」


 頭に強い衝撃を受けた盗賊が気絶して倒れる。


 改めて自分の目でも洞窟の奥にある広間の様子を確認する。

 広間にいるのは26人。今、一人を気絶させたから残りは25人だ。


「分かってるな」

「もちろんです」

「全員、死なせることなく無力化しろ」


 入口にいた盗賊を眠らせた時は情報を得る為だった。

 だが、リタから話を聞いた今は別の理由でも殺す訳にはいかない。


「操られているだけだっていうのに、無理矢理盗賊に協力させられているだけの人たちを殺すのは忍びないからな」

「何を言っている!」


 俺の言葉が聞こえた近くにいた男が剣を手にして斬りかかって来る。


「耳がいいんだな」


 斬りかかってきた男に対する言葉ではない。

 奥の方で、盗賊団のボスと思しき男たちの何人かが後退っていたのが見えたからだ。

 彼らは操られているだけの人間が無力化されるだけで終わることには気づいた。ただし、協力させている自分たちがどのような目に遭うのかは分からない。

 それでも、今の状況を思い出して気を奮い立たせる。


「バカが! テメェらを倒せばいいだけの話だ!」


 盗賊団のボスは馬鹿ではない。最初の一撃で俺との間に力の差がどれだけあるのか理解した。


「それができればいいな」


 斬りかかってきた盗賊の剣を自分の剣で受け止めて刃の上を滑らせる。


「え……?」


 まるで引き寄せられているかのような錯覚を覚える盗賊。

 戸惑っているところに剣の柄を叩き込むと気絶して倒れる。


「二人目」


「「うおおぉぉぉ!」」


 気絶した盗賊に隠れるようにして二人の盗賊が襲い掛かって来る。

 剣とガントレット。気絶して地面に転がすこととなった剣を足で剣を手にした盗賊へ飛ばす。咄嗟に自分の剣で防御する盗賊だったが、防御したせいで足を止めることとなってしまった。

 同時に襲い掛かるはずだった二人。殴り掛かろうとしていた盗賊の胸倉をつかんで引き寄せると地面に叩きつける。


 上から押さえつけて動けないようにする。


「この……!」


 どうにか逃げ出そうとする盗賊だったが、どれだけ力を込めてもビクともしない。

 剣で襲い掛かろうとしていた盗賊もイリスの手によって気絶させられている。


「こうして接すれば『命令』された奴なのかは分かるな」


 暴れていた盗賊だったが、魔力を注がれれば【睡眠】によって意識を手放してしまう。

 その間にも8人の男が襲い掛かってきたが、全員シルビアとイリスによって意識を眠らされている。


「残りは14人。お前たちはどっちだろうな」


 奥にいる盗賊を守るように4人の盗賊が立ちはだかる。


「へっ、どういうつもりなのか知らないが、そいつらを殺すつもりはないんだろ。だったら利用させてもらうまでだ」


 盗賊団のボスが側近の一人を連れて奥へと向かう。

 壁しかないはずだが、進行方向にはアイラが待つ洞窟の入口がある。どこかに隠し扉がある。


「おっと、動くなよ」

「へ……?」


 側近の一人が困惑から声を漏らしてしまう。

 今、彼は引き寄せられたことで密着した状態になり、首に腕を回されて羽交い締めにされていた。


「カシラ?」

「もう分かっているだろ」


 ボスの目は俺たちに向けられていた。


「なるほど。そいつも操られていただけか」


 広間で繰り広げられていた宴会の様子は魔物の目を通して見させてもらっていた。

 側近は盗賊団の第2位といった様子で、ボスと本当に親密だった。ただし、その信頼関係も洗脳によって作られたものだった。


「カシラ……」


 側近も自分たちが商売品である奴隷をどのように調達しているのか知っている。

 だから、自分たちが他者を洗脳する術を所持している事を知っている。

 知らなかったのは、自分も洗脳された対象だった事ぐらいだ。


「行くぞ――」


 盗賊団のボスに二人の男がついて行く。

 二人も洗脳されている可能性はあったが、本当の意味で盗賊だったのは3人しかいなかった。


「随分と小規模な盗賊団だったんだな」


 話を聞けば組織的な行動ができる盗賊団だった。実際、数十人の盗賊がいたのだから大規模な盗賊団であることは間違いない。

 ただし、自分の意思で盗賊になったのはたったの3人しかいなかった。


「さて、どうするか」


 逃げるボスを捕まえようとするなら、立ちはだかる盗賊をどうにかする必要がある。しかし、洗脳されているだけの人たちを傷つける訳にはいかない。


「わたしが行きます」


 奥に向かってシルビアがゆっくりと歩き出す。

 盗賊たちは女性が相手と知って厭らしい笑みを浮かべ――


「は?」

「どこ行った!?」


 一瞬の間にシルビアの姿を見失う。

 すぐさまシルビアを探す盗賊たちだったが、後ろから聞こえてきた轟音に意識が引き寄せられる。


「が、は……」

「なに、が……?」


 ボスと共にアジトを去ろうとしていた二人の盗賊が壁に叩きつけられていた。


「いつの間に!?」


 逃げようとしていたボスも聞こえてきた轟音に逃げるどころではなくなる。


「次はあなたの番。早くその人を解放して」

「く、来るなっ!!」


 足止めに立ちはだかった盗賊とボスの間にはシルビアが立っていた。

 背を向けていたボスだったが、シルビアを含めた俺たちが向こうにいたのは間違いないと確信を持っていた。

 それは間違いではない。シルビアは、たしかに一瞬前まで離れた場所にいた。


「こいつがどうなってもいいのか!?」


 不気味な女。

 困った末にボスは人質にしていた側近にナイフを突き付けた。

 捕らわれていた盗賊が軽蔑するような目をボスへ向ける。


「へ?」


 しかし、視界が一瞬にして変わったことで戸惑う。

 視線の先にはボスではなくシルビアがおり、密着していたはずのボスは離れた場所にいる。

 ボスも当然ながら密着していた相手がいなくなれば気が付く。


「何をしやがった!?」

「さあ、なんだと思う?」

「……!!」


 馬鹿にされたと思ったボスが声を張り上げる。


「おい、その女をこ--」


 しかし、その命令が最後まで紡がれることはなかった。


「こうしちゃえば命令なんてできないでしょ」


 ボスはシルビアから目を離していなかった。

 だが、気付いた時には眼前まで迫っており、伸ばした手によって口が塞がれていた。


「おい、使い過ぎだぞ」


 立ちはだかる盗賊たちの意識を集めながらシルビアに注意を促す。


「大丈夫です。もう終わりですから」


 盗賊団のボスが【睡眠】によって眠らされる。

 ボスの戦闘不能。それはボスを頂点とした集団においては致命的なダメージとなる。


「おい、どうするんだよ」

「俺に聞かれたって……」

「うっ!」


 困惑する盗賊たちが次々に倒れていく。

 イリスが冷気に混ぜた【睡眠】を吸い込んだことで意識を保つことができなくなっていた。


「この程度の【睡眠】で倒れるなんて」


 そんな使い方をすれば効果が弱まる。

 それでも眠ってしまったのは男たちのレベルが低かったからだ。


「忘れているかもしれないけど、私たちが苦戦するような相手は世界でもトップクラスの強者ばかり。こいつらも一般人と比べれば脅威になるんだろうけど、私たちの力に耐えられるはずがない」

「はい」


 漂ってくる冷気の濃い場所に捕らえられていた盗賊をシルビアが置く。

 しばらくすると【睡眠】によって意識が落ち始める。


「起きた頃には元の生活に戻れるようになっていることを祈っておいて」

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