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ダンジョンマスターのメイクマネー  作者: 新井颯太
第41章 燈篭悪魔
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第10話 夢の通路-前-

「現状を整理しよう」


 睡眠病。

 ただ眠っているだけの病気で、最低限の生命維持さえしていれば命を落とすような病気ではない。

 問題は、原因も治療法も分かっていないこと。


「肉体的に問題がないことは間違いない」

「そうなるとノエルが感じたように……」

「今も視てみたけど、魂が肉体にないの。ううん、ちょっとは残っているんだけど……」


 それも生命を最低限維持する為に必要な量程度でしかない。

 そんな絞り粕程度では役には立たない。


「一つ確認です。亡くなっている訳ではないのですよね」

「うん」


 メリッサの確認にイリスが頷く。


「なら、亡くなった方のように魂が肉体から抜け落ちてしまったのではなく、どこかへ行ってしまったのかもしれません」

「そんなことが……?」

「私は専門ではないので分かりません」


 その言葉を聞いてノエルへ視線が向けられる。


「え、なに……?」

「もしも魂がどこかにあるなら……もっと言えば『誰かに連れ去られた』ならノエルさんの力が必要になります」

「待って! なんとなく、この子の体にないのは分かるけど、どこにあるか追うなんてことできないよ」

「追う必要などありません。【ティシュア神の加護】を使います」


 【ティシュア神の加護】。

 スキルを持っているだけでなく、『巫女』であるノエルは本来想定されていた以上のスペックを発揮することができる。

 中でも今回必要としていたのがティシュア様の声と姿を届ける能力。


「アレは単純な幻影ではありません。対象の心に投映させてティシュア様の姿と言葉を届けるスキルです。この場になくても残されたドル君の魂から辿ることが可能なはずです」

「な、なるほど……!」


 感心したように頷くノエル。

 本当に分かったのかちょっと不安になるほど強張った表情をしているが、ノエルしか今は頼れる人物がいない。


「解除」


 寝ているドル君に触れて彼だけ【世界】を解除する。


「うん、やってみる」


 ノエルの持つ錫杖が音を奏でる。

 時の停止した部屋の中で発生した音が部屋の外に伝わることはない。音と共にティシュア様が届けられるのは、俺たち6人と【世界】を解除されたドル君だけ、



 ☆ ☆ ☆



 ノエルの神気はドル君に届けられた。


「……ん?」


 本来なら、そこで止まるはずの神気が止まることなくどこかへと向かう。

 宿屋を出て、さらに村からも離れてしまうと南へと向かう。


「やっぱり移動している」


 しばらくしてノエルが捉えたのは首都ウィンキアを上から見た光景。

 しかし、ウィンキアへ入った直後に奇妙な場所へ移動させられてしまう。


「なに、これ……どこかの洞窟?」


 神気を具象化させる。

 より多くの情報を得る為に感覚を同調させる。送り込んだ神気がノエルの姿を形作る。最も馴染み易い形として本人が選ばれた。


 感覚を同調させて今いる場所がどこなのか確認しようとする。

 そこは、洞窟などではなかった。洞窟のような通路が続いているものの通路を形成する地面や壁が岩ではなかった。


「うわ、気持ち悪い」


 ぶよぶよとした肉に覆われた通路。

 弾力はしっかりあるみたいで普通に歩く分には問題ないが、強く踏みしめると力が吸収されるような感覚がある。

 所々ではあるが、光を放っている場所があるおかげで洞窟内の様子も分かる。


 奇妙な場所にノエルがやる気をなくしている。

 その証拠に狐耳が久し振りに垂れていた。


「おい、ドル君を見つけるんだぞ」

「そうだった」


 ノエルが見ている光景は【迷宮同調】で俺たちも見ることができる。

 女性陣は気味の悪い光景を目にして早々にギブアップしたそうにしている。


「進む方向は分かるな」

「というよりも自動で進んでくれるかな」


 ドル君のいるであろう方向――洞窟の奥へ向かって歩みを進める。


「……泣き声?」


 しばらくすると奥から子供の泣き声が聞こえてくる。

 ノエルが声を聞いた瞬間に駆け出し、たった一人で洞窟内を歩いている男の子を見つける。


「やっぱり!」

「……おねえさん?」


 歩きながら泣いていたのは馬車にいた男の子ドル君だ。

 体に異常は見当たらず、着ている服も昨日のままでおかしな所があるようには見えない。


「迎えに来たよ」

「ぇ……ぅ!」


 ドル君の目から涙が溢れ出して思わずノエルに抱き着いてしまった。


「大丈夫?」

「ずっと、ひとりで……だれもいなくて……!」

「そう」


 落ち着かせる為に撫でてあやしている。

 断片的に紡がれる言葉から、どうやら昨日の昼間――ちょうど眠った頃から不可思議な洞窟へ迷い込んでしまったらしい。最初は夢だと思っていたらしいが、一向に覚める気配がないせいで不安になって洞窟をひたすら歩き続けていた。


 たった一人での探索。子供には耐え難いものだったが、母親に会いたい一心で出ようと頑張っていたが、変わらない光景に心が折れそうになっていた。


「もう大丈夫だから一緒に出よう」

「でも、どっち……?」

「お姉さんが覚えているから任せて」


 ノエルも記憶している訳ではない。だが、ドル君と会話しているのは神気で形作られただけのノエル。今も本体と繋がっているおかげで辿れば元の場所へ戻ることができる。

 そもそも物理的な迷路ではないので、順路を覚えていたところで意味はない。


「子供が泣き出してしまうほど不安に思っているの。だから邪魔しないでくれるかな」


 ドル君と視線を合わせたまま背後に向かって声を掛ける。

 振り向きながら表情を真剣なものに変える。その先にいたのは宙に浮かぶ真っ白な体をした海月の魔物。


「無関係じゃなかったんだ」


 ノエルがイメージすれば手の中に錫杖が現れる。

 イメージからノエルの体が形作られた。なら同じように錫杖を持っている姿をイメージすれば錫杖も顕現させることができる。


「うわぁ、わたしたちに脱出されると相当困るみたい」


 ノエルへ強烈な敵意を向けている。

 それは海蛇と戦った時ですら見せていなかった感情だ。


「あなたたちにとって本当に大切なものはこの空間にあって、地上での活動はついでみたいなもの」


 返事の代わりに何十本という触手がノエルへ伸ばされる。

 錫杖で迫って来る全ての触手を叩き落とすとノエルも悪魔の海月へ敵意を向ける。


「先に手を出して来たのはそっちなんだから文句は受け付けないからね」


まだ明言はしていませんが、ステージがヤバい設定です。

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