表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第41章 燈篭悪魔
1262/1458

第29話 みんななかよく

後書きにて重大報告があります。

「ただいま」


 ミシュリナさんとの話し合いを終えると屋敷へ【転移】で戻る。

 移動時間は一瞬。まだ昼食を終えたばかりなはずだ。


「そういえば朝は何も食べていなかったから腹減ったな」

「簡単に何か用意しますね」


 リビングからキッチンへ向かおうとするシルビア。

 だが、リビングへ入る直前になって中が騒がしいことに気付いた。聞こえてくるのは子供の言い争う声だ。


「喧嘩?」


 べつに珍しいことではない。

 屋敷には13人もの子供が生活している。それだけ多くの子供が一緒にいれば喧嘩など日常茶飯事だ。


「どうしたの?」

「おかあさん」


 ソフィアが母親の帰りに気付いて抱き着いた。

 喧嘩しているのはリエルとノナちゃん。


「あのね……」


 言葉足らずながら説明してくれた内容によれば昼食の後で出したデザートが原因だった。どうやら数を1つ足りない状態で出してしまったようで、一人3個まで食べていいところをリエルがノナちゃんとティナちゃんの分と同じ皿に乗っていたのを間違って多く食べてしまった。


 デザートは市場で売っていたバナナを一口サイズにカットしたもの。

 これぐらい買い直すぐらいの金銭的な余裕はある。ただし、子供たちにとってきちんと貰えることなど重要ではなくなっていた。取られたノナちゃんは謝ってほしい、取ったリエルは怒られていることを面倒臭く思っている。


 リエルの方を向いて怒っているノナちゃんに対して、リエルの方はそっぽを向いて聞く気が全くない。


「お帰りなさい」

「ただいま」


 母が俺たちの帰宅に気付いて近付いて来た。


「ごめんなさい。ちょっと目を離した隙にケンカになっちゃって」

「気にしないでください。全員の面倒を見続けるなんて無理ですから」


 奥の方を見るとティシュア様が膝の上にセラフィを置いて少しずつ食べさせていた。手の掛かる小さな子がどうしても優先されてしまう。


「あの二人がケンカをするなんて珍しいな」

「うん。年だけじゃなくて見た目も近いから一番姉妹っぽいもんね」


 ケンカもせず、仲良くしていたところしか見たことがない。


「しばらく放っておくしかないかな」


 お昼を食べ終えて眠くなったのかソファでウトウトしているノアトを抱き上げて獣人姉妹のケンカを見守っている。

 多くいればケンカをすることもある。無理に仲裁するのも悪手だ。


「もう、おねえちゃん!」

「おねえちゃんなんかじゃないもん」

「……やっぱり、ノナが妹じゃないからきらいなんだ」

『!?』


 ノナちゃんの言葉にリビングにいた多くの者が反応してしまった。

 言われたリエルが「あちゃあ」といった顔をしている。


「それは言っちゃいけないな」


 屋敷にいる子供たちは本当の兄弟姉妹のように育てているが、中には従兄弟のような関係にある者もいる。

 そして、最も血縁関係が薄いのがノナちゃんだ。

 ノナちゃんにとってリエルやノアトが姪や甥に当たるが、他の子供たちは血縁関係にない。

 それでも屋敷で生活する子供は等しく育ててきた。


「ノンさんは?」

「今日は仕事で出掛けているわ」


 母親不在の寂しさ。それもあってノナちゃんの不満が爆発してしまった。


「よし、ノエルに任せた」

「え、わたし!?」

「お前が姉だろ」


 正真正銘の姉だ。

 姉妹の認識の違いから生じてしまったケンカなら本物の姉がどうにかするべきだ。


「さすがにさっきの言葉はマズいだろ」


 ケンカを放置していたのは後々の為にも不満を吐き出させる為だ。

 だが、先ほどのノナちゃんの言葉は、このままにしてしまうと後々まで尾を引きそうだ。


「そうなんだけど、あの子はわたしにとって娘も同然なんだけど」


 少し前に生まれたリエルの妹のように扱ってきた。

 そのせいで『妹』として見ることができなくなっていた。


「もういい! リエルちゃんなんてきらい!」


 リビングを出て行こうとするノナちゃん。

 リエルも幼いながらにノナちゃんの立場を理解していた。だから自分の口にしてしまった言葉が傷付けた事を理解している。だが、ケンカをしている最中の言葉だけに簡単に認める訳にはいかない。


「仕方ない」


 一応は父親代わりである俺がどうにかするしかない。


「わふっ」


 前を見ずに走っていたことで目の前に立ったシエラに気付かずぶつかってしまった。

 立ち上がった腰をソファに落ち着かせる。


 本物の姉、年齢の近い姉は頼りにならなかったが、長女は頼りになる。


「どこ、いくの?」

「どこだっていいでしょ!」

「そんなことないよ。ノナがいなくなったら、おねえちゃんたちが心配するよ」

「ううん、ここの子じゃないもん」


 一人だけ疎外感を感じてしまっていた。

 仲間外れに近い感覚。ただし、相手も仲間外れにしているかと言えばそんなことはない。


「ノナはウチの子だよ」

「でも……」

「リエルもノナもおねえちゃんの『妹』だもん」


 シエラにとって誰の子かなんて関係ない。

 屋敷で生まれた子供は等しくシエラの弟か妹だ。

 そこだけはシエラにとって譲れない。


「うん」

「じゃあ、ごめんなさいしようか。リエルはノナのおねえちゃんだよ」

「……ごめんなさい」


 ノナちゃんに謝らせるとリエルの方へ向かう。


「リエルもあやまろうか」

「けど……」

「おかしを多くたべたのはほんとうでしょ」

「……ごめんね」


 今度は二人を近付けると、両方の手を取って握手をさせる。

 仲直りの握手。二人とも『おねえちゃん』のお願い、ということで素直に仲直りしていた。


「みんな、なかよく」

「うん」

「……ん」


 シエラが弟妹を仲直りさせる時の言葉。


「ごはんも食べたし、おそとへいこう」


 長女が号令を掛ければ妹たちが従う。

 無邪気に遊んでいれば諍いも綺麗に忘れるだろう。


「平和なんて簡単なのかもしれないな」

「え?」

「夢魔は害になる奴を追い出して、人々に平等な生活させることで平和な世界を作り出そうとしていただろ」

「うん」

「けど、色々な人がいても平和は実現できるんだよな」


 庭で駆け回っている子供たちの姿を見ていると実感できる。

 ケンカをしたとしても自分の過ちを認めて謝る。それさえすることができれば、対立していても手を取り合うのは不可能ではない。


 ただし、当事者だけで行うのは難しい。

 どうしても解決しなければならない場合には仲裁する人物が必要になる。


「手と手を取り合う。シエラみたいに率先して引っ張って行ってくれる人がいれば世界は違ってくるのかもしれないな」


これまで3年以上も続けてきた毎日更新ですが、12月からは繁忙期になるため上司から毎日更新を止めるよう言われました。

今後はストックが貯まり次第更新して行こうかなと考えています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[良い点] シエラちゃん、どんな女性に成長するのか今から楽しみですね! [一言] むしろいままで毎日更新お疲れ様でした!! たくさんお仕事して来てくださいね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ