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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第41章 燈篭悪魔
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第13話 眠る聖女

 広い空間であるはずの聖堂。

 しかし、今の聖堂は多くの人が寝かされて埋め尽くされていた。木を組み立てただけの簡素なベッドが並んでいる。既に予想していた患者の数を超えてしまった。それでも受け入れると言ってしまったため受け入れざるを得なかった。


「こちらです」


 クラウディアさんが案内してくれたのは聖堂の奥にある個室。

 『聖女』と関係者だけが入ることの許された私室。


「失礼します」


 鍵を使って開錠すると断りながら部屋へ入る。

 もっとも、部屋の中から返事が返ってくることはない。


「彼らを連れて参りました、ミシュリナ様」


 大きなベッドの上で寝かされているミシュリナさんに向かってクラウディアさんが言う。

 予想はしていたが、やはり彼女も眠らされていたか。


 寝かされたミシュリナさんの格好は寝間着。男である俺が近くで見続けている訳にもいかないため俺だけ部屋の隅へ移動する。


「事情を説明させてもらってもよろしいでしょうか」


 事の発端は半年ほど前。

 教会に眠り続けたまま起きることのない男性が運び込まれてきたのが始まりだった。その時は大事になるとは思っておらず、原因不明であるため経過を観察することに決めた。

 それから1カ月ほどして同じ症状が十数人に現れるようになり、2カ月後には数十人になっており、3カ月が過ぎる頃には数百人が眠りに就いていた。


 尋常ではない事態に教会も本格的に動き、『聖女』であるミシュリナさんも事態解決の為に看病していた。


「ですが、解決される兆しが見えないまま過ごしているうちにミシュリナ様まで眠り続けるようになってしまいました」


 『聖女』の姿は人々にとって希望そのものだ。

 そんな中、『聖女』まで倒れたと知られれば大変な騒ぎになる。


「その点は問題ありません」


 クラウディアさんが以前はしていなかった桃色のイヤリングに魔力を流す。

 すると、クラウディアさんの顔がミシュリナさんへと変わる。


「『変装』の魔法道具です」


 変わるのは顔だけ。けれども、幸いにして二人の体格には大きな違いがある訳ではないため誤魔化せる。


「この方法で誤魔化してきましたが、私にはミシュリナ様のような奇跡はできませんから限界が近かったです」


 クラウディアさんも忙しく、ミシュリナさんは寝続けているためこちらからの連絡に出ることができなかった。


「それで、どうやって途中の村で少年を助けたのか教えていただけますか?」

「まず、この奇病の原因から説明することにしましょう」


 眠り続けているのは魂が肉体にないことが原因。

 そして、どこかを彷徨っている魂を連れ戻すことができれば目覚めさせることは可能。

 問題は、連れ戻す手段が失われてしまったことだ。


「なるほど。ミシュリナ様の考えは間違っていなかったのですね」

「考え?」

「はい。ミシュリナ様は眠ってしまう直前に『夢に囚われている』と言っていました」


 メリッサの疑問にクラウディアさんが眠る直前の言葉を教えてくれる。

 夢――ドル君が迷っていた場所が『夢の世界』なんだとしたらひどく禍々しい夢だ。


「その後、私に何かを言うこともなく自然と眠りに就くと起きなくなってしまったのです」


 ベッドを撫でる。

 その時も眠りに就くミシュリナさんを見ていたのだろうが、まさかこのような事態になるとは予想もしていなかった。


「もしかしたらミシュリナ様もそこにいるかもしれません。どうか連れ戻してください!」


 悲痛な表情のクラウディアさんがノエルの手を取って訴えてくる。

 それだけ『聖女』不在の状態は逼迫している、ということだろう。


「でも……」


 入る方法がない。


「……っ!」


 断ろうとしたところでノエルの体が跳ねる。


「ノエル?」

「いいえ、この子の体を借りさせてもらいました」


 ノエルの口から紡がれたのはティシュア様の言葉。

 力を失ってから5年以上の時間が流れたことで少しは回復してくれたため、こうしてノエルと同調することで離れた場所にいながら言葉を伝えることぐらいはできる。

 それにノエルの目を通してこちらの様子も理解している。


「状況は理解しています。あの世界へ入ることはできませんが、寝ている彼女の状況を知ることはできます」

「本当ですか?」

「はい。ドル君とミシュリナでは状況が違います。あの世界は、言わば夢の世界へ誘う為の通路にすぎません」


 ドル君は連れ去られたばかりだったからあのような世界にいた。

 だが、連れ去られてから時間が経った人たちはもっと深い所にいる。


「どうやるんですか?」

「簡単です。こちらから入り込むのではなく、こちらへ引き込んでしまえばいいのです」


 次の瞬間、体の支配権がノエルに戻ってしまう。

 ある程度は回復したと言っても神として振る舞うことができるのは本当に短い間だけだ。今は子供たちと遊んでいる。


「大丈夫。何をするのかはわたしが分かっている」


 体を明け渡している間、意識は共有している。

 ティシュア様が思い浮かべていた事はノエルも共有していたため方法は頭に思い描かれていた。


「【世界】を」

「まあ、いいけど」


 スキルを使用すると部屋の時間が停止する。

 クラウディアさんも時間停止の影響を受けてしまうので対象から外す。


「これは……」

「俺のスキルで時間を停止させました。で、ここからどうするつもりだ?」

「発動――【神域領域】」


 それは、『巫女』であるノエルが【世界】を得たことで発動させることができるようになったスキル。

 自らの信奉する神の力を停止した世界に上塗りすることができる。

 ノエルを中心にティシュア様の心象世界が広がっていく。


「これが……?」

「なんていうか、明るいあの人のイメージに合わないと言うか……」


 俺だけでなくシルビアやアイラが困惑している。

 白い床や壁が荒涼とした大地へと変わり、まるで荒野の中に家具だけで放り出されたような状態になる。


 ノエル以外にとっては意外な光景。

 だが、昔からティシュア様をよく知るノエルにとってはそれほど意外な光景でもなかった。


「あの人は昔から多くの人を災害から救ってきた。けど、あの人を救ってくれる人は誰もいなくて、いつも寂しい想いをしていた」


 いつしか寂しさによる涙も枯れ果ててしまった。

 その反動から自由になった後は明るくしようと努めていたが、心の中にあった渇きが完全に癒えることはなかった。

 それが、この心象世界の光景。


「ここからどうするんだ?」

「このスキルは、領域内にいる人の心象世界をティシュア様の心象世界に上書きする力があるらしいの」


 ノエル自身も言われるまま使用しているようなもの。

 自分で使用していながら、どうなるのか自信がなかった。


「ここにミシュリナの心象世界を上書きする」


 夢も心が描いた世界のようなもの。

 彼女が夢を見ていて、夢に囚われているのだとしたらどのような夢を見ているのか知ることができる。


 乾いた大地に他者の夢を上塗りする。


「他人の夢を盗み見るなんて気は進まないけど、助ける為に見させてもらうね」


ようやく夢世界ですよ。

プロットの3割も消化できていないので、いったい何話必要になるのか?

今章も全く分かりません。

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