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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第42章 幻惑契約
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第1話 パーティーの少女

 グレンヴァルガ帝国の城で開かれているパーティー。


「やっぱり落ち着かないな」

「まあ、たまにはいいではないですか」


 パーティーに参加するとあって俺が来ているのはスーツ。

 隣には黒いドレスに身を包んだメリッサがいる。

 今日は全員が招待されており、全員というのは……


「おいしい!」

「わぁ、きらきら!」

「こらこら……」


 子供たちが初めて参加するパーティーに顔を輝かせている。

 そんな中にあってシエラだけは落ち着いており、早速ケーキを頬張って口の周りをクリームで汚してしまった弟をハンカチで綺麗にしている。


 豪勢な食事、色鮮やかな飲み物が並べられている。

 参加者たちは美しいスーツやドレスに身を包んで談笑する。

 子供たちが憧れる夢のようなパーティー。


「遊んできていいぞ」

「わぁい!」


 許可を出すと近くにいた子供たちが思い思いに散っていく。

 それぞれ好きなお菓子やジュースは違う。散らばるのは当たり前なんだが、親としては心配せずにはいられない。人数は多くてもグループに分かれて行動しているため、シルビアたち母親がそれぞれついて行くこととなった。


「楽しんでいるか?」

「ああ」


 シルビアが持ってきてくれたシャンパンを飲みながらパーティー会場を眺めていると主催者であるリオが近付いてきた。

 今日のパーティーは皇帝主催のパーティー。地方の貴族も招いて盛大に開かれていた。


「貴族連中はパーティーが好きだからな。こうして息抜きに開いて機嫌を取ってやらないと面倒なことになるからな。今は北部の貴族に借りがあるから必要なんだ」

「もしかしてオネイロス平原の事か?」


 ガルディス帝国の崩壊によって多くの難民が発生した。

 ただし、難民を受け入れるわけにはいかなかったグレンヴァルガ帝国は、緩衝地帯だったオネイロス平原に難民を受け入れ、それより先へは許可された者でなければ入ることができないようにした。

 その為の人手は国からも出しているが、北部の貴族からも借りなければ足りないほどだった。


「あれから5年も経過しているけど、復興は全体を見れば少ししか進んでいない。年々、治安は悪化する一方だ。その内、暴発するんじゃないかって考えている」

「それは……」


 今から心配しても仕方ない。

 ただ、もし暴発した場合に対応することになるのは北部の領地を治めている貴族たちだ。

 借りを作ることになることが分かっているからこそ、今から機嫌を取ることにしている。


「ま、連中の目的はそれだけじゃないけどな」


 リオの視線が護衛に守られた息子のガーディル君に向けられる。


 皇太子ガーディル。

 リオの子供の中で貴族出身なのは皇妃となったカトレアさんだけだ。いくらリオが特例で認められた皇帝とはいえ、血統を気にするのが貴族だ。彼らを納得させるため次の皇帝はカトレアさんとの間に生まれた子供でなければならない。

 幸いにして第2子、第3子も無事に生まれている。全員が男の子であるため次代に不安はない。


 貴族が最も気にしているのは、次々代の話だ。

 ガーディル君が次の皇帝になるのは事故でもない限り確定。


 なら、次の皇妃になるのは誰なのか。

 貴族は自分の娘を相手に選ばせようと躍起になって、同年代の娘をガーディル君の傍に派遣している。

 こういう場で親が出て行ってもガーディル君の心を射止めることはできない。娘と仲良くなってもらい、ガーディル君が自分から選んでもらうように仕向けなければならない。


 今、ガーディル君の傍には着飾った貴族令嬢がいた。

 全員が幼いながらに自分の役割を認識している。


「可哀想に」

「自分の子供なのに他人事だな」

「俺からアドバイスできる事なんてないからな。俺も皇帝の子供ではあったけど、貴族社会ではいないものとされていたから令嬢から言い寄られる経験なんてない。一般的なアドバイスならできるけど、経験を伴っていない俺の言葉なんて困っているガーディルの心に響かないだろ」


 困ってはいても邪険にするわけにはいかない。

 愛想笑いをしながら貴族令嬢の対応をしている。

 離れた場所では母親であるカトレアさんが次男を連れて貴族たちと挨拶をしている。ただし、一人で対応しているガーディル君の事が心配でチラチラと見ている。

 ここは未来の皇帝としてガーディル君が頑張らなければならない場面だ。


「言い寄っている彼女たちには悪いけど、未来の皇妃は決めているんだよな」

「……本気なのか?」

「少なくともガーディルは本気のつもりだ」


 ガーディル君が相手に考えているのは当家の長女であるシエラ。

 今も貴族令嬢に囲まれながら時折シエラのいる方を向いている。パーティーに参加するということで赤いドレスを纏い、少しだけ化粧をさせてもらっていたため今日のシエラは大人びて見えた。


 シエラは見られていることに気付いていた。

 けれども、皇太子に自分が話しかける訳にもいかない、とヴィルマを連れてパーティーに参加していた。


「あの子は大丈夫なのか?」

「ちょっと体調が悪かっただけだ」


 今朝になって体調を崩してしまったヴィルマ。

 だが、パーティーへの参加を楽しみにしていたため強情に参加すると言い張っていた。

 そんな状態の妹を無視できなかったシエラ。

 あの子の提案でシエラが傍にいて面倒を見る事を条件にパーティーへの参加を認めることとなった。


 二人の後ろの方ではイリスがハラハラしながら見ている。

 それと言うのも、ヴィルマの体調以外にもシエラが貴族令嬢と話をしているからだった。ただし、遠くから見ている分には仲良くしているように感じる。


『それが--』


 一部始終を見ていたイリスが念話で説明してくれる。

 最初は見たことのない女の子に貴族令嬢たちが話しかけてきた。生まれながらの貴族令嬢。彼女たちは物心ついた頃からの顔見知りであり、パーティーには何度も一緒に参加した経験がある。

 そんな状況で見たことのない相手がいれば警戒して当然だ。


「それが数分前の出来事なんだよな」

『うん……』


 改めて確認する。


「じつは、となりのヴィスル家のあととりとえんだんの話がありまして……」

「まあ、すばらしいじゃない」

「ただ、さいきんのヴィスル家はりょうちがかんばしくないらしく不安なんです」

「不作のはなしはわたしも聞いています。ただ、その土地でのさいばいにてきした作物が最近になって作られるようになっています。ていあんしてみるのは、どうでしょう?」

「まあ!」


 シエラが領地経営のアドバイスをしていた。


「ネディアさまはあととりですからいいですよ。わたしなんて子爵の四男です。あの方は、きしになるつもりみたいですけど……」

「きし様はあるじをまもるりっぱな仕事ですよ。そんな人とけっこんするんですから、あなたも覚悟をもって家を守らなくてはいけません。わたしの叔母もきしを夫にもつ妻ですけど……」


 恋愛相談にも乗っていた。

 気付けばシエラの傍に貴族令嬢が集まるようになっており、アドバイスを受けるようになっていた。


 え、本当になにこれ……?


『私もビックリ。屋敷で子供たちの喧嘩を仲裁したり、外で友達の相談に乗っていたりしていることは知っていたけど、貴族相手にもできるなんて……』


 貴族令嬢にとっての主役はガーディル君であるはずだった。

 だが、気付けば貴族令嬢の注目はシエラに集められていた。おかげでガーディル君も解放されて息をつくことができるようになった。


「うん?」


 ガーディル君に向かってシエラがウインクする。

 彼は気付かなかったけど、シエラから合図が贈られた。


「悪いな」


 リオもシエラのウインクに気付いた。

 困っていたガーディル君を思いやっての目立つ行動でもあった。


「いや、あの子の場合は話を聞いている内に困っている女の子を放っておけなかっただけな気がする」


 普段から弟妹の面倒を見ているシエラ。

 困っている人がいれば見過ごすことができないようになっていた。


「おねえちゃん」

「あ、ごめんね。この子はヴィルマ。なかよくしてあげてね」

「ヴィルマです。よろしく、おねがいします」

「まあ、かわいい」

「きゃっ!」


 小さな子が挨拶する姿を見て令嬢の一人がヴィルマをギュッと抱きしめた。


「なかよくしてあげてね」

「はい!」


 初めて会ったとは思えないほど親しくなっている。


「これは、なかなか……」


 貴族令嬢の注目を集めるシエラを見ながらリオが呟いた。

 お久しぶりです。

 繁忙期が終わって……終わってると思ったんだけどな。忙しい中でも気分転換に書いていたものを投稿です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヤッター!再開だーー! [一言] あの元お転婆が成長したなぁ…… ヴィルマは、うん。父親の血筋かね?
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