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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第42章 幻惑契約
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第7話 盗賊捜索

 崖の下でポッカリと口を開けた洞窟。さらに森が広がっているため洞窟の存在を知る人は少ない。

 街道から離れていない場所にあるにも関わらず、知る人が少ないのにはそのような理由がある。

 洞窟の入口には見張りが二人。


「くわぁぁ……」


 退屈から欠伸をしている。

 こんな人目につかない場所で見張りをする理由は、野生の魔物が匂いに引き寄せられて来た時ぐらいだ。

 だが、彼らにとって森に出没する程度の魔物ぐらいなら奇襲さえ受けなければ対処できる程度の相手でしかない。どうしても気が抜けてしまう。


「うん……? 交代か」

「おう、お疲れ」


 洞窟の奥から別の男が現れて欠伸をした男に近付く。


「ボスたちは今日も酒盛りだぜ」

「はっ、前からは考えられないくらい儲かっているからな」

「それもこれもアレのおかげだぜ」


 笑い合う二人の男たち。


「おい、どうした?」

「ちょっと、な」


 その様子を見ていたもう一人が洞窟から離れて森へと近付いていく。


「げっ、またかよ」


 茂みを掻き分けた向こうに蜘蛛がいるのを見つけた。

 森にいるのだから虫がいるのは仕方ない。


「それにしても今日は多いな」


 洞窟から出てきた男が呟いた。

 いくら森にいると言っても普段より蜘蛛の姿を見掛ける回数が多い。


「このやろ」


 男が蜘蛛に向かって苛立ちを鎮めるためナイフを振り下ろす。

 しかし、ナイフは蜘蛛に当たらず、地面に刺さっていた。


「は……?」


 夜になって月明かりだけが頼りの真っ暗な森。

 狙いが外れてしまうこともあるが、見てしまった蜘蛛の避け方が不自然で仕方ない。


 サッと横に跳んでナイフを回避する。

 しかも、空振った男に向かって足を挑発するように動かしている。


「この……!」

「おい」


 見張りの男が呼び止めるのにも関わらず、男が蜘蛛を追って森の奥へと消える。


 ――すぐに戻って来るだろう。


 そんな考えで待っていたが、男が戻って来る気配はない。

 次第に不安になった二人の男がお互いの顔を見合わせる。


「「……!?」」


 しかし、二人が見たのは相手の顔ではなく、相手の後ろへ忍び寄る何者かの影だった。


 次の瞬間、自分の口が塞がれるのに気付いた。

 慌ててナイフを引き抜いて攻撃をしようとするが……


「――2、1」


 耳元でカウントされる数字を聞いているうちに二人とも意識を手放してしまう。



 ☆ ☆ ☆



「よし、こんなものでいいだろ」


 足元で意識を失って倒れた男を見下ろしながら呟いた。

 正面には俺と同じように【迷宮魔法】でもう一人を昏倒させたイリスがいる。


「でも、眠らせるだけでいいの?」


 【迷宮魔法:睡眠(スリープ)

 対象に触れる必要があるものの、数秒間触れるだけで相手を眠らせることができる魔法だ。

 普段なら盗賊を相手にした時は態々眠らせるような真似はしていない。


「理由ならちゃんとある」


 今回の盗賊が正体不明である事。拠点にボスや幹部もいるらしいが、彼らが素直に情報を吐いてくれるとは限らない。

 今回は情報の入手を最優先に動く必要があるため少しでも多くの相手を必要としていた。


「こちらも確保しました」


 森の奥からシルビアが姿を現す。

 その手には蜘蛛を追いかけて行った男が抱えられており、彼も眠っていて他の男たちの近くに放り投げられる。


「そんなに落ち込むな」


 シルビアの足元に向かって声を投げ掛ける。

 すると、後ろに隠れていた蜘蛛がこっそりと顔を出す。


「仲間が心配だったんだろ」


 尋ねると頭を縦に動かす。

 目の前にいる蜘蛛は司令蜘蛛(コマンダースパイダー)。姿は普通の蜘蛛と変わらないが、自分よりも下位の蜘蛛を指揮下に置くことができる知能の高い蜘蛛。

 今コマンダースパイダーは洞窟の奥に放った指揮下の蜘蛛を心配していた。


「【地図(マップ)】」


 スキル名を唱えれば視界に入り組んだ洞窟の地図が表示される。

 事前に予想した通り初めて入れば迷ってしまうことが確実な洞窟だ。


「お前の部下が頑張ってくれたおかげで盗賊のアジトの場所を突き止めただけじゃなくて、アジトの様子まで手に取るようになったよ」


 屈んで頭を撫でてあげるとコマンダースパイダーの顔が綻ぶ。

 二手に分かれて盗賊のアジトを探すことになった。しかし、探索範囲は広範囲なままだ。早々に終わらせたいため手当たり次第に探すこととした。

 大量の蜘蛛型魔物を放っての探索。蜘蛛なら森や山にいても不思議ではなく、見掛けても避ける人が多い。

 こちらの問題としてはシルビアたち女性陣まで避けてしまったことぐらいだ。


「アジトの場所は分かりましたが、この状況はどうしますか?」


 洞窟内には蜘蛛の魔物を放っている。蜘蛛の魔物が見た光景はコマンダースパイダーへと送られ、地図だけでなく現在の状況も分かるようになった。


 洞窟――アジトの内部に鉄格子で塞がれた牢がある。かなり古い物で、洞窟を最近になって拠点にするようになった盗賊が造った物ではない事が伺える。以前に誰かが造った物だ。

 牢の中には複数の人が閉じ込められている。女の子の姿も確認することができ、誘拐された貴族令嬢の可能性が高い。

 助ける、と約束してしまった。


「見殺しにする訳にはいかない。人質の救出を最優先に動くぞ」

「了解です」


 牢の前には見張りに3人の盗賊がいるが、問題ではない。

 ただし、洞窟の奥にいる多くの盗賊たちに気付かれてしまうのは問題だ。気付かれることなく無力化する必要がある。


「逃げられると面倒だ。だけど、万が一にも逃げられた場合にはお前らが仕留めろよ」

『うん』

『かしこまりました』

『任せて』


 離れた位置から念話が飛んでくる。

 洞窟で最も大きな出入口は俺たちのいる場所だが、他にも3ヶ所の出入口が存在している。洞窟の奥へ進めば出られるようになっており、そこから外へ出られてしまうと再び見つけるのが面倒になってしまう。

 そこでアイラ、メリッサ、ノエルの3人には万が一にも取り逃がすことがないよう出入口で待機してもらっている。


 こういう洞窟へ攻める場合、見落とした出口から逃げられる危険がある。

 だが、蜘蛛が先に偵察をしてくれたおかげで見落としもない。さすがに隠し扉のような仕掛けがあった場合には見つけられないが、すぐに逃げられるような出入口は他にない。


「最優先目標は人質の安全確保。その後、盗賊を殲滅するぞ」

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